NEWS香港実装本番稼働(限定領域)2026-08-21

香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」が実流通へ 発行体が流通経路を指名する設計の含意

スタンダードチャータード系のアンカーポイントが発行する香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」が、機関投資家向けのベータ提供に入った。発行体がライセンス取得済みの取引所を認定ディストリビューターとして指名し、流通経路を管理する設計が、日本の電子決済手段の枠組みとの対比で示唆に富む。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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スタンダードチャータード系のアンカーポイントが発行する香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP」が、機関投資家向けのベータ提供に入った。発行体がライセンス取得済みの取引所を認定ディストリビューターとして指名し、流通経路を管理する設計が、日本の電子決済手段の枠組みとの対比で示唆に富む。

何が起きたか

OSLグループ(HKEX: 863)は2026年8月12日、アンカーポイント・ファイナンシャルが発行する香港ドル建てステーブルコイン「HKDAP(HKD At Par)」について、「Beta Access」における最初の認定ディストリビューターの一社となったと発表した。

アンカーポイントはスタンダードチャータード銀行(香港)の子会社で、同行、香港の通信大手HKT、アニモカ・ブランズが2025年2月に設立した合弁会社である。2026年4月、香港金融管理局(HKMA)からステーブルコイン条例に基づく発行体ライセンス(番号FRS01)を取得した。

Beta Accessではプロ投資家に限定して提供される。OSLは香港で最初に認可を受けたデジタル資産取引所として、法定通貨とHKDAPの間のオン/オフランプ、交換、取引、決済を担う。最初のユースケースとしてトークン化ファンド、貿易金融、クロスボーダー決済を優先する方針を示した。両社は2026年5月、イーサリアム・メインネット上で、法定通貨の準備資産への払込からミント、移転、償還までのライフサイクルを検証するテスト送金を完了している。ハッシュキー取引所も認定ディストリビューターとして参画した。

なぜ重要か

日本の資金決済法でも、電子決済手段の発行は銀行、資金移動業者、信託会社に限定され、仲介には電子決済手段等取引業の登録が必要である。ここまでは香港と発想が近い。

違うのは、香港が「発行体が指名した認定ディストリビューターだけが取り扱う」という契約上の絞り込みを重ねた点だ。日本の枠組みでは、登録さえ受けていれば発行体の指名は要件ではない。誰でも取り扱える設計と、発行体が流通経路を管理する設計とでは、AML態勢、償還請求の受付窓口の一元化、準備資産の残高把握のいずれにおいても実務が変わる。3メガバンクが2026年度中の実取引開始を目指す円建てステーブルコインの設計を詰めるうえで、直接の参照材料になる。

立ち上げ順序も注目に値する。個人向けではなく、トークン化ファンドと貿易金融という法人ユースケースから始めている。

注視点

個人向けへの拡大は2026年末を目標とするが、市場環境次第とされる。発行残高と準備資産の構成は未公表である。HKMAからもう一つのライセンスを受けたHSBCの展開時期も焦点となる。パブリックチェーンであるイーサリアム上で、機関限定の移転制限とAML要件をどう両立させるかは、技術と規制の双方にまたがる論点として残る。

用語解説

ステーブルコイン条例(Stablecoins Ordinance):香港で2025年8月1日に施行された、法定通貨連動型ステーブルコインの発行体を免許制とする法律。HKMAが免許を付与し、準備資産の管理、額面での償還、マネロン対策などを監督する。日本の改正資金決済法(2023年6月施行)に相当する位置づけだが、発行主体を銀行等に限定していない点が異なる。

認定ディストリビューター:発行体が契約により指名し、ステーブルコインの発行(ミント)・償還や法定通貨との交換を取り扱わせる事業者。香港では規制対象のデジタル資産取引所がこの役割を担う。日本の電子決済手段等取引業は登録制であり、発行体の指名を前提としない点で構造が異なる。

オン/オフランプ:法定通貨とデジタル資産を相互に交換する入口と出口の機能。オンランプが法定通貨からトークンへ、オフランプがトークンから法定通貨への交換を指す。ステーブルコインが実需で使われるかどうかは、この交換が確実かつ低コストで機能するかに大きく依存する。

プロ投資家(professional investors):香港証券先物条例上の投資家区分で、一定の資産規模等を満たす個人・法人が該当する。日本の特定投資家に近い概念だが、認定基準や適用される行為規制の範囲は同一ではない。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-21

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