NEWS香港実装本番稼働(限定領域)2026-08-28

フランクリン・テンプルトン、トークン化MMFを香港HashKeyで販売開始 外部ウォレットへの出庫は不可

トークン化ファンドの競争軸が、商品を組成する側から配る側へ移りつつある。その最新の一手が、香港のプロ投資家向けに始まった。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

香港上場のHashKey Holdingsは2026年8月24日、傘下のHashKey Exchangeがフランクリン・テンプルトンのトークン化マネー・マーケット・ファンド「grBENJI」の取り扱いを同日開始したと発表した。米国政府証券・レポ・米ドル現金を主な投資対象とし、対象はプロ投資家に限られる。同社の商品告知によれば、外部ウォレットへの入出庫、利用者間の移転、プラットフォーム上での二次流通はいずれもできず、換金はEarnチャネルでの解約による。決済はT+1を目安とする。

何が起きたか

提供はHashKey ExchangeのEarnチャネルを通じて行われる。ファンドは1口あたり約1米ドルの基準価額の維持を目指す。フランクリン・テンプルトンは2026年7月31日時点で運用資産1兆8,000億ドル(約286兆円。1ドル=159円で筆者換算)を有する。同社のトークン化基盤BENJIは複数のブロックチェーンに展開されており、grBENJIはそのアジア向け販売チャネルの拡張にあたる。両社は今後、対象市場と資産クラスの拡大を検討する。

商品性の制約は明示されている。HashKeyはgrBENJIを複雑な商品に分類し、基準価額の維持が元本・投資収益のいずれについても保証ではない旨を注意喚起した。市場、金利、流動性、技術、規制の各リスクも列挙されている。なお、トークン化された米国債・MMF系商品の残高は約156億ドル(約2.5兆円)に達したと報じられているが、これは集計サイトの数値を経由した報道であり、発行体の開示ではない。

なぜ重要か

日本の証券会社・信託銀行にとって、この案件は作る側ではなく配る側の話である。国内のST市場は不動産中心のオルタナティブ資産と債券に偏り、円建てのMMF型トークン化商品は薄い。海外では、資産運用会社が自社プラットフォームで完結させず、顧客基盤を持つ地域の取引所と組む形が広がりつつある。日本に置き換えれば、販売チャネルを握るのは誰かという問いになる。

設計の制約にも注目したい。外部ウォレットに出庫できず利用者間の移転もできない以上、オンチェーンでの担保転用やアトミック決済は使えない。残るのは記帳と事務処理の効率化である。トークン化された商品とオンチェーンで動く商品が別物であることを示す実例で、国内で同種の商品を評価する判断軸になる。

注視点

第一に、外部移転と二次流通の解禁時期である。ここが開かない限り、商品はデジタル化された既存MMFの域を出ない。第二に、対象資産クラスの拡大がどこまで進むか。第三に、日本の金融機関が同種のトークン化MMFを扱う場合、金融商品取引法上の外国投資信託の販売規制に乗るのか、電子決済手段等取引業の枠組みに近づくのかという制度整理である。

進捗段階

実装トラック③(商用提供開始)。 実際に販売が開始され、申込・解約という反復的なフローが回る点で、実証段階を超えている。ただし外部移転・二次流通が閉じているため、既存のMMF販売プロセスを置き換えたとは言えず、④には至らない。オンチェーンであることの機能は現時点で限定的である。

用語解説

  • トークン化MMF:短期の国債・レポ・現金等で運用するマネー・マーケット・ファンドの持分を、ブロックチェーン上のトークンとして記録するもの。運用対象は伝統的資産のままで、変わるのは持分の記帳方法である。原資産が暗号資産になるわけではない点が、暗号資産ファンドとの決定的な違いになる。
  • grBENJI/BENJI:フランクリン・テンプルトンのトークン化ファンド基盤がBENJIで、grBENJIはその上で提供される米国政府流動性ファンドの銘柄名。同社は複数のブロックチェーンにまたがって同基盤を展開している。
  • Earnチャネル:暗号資産取引所が提供する、利回りのつく商品の提供窓口。今回はここに規制対象の運用商品が載る形になっており、取引所が販売会社の役割を担っている点が従来との違いである。
  • プロ投資家:香港の規制上、一定の資産規模等の要件を満たす投資家。日本の特定投資家に近い概念で、開示・勧誘規制が緩和される代わりに一般投資家向けの提供はできない。新しい商品が最初にここで解禁されるのは各法域で共通の順序である。
  • 基準価額(NAV):ファンドの1口あたり純資産価値。MMFは1口1ドル前後を維持する運用を行うが、これは目標であって保証ではない。過去には米国のMMFが1ドルを割り込んだ例があり、今回の告知でも保証ではない旨が明記されている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-28

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