NEWS米国実装本番稼働(全面)2026-08-20

トークン化株式のオンチェーン取引高が年初来90億ドル、55%が米国市場時間外──崩れ始めた「取引時間」という前提

トークン化株式のオンチェーン取引高が2026年年初来で約90億ドル(約1兆4,364億円、1ドル=159.6円で換算。以下同レートを使用)に達し、その55%が米国株式市場の通常取引時間外に発生している。取引高の絶対規模よりも、取引が「いつ」起きているかの分布が示すもののほうが大きい。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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トークン化株式のオンチェーン取引高が2026年年初来で約90億ドル(約1兆4,364億円、1ドル=159.6円で換算。以下同レートを使用)に達し、その55%が米国株式市場の通常取引時間外に発生している。取引高の絶対規模よりも、取引が「いつ」起きているかの分布が示すもののほうが大きい。

何が起きたか

分析基盤RWA.xyzによれば、2026年8月19日時点でステーブルコインを除くトークン化実物資産の分散資産価値は380.7億ドル(約6兆768億円)、保有者数は228万4,550人で30日前比74.38%増となっている。同サイトに登録された1,301銘柄のうち903銘柄が株式カテゴリに属し、銘柄数では株式が最大勢力になった。トークン化株式の分散価値自体は約24億ドル(約3,830億円)規模で、年初の約6.8億ドルから3倍超に拡大している。

取引高については、Blockworksの集計として年初来約90億ドル、年初の約10億ドルから約8倍という数字が報じられている。うち55%が東部時間9時30分〜16時の通常取引時間外の発生である。なお別系統の集計では、中央集権型取引所を含む7月単月の取引高が113億ドル(約1兆8,035億円)に達し、その約83%をBinanceのbStocksが占め、内訳の大半がQQQ連動ETFのトークンだったとされる。計測範囲が異なるため、両者の数値は単純比較できない。

銘柄面では、Robinhoodが8月13日に多数の米国株トークンをRWA.xyzに登録し、BinanceのbStocksは7月30日に登録された。既存ブローカーと大手取引所の参入が銘柄数を押し上げている構図である。

なぜ重要か

日本の証券会社・取引所にとって最も直接的な論点は「取引時間」である。東証は2024年11月に取引時間を30分延長したばかりで、米国ではナスダックが週5日23時間取引への移行を表明している。時間外の需要が既存市場の外側で吸収されている状態が、制度設計の議論を先行して規定しつつある。

一方で、性質の違いには注意が要る。海外で取引されているトークン化株式の多くは原株を裏付けとした経済的エクスポージャーの提供であり、議決権や配当の取扱い、投資家保護の水準は国内のセキュリティトークンとは異なる。日本では金融商品取引法上のトークン化有価証券として整理されており、同じ「トークン化株式」という語でも法的性質は別物である。この混同は避ける必要がある。

国内では、Progmatが事務局を務めるデジタルアセット共創コンソーシアムで「トークン化株式」と「トークン化法」の共同検討が進んでおり、券面発行を前提とした規制の包括的な見直しが論点になっている。海外市場の取引実態は、その議論における需要側の材料として使える。

注視点

流動性の断片化が最大の実務的論点である。BinanceのbStocks、Solana上のJupiter、Ethereum系の各基盤は板を共有せず、同じ銘柄でも会場をまたいでトークンが代替可能ではない。名目取引高の大きさが執行品質を意味しないことは、商品提案の際に押さえておくべき点である。

集中度も同様だ。単一会場が月間取引高の8割超を占める構造は、生態系全体がその会場の稼働・流動性・コンプライアンス姿勢に依存することを意味する。

制度面では、米SECのトークン化証券に関する「イノベーション免除」が再び延期されたと報じられており、CLARITY法案のトークン化条項との調整が続いている。枠組みが定まらないまま取引だけが先行している状態であり、制度が追いついた時点で市場構造が組み替わる可能性は残る。国内投資家が海外のトークン化株式にアクセスする経路をどう整理するかも、資金決済法・金商法いずれの側でも未整理のままである。

用語解説

トークン化株式(tokenised equity) 株式に対する権利や経済的エクスポージャーを、ブロックチェーン上のトークンとして流通させたもの。株式が振替機関を通じてしか移転できない現行制度の外側で、24時間・小口・国境をまたいだ売買を可能にする狙いがある。ただし設計は一様でなく、原株を保管して価格連動だけを提供するものから、株主権そのものをトークンに載せるものまで幅があり、議決権・配当の扱いは商品ごとに異なる。

実物資産のトークン化(RWA、Real World Asset tokenisation) 国債、社債、不動産、ファンド持分といった既存の資産をブロックチェーン上で表現する取り組みの総称。資産そのものはオフチェーンに存在し、トークンはその法的請求権のデジタル表現にすぎない。したがって「トークンを持っている=資産の権利を持っている」と言えるかどうかは、裏側の法的構造(信託、SPV、保管契約など)に依存する。

分散資産価値(distributed asset value) RWA.xyzが用いる集計指標で、実際にブロックチェーン上で発行・流通しているトークンの価値の合計。裏付けとなる原資産の総額(represented asset value)とは別物で、両者には数倍の開きがある。市場規模を語る際にどちらの数字を使っているかで印象が大きく変わるため、比較時には基準の確認が要る。

板が共有されない/代替可能でない(non-fungible across venues) 同じ銘柄のトークンでも、発行基盤や発行体が異なれば別のトークンとして扱われ、会場をまたいで直接受け渡しができない状態を指す。通常の株式が振替機関という単一の記録主体を経由することで会場をまたいで同一銘柄として扱えるのに対し、トークン化株式には現状その共通基盤がない。名目取引高が大きくても、個々の会場の板は薄くなりうる。

イノベーション免除(innovation exemption) 米SECが検討している、トークン化証券の発行・保管・取引について既存の登録要件の一部を条件付きで緩和する枠組み。ブロックチェーンを使った証券取引が現行の証券法の想定と噛み合わないため、実験の余地を制度側に作る発想である。日本のサンドボックス制度に近い位置づけだが、2026年8月時点で公表は延期されている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-20

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OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

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