NEWSその他実装②限定実装(パイロット)2026-09-11

インド、社債トークン化「Demat 2.0」を正式始動 法定の振替機関の台帳と中銀デジタル通貨で同時決済

インドは社債のトークン化を、個別企業の実験ではなく、法定の証券保管振替機関の台帳と中央銀行の決済基盤の上で始めた。既存制度の内側で台帳だけを差し替える設計が、他国の事例との最大の違いである。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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インド証券取引委員会(SEBI)とインド準備銀行(RBI)は2026年9月10日、社債トークン化の試行「Demat 2.0」の始動を発表した。法定の証券保管振替機関が持つ分散型台帳で社債を発行し、大口向け中銀デジタル通貨と同時決済する。9月7日と9日に3社が計102億5,000万ルピー(約165億円)を調達した。日本の証券会社や信託銀行には、振替制度を残したまま台帳と決済資産を差し替える実例となる。流通市場と個人投資家への開放時期は未定である。

何が起きたか

SEBIによれば、最初の発行体はRECで、9月7日に18の投資家から50億ルピー(約81億円)を調達した。L&Tは9月9日に4投資家から50億ルピー、IIFLは同日に1投資家から2億5,000万ルピー(約4億円)を調達した。台帳は証券保管振替機関が保有し、RBIの統合市場インターフェースを通じてe₹と接続され、社債と資金が同時に受け渡される。利払いと償還はスマートコントラクトで自動化できる。SEBIは、社債は法的に従来と同じ金融商品であり、発行体の返済義務も投資家の権利も変わらず、格付け、社債管理者、上場、開示の各要件もそのまま適用されると説明した。投資家は既存の証券口座で保有でき、Demat 2.0の利用設定と、参加銀行でのe₹ウォレットの保有が必要となる。SEBIは、法定の保管振替機関が所有記録を持ち、資金を中銀デジタル通貨で決済する形で社債を台帳上で直接発行した国はインドが初めてだとしている。円換算は1ルピー=約1.61円(2026年9月10日ニューヨーク市場のドル円終値153.85円と、同日のインド外為市場で報じられた1ドル=95.46ルピーから筆者算出)。

なぜ重要か

各国のトークン化債券の多くは発行体ごとに別の基盤で行われ、既存の市場インフラの外に置かれてきた。インドは台帳を法定の保管振替機関に持たせ、市場の分断を避ける道を選んだ。日本ではデジタル社債の多くが民間の基盤上で発行され、資金決済は銀行振込が主流である。振替制度との接続とトークン化預金による同時決済は検証段階にあり、インドの方式は、制度の外で基盤を増やすか、制度の中で台帳を差し替えるかという選択を具体的に示している。

注視点

第一に、既存の相対取引の気配提示(RFQ)基盤を通じた流通市場の開放時期である。第二に、個人投資家への開放で、e₹ウォレットの保有要件がどこまで障壁になるかが問われる。第三に、株式や投資信託などへの対象拡大である。RBIとSEBIは拡大の可能性に言及しているが、日程は示していない。試行が本番の制度に移行するかどうかは、発行体と投資家の数の広がりで判断することになる。

用語解説

  • 証券保管振替機関(デポジトリー):株式や社債の所有記録を電子的に管理し、売買に伴う権利の移転を記帳する機関。日本の証券保管振替機構(ほふり)に相当し、インドでは法律に基づく2機関が担う。Demat 2.0はこの機関に分散型台帳を持たせた点が特徴である。
  • 大口向け中央銀行デジタル通貨:中央銀行が金融機関間の決済用に発行するデジタル通貨。一般の利用を想定せず、証券決済や銀行間送金に使う。トークン化証券と同じ台帳環境で動くため、同時決済を実現しやすい。
  • アトミック決済:証券の引き渡しと代金の支払いを一つの処理として同時に完結させ、どちらか一方だけが実行される状態をなくす仕組み。決済までの時間差に伴う取引相手のリスクを原理的に消せる。
  • RFQ(気配提示依頼):買い手や売り手が複数の業者に価格の提示を求め、条件のよい相手と取引する方式。社債のように銘柄が多く取引頻度の低い市場で一般的で、インドは既存のRFQ基盤を流通段階に使う計画である。
  • ネイティブ発行:既存の証券を後からトークンに置き換えるのではなく、最初から分散型台帳上で証券を発行すること。台帳が正本となるため、二重管理や照合の手間を省ける。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-11

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