暗号資産交換業者のビットトレードと貿易決済システム開発のSTANDAGEは2026年9月10日、貿易領域での暗号資産活用の共同実証結果を公表した。暗号資産の着金確認から売却・円転を経て口座に円残高が反映されるまでを、実証条件下で数時間以内に完了し、円転コストも想定を下回ったとする。日本の銀行には、貿易代金の受け取りが交換業者経由に移り得るかを見る材料となる。資産の種類、金額、コスト水準は非開示で、追加結果は9月15日に示すとしている。
何が起きたか
両社は8月6日に実証の開始を発表し、入庫確認から円転までの所要時間とコスト、入庫時と売却時の価格差、入出庫・入出金の確認フローを主な検証項目に掲げていた。今回の発表は、このうち所要時間と円転コストを中心に公表したものである。検証した工程は、送付元からの暗号資産の送付、受領側での着金確認、売却・円転、日本円として出金可能な状態への移行の四段階で、技術面だけでなく法人が実際の取引で使う場面を想定したという。所要時間は今回の実証条件での結果であり、取引条件や運用方法によって異なると注記している。価格差や確認フローなど他の項目の結果は、今回は示されていない。STANDAGEは2017年設立で、ブロックチェーンとステーブルコインを使った貿易決済システムを開発し、アフリカなど新興国との貿易を主な対象としている。両社は今後、実際の貿易に近い規模・条件での実証、運用の標準化・自動化、取引規模に応じたコスト構造の確認を進めるとしている。
なぜ重要か
新興国との貿易では、銀行の海外送金網が細り、代金の受け取りに時間とコストがかかる事例が多いとされる。暗号資産による受領が実務として成り立つなら、中小企業の決済手段は銀行送金に限られなくなる。一方、今回の結果は、価格変動リスクの管理、送付元の本人確認、取引の実在性の確認といった、銀行が貿易決済で担ってきた機能を誰がどう担うかには答えていない。日本の銀行にとっての論点は、この経路を競合とみるか、外為業務や資金決済と組み合わせる補完とみるかである。
注視点
第一に、9月15日のセミナーで、使用資産の種類、取引金額、コスト水準、価格差がどこまで開示されるかである。これらがなければ、既存の送金手段との比較はできない。第二に、ドル建てステーブルコインを使う場合、国内では電子決済手段としての扱いとなり、暗号資産交換業とは別の登録の枠組みが関わる。第三に、実取引に近い条件での次の実証で、送付元の国や取引相手が示されるかどうかである。
用語解説
- 円転:外貨や暗号資産を売却して日本円に換えること。貿易では代金受領後に為替や価格の変動にさらされる時間をどれだけ短くできるかが、実務上のコストを左右する。
- 暗号資産交換業者:資金決済法に基づき金融庁・財務局に登録し、暗号資産の売買や交換、管理を行う事業者。利用者資産の分別管理や本人確認が義務付けられている。
- 電子決済手段:法定通貨の価値と連動し、額面での償還が約束されたデジタルの支払手段を指す資金決済法上の概念。ドル建てステーブルコインの多くがこれに当たり、暗号資産とは別の規制の下に置かれる。
- コルレス送金:銀行同士が相互に口座を持ち合う関係を通じて行う国際送金。中継銀行を経るほど時間と手数料がかかり、取引の少ない国や地域では経路自体が細りやすい。
- 実証条件:実証実験で設定した取引の規模、資産の種類、時間帯、運用手順などの前提。結果はこの条件の下でのみ成り立つため、本番の取引にそのまま当てはまるとは限らない。
出典
- ビットトレード株式会社「ビットトレード、STANDAGEと貿易領域における暗号資産活用の共同実証結果を公表」(2026年9月10日): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000395.000037450.html
- ビットトレード株式会社「ビットトレード、STANDAGEと貿易領域における暗号資産活用の実務上の課題を検証する共同実証を開始」(2026年8月6日): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000390.000037450.html
- あたらしい経済「ビットトレードとスタンデージ、貿易実証で暗号資産の円転を数時間以内に」(2026年9月10日): https://www.neweconomy.jp/posts/606892
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