NEWS欧州実装限定実装(パイロット)2026-08-23

ECB(欧州中央銀行)、トークン化決済の市場対話体を61機関で発足──PontesとAppiaの窓口を一本化

ユーロ圏の中央銀行にあたる欧州中央銀行(ECB)は8月19日、トークン化された金融取引を中央銀行マネーで決済するための市場対話体「Appiaコンタクトグループ」に61の機関を選定したと発表した。既存の2つの対話体を廃止して窓口を一本化するもので、2026年第3四半期に初回稼働が予定される決済インフラ「Pontes」の運営にも、市場の声が直接反映される体制となる。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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ユーロ圏の中央銀行にあたる欧州中央銀行(ECB)は8月19日、トークン化された金融取引を中央銀行マネーで決済するための市場対話体「Appiaコンタクトグループ」に61の機関を選定したと発表した。既存の2つの対話体を廃止して窓口を一本化するもので、2026年第3四半期に初回稼働が予定される決済インフラ「Pontes」の運営にも、市場の声が直接反映される体制となる。

何が起きたか

ECBは6月1日に参加公募を行い、61の金融市場関係者および公的機関を選定した。同グループは9月に活動を開始し、これまで並立していた「Pontes市場コンタクトグループ」と「ホールセール決済の新技術に関するコンタクトグループ(NTW-CG)」の業務を引き継ぐ。両グループは廃止される。

役割は2つに整理されている。1つはPontesの運営と発展に関する知見提供で、ユーザー要件、リスク管理、変更・リリース管理の各プロセスを議論する。もう1つはAppiaのビジョン形成で、2026年3月に公表されたロードマップの実行に関与する。議事概要と関連文書はECBのサイトで公開される。

Pontesは、市場のDLTプラットフォームとユーロ圏の大口決済インフラ「TARGET Services」を橋渡しし、トークン化資産を中央銀行マネーで決済できるようにする仕組み。Appiaはより長期の取り組みで、欧州の決済・証券エコシステムの参照アーキテクチャを設計する。いずれも2025年に開始された。

前提として、ECBは金融政策を担うだけでなく、TARGET Servicesという決済インフラを自ら保有・運営する主体でもある。日本でいえば日銀が日銀ネットを運営しているのと同じ関係にあり、今回の動きは「規制当局が方針を示した」というより「インフラ運営者が次世代設備の仕様を市場と詰め始めた」という性格の話になる。

なぜ重要か

論点は「トークン化取引の資金サイドを何で決済するか」である。欧州は中央銀行マネーを既定路線に置き、そのための共通インフラを当局自らが提供する構えを崩していない。

一方、日本では8月13日に公表されたMUFGの国債レポ取引オンチェーン化実証が、資金サイドにトークン化預金またはステーブルコインの利用を検討対象としている。日銀は同種のホールセール決済基盤を公表しておらず、資金サイドは民間マネーが起点となる構図にある。

決済アセットの選択は、商品設計、担保管理、清算リスクの前提を左右する。証券サイドのトークン化で実績を積んできた国内の信託銀行・証券会社にとって、欧州の設計が事実上の国際標準となれば、クロスボーダー案件で接続要件として突きつけられる可能性がある。

注視点

第一に、9月に予定されるPontes初回稼働の実像である。登録済みのDLT事業者は現時点で限られており、当初の取扱範囲は絞られるとみられる。第二に、Appiaが単一の共有台帳を選ぶのか、複数インフラの相互運用を選ぶのかという設計判断で、ECBはいずれの可能性も分析中としている。第三に、61機関の顔ぶれである。参加者リストは公開されており、邦銀・邦系証券が議論の場に入っているかは確認しておく価値がある。

用語解説

ECB(欧州中央銀行)/ユーロシステム ECBは、ユーロを導入した20か国の金融政策を一元的に担う中央銀行。1998年設立、本部はドイツ・フランクフルト。物価の安定を主たる使命としつつ、決済システムの円滑な運行と金融安定にも責任を負う。日本銀行と異なるのは、単一国ではなく複数国の共通中央銀行である点で、各国の中央銀行(ドイツ連邦銀行、フランス銀行など)は廃止されずに残り、ECBとともに「ユーロシステム」を構成して政策を実行する。今回のような決済インフラの整備は、ECB単独ではなくユーロシステム全体の取り組みとして発表されるのが通例である。

ホールセール中央銀行マネー 商業銀行が中央銀行に保有する当座預金など、金融機関同士の大口決済に用いられる中央銀行の負債。個人が使う現金や預金とは別のレイヤーにある。信用リスクがゼロとみなされるため、決済の最終性を担保する資産として位置づけられる。

TARGET Services ユーロシステムが運営する決済・証券決済インフラの総称。大口資金決済のT2、証券決済のT2S、即時決済のTIPS、担保管理のECMSなどで構成される。Pontesはこの既存基盤にDLTプラットフォームを接続する位置づけにある。

Pontes ユーロシステムの短期トラック。市場側が自前のDLTプラットフォームを使ったまま、資金決済だけを中央銀行マネーで行えるようにする「橋渡し」型のソリューション。2024年に実施された探索的実験の成果を踏まえて設計されている。

Appia ユーロシステムの長期トラック。トークン化ホールセール市場の参照アーキテクチャ(ブループリント)を策定する取り組みで、決済・証券のバリューチェーン全体を対象とする。欧州の戦略的自律性を支える基盤づくりという位置づけが与えられている。

コンタクトグループ 中央銀行が市場参加者から実務的な意見を継続的に吸い上げるために設ける協議体。規制上の義務を課すものではなく、設計に関与する機会という性格を持つ。参加は公募と選定によって決まる。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-23

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