NEWS韓国実装本番稼働(全面)2026-08-21

韓国金融監督院、暗号資産の不公正取引監視をAIで全工程自動化 探知から調査報告書作成まで

韓国の金融監督院が、生成AIと機械学習を組み合わせた暗号資産の市場監視体制を構築し、異常取引の探知から調査報告書の作成までを自動化した。制度整備が一段落した後に残る「限られた人員で24時間365日の市場をどう監視するか」という執行体制の問題に、当局側が技術で答えた事例である。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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韓国の金融監督院が、生成AIと機械学習を組み合わせた暗号資産の市場監視体制を構築し、異常取引の探知から調査報告書の作成までを自動化した。制度整備が一段落した後に残る「限られた人員で24時間365日の市場をどう監視するか」という執行体制の問題に、当局側が技術で答えた事例である。

何が起きたか

金融監督院は2026年8月20日、公開の大規模言語モデル(LLM)を基盤とする生成AIと機械学習アルゴリズムを組み合わせたAI市場監視体制を構築したと発表した。システムは同院の内部人材が自ら設計・構築したとしている。

機能は三つに分かれる。第一に、リアルタイムの取引データ分析。アルゴリズムが相場操縦の類型ごとの売買様態や仮装売買を自動で探知し、生成AIが当該銘柄に付随する公示やニュースまで読み込んで、調査に着手すべきかを判定する。第二に、オンライン公開情報の分析。いわゆるリーディングルームでの先行売買、虚偽の動画、扇動的な投稿を分析対象に加えた。取引所の注文・約定データにとどまっていた監視範囲が、取引所の外側へ広がったことになる。第三に、深層分析の自動化。口座ごとの板関与率、売買差益、相場関与率で疑わしい口座を選別し、AIが連携する口座まで分析範囲を広げて最終的な嫌疑区間を確定したうえで、生成AIが検討報告書を自動作成する。

同院は2026年5月3日に公表した第2次高度化で、モニタリングシステム「ORBIT」により国内5社・海外3社の取引所の公開APIから価格・板・約定情報を実時間で収集する体制を整えていた。今回はその上に分析と文書作成を載せた形となる。

なぜ重要か

日本でも2026年4月10日に金融商品取引法および資金決済法の改正法案が国会に提出され、暗号資産取引の規制が金商法へ移管される方向にある。インサイダー取引規制の新設や課徴金制度の整備が柱だが、制度が動き出した後に必ず問題になるのが執行体制である。

韓国の事例が示すのは、監視の焦点が取引所内のデータから、SNS・動画・チャットといった外部の情報空間へ移りつつあるという点だ。日本でも証券取引等監視委員会が同種の課題に直面することになる。民間側にも波及する。取引所や暗号資産取引業者に求められる自主的な異常取引監視の水準が引き上げられれば、金融機関が暗号資産関連業務へ参入する際のシステム投資見積もりが変わる。

監督当局が内製でLLMを扱う姿勢そのものも、被監督側のAI活用に対する当局の理解度を押し上げる方向に働くとみられる。

注視点

実効性は最終的に処理件数で測るべきものだが、韓国では仮想資産利用者保護法の施行から2年で調査完了が40件余り、うち30件余りを捜査機関に告発・通報した水準にとどまる。AI導入がこの処理量をどこまで引き上げるかは未検証である。生成AIが作成した検討報告書の証拠能力と説明責任も論点となる。行政処分や刑事告発の根拠となる文書をAIが下書きする場合、手続的な担保をどう置くかは各国共通の課題になりうる。

用語解説

仮想資産利用者保護法:韓国で2024年7月19日に施行された、暗号資産の利用者保護と不公正取引規制を定める法律。未公開重要情報の利用、相場操縦、不正取引を禁止し、違反には課徴金と刑事罰を科す。日本が2026年の法改正で金商法へ移管しようとしている内容と重なる部分が多く、先行事例として参照されることが多い。

仮装売買:同一人物が同じ銘柄について買い注文と売り注文を同時に出し、実質的な所有権の移転を伴わないまま取引が活発であるかのように見せかける行為。取引量を水増しして他の投資家の判断を誤らせるため、多くの法域で相場操縦の一類型として禁止されている。

リーディングルーム:SNSやメッセージアプリ上で、運営者が特定銘柄の売買を推奨する非公式なグループ。運営者が推奨前に自ら買い付けておき、参加者の買いで値が上がったところで売り抜ける先行売買(フロントランニング)の温床になりやすい。韓国では株式市場でも規制上の主要論点となっている。

板関与率(ホガ関与率):ある口座の注文が、当該銘柄の板(気配)全体に占める割合を示す指標。特定の口座が注文の相当部分を占めていれば、価格形成に人為的な影響を与えている疑いが強まる。相場関与率と併せて、相場操縦の嫌疑を数値で絞り込む際の基本指標として用いられる。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-21

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