NEWS韓国実装③本番稼働(限定領域)2026-09-24

ハナ銀行、EuroclearのD-FMIで1億ドルのデジタル債を発行──韓国勢で初、国内法の施行を待たず海外基盤で実績づくり

自国のトークン証券制度が動き出す前に、韓国の大手行は国際的な決済機関の基盤で先に発行実績を作った。既存の発行書類をそのまま使えたことが、実務上の要点である。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

韓国のハナ銀行は2026年9月21日、国際証券決済機関Euroclearのブロックチェーン基盤D-FMIを通じて、1億ドル(約158億円)の5年物外貨建てデジタル債を9月18日に発行したと発表した。韓国の発行体がD-FMIを使うのは初めてで、発行日に決済を終える当日決済を実現したとしている。既存の発行書類を使い、投資家は従来の口座で取引できる。日本の銀行や事業会社にとっては、国内制度の整備を待たずに海外の決済基盤で発行する選択肢の実例になる。発行条件の詳細は公表されていない。

何が起きたか

ハナ銀行の発表によると、今回の債券は発行から登録、決済までを分散型台帳の上で処理する、最初からデジタル形式の債券である。債券の割当てと代金の移動を台帳上で同時に処理することで、通常3〜5営業日かかる決済を発行当日に終えたという。同行は、韓国の外貨建て債券の発行で当日決済を実現したのは初めてだとしている。既存のグローバル中期債(GMTN)プログラムの書類を活用しており、海外の機関投資家は追加の手続きなしに、既存のEuroclear口座と取引システムで売買できる。スタンダードチャータードが単独の主幹事を務めた。専門メディアの報道によれば、シティがデジタル債の代理人を務め、債券はシンガポール取引所に上場された。スタンダードチャータード自身も同じ基盤で債券を発行してから1か月足らずでの案件となる。

なぜ重要か

デジタル債の普及を妨げてきたのは技術よりも、投資家が新しい口座や仕組みを用意しなければ買えないという点だった。D-FMIは既存の国際決済網とつながっているため、投資家は従来どおりの手順で購入でき、発行体も既存の発行プログラムの枠内で出せる。今回の案件は、デジタル化の効果を享受しつつ、投資家層を狭めない設計の実例である。韓国ではトークン証券を認める改正法が2027年2月に施行されるが、ハナ銀行はそれを待たずに海外の基盤を選んだ。日本でもデジタル債の発行は国内の基盤が中心だが、外貨建てで海外投資家を狙う場合、国際決済機関の基盤を使えば投資家の裾野を保ったまま当日決済などの効果を得られる。どの基盤で発行するかは、想定する投資家層によって変わる。

注視点

発行条件と、通常の債券と比べた利回りの差が開示されるかが焦点である。同じ発行体が継続して発行するか、流通市場での取引がどの程度生まれるかも確かめたい。韓国の下位法規の整備が進んだ後、国内基盤と海外基盤のどちらが選ばれるかにも注目したい。

進捗段階

実装トラック①(実際の発行と当日決済は完了したが、単発の案件で反復性は未確認)

用語解説

  • D-FMI:Euroclearが運営する、ブロックチェーンを使った証券の発行・決済基盤。既存の国際決済網とつながっており、投資家は従来の口座のままデジタル債を保有・売買できる。

    • 英:Digital Financial Market Infrastructure (D-FMI) / 用例:The bond was issued and settled on Euroclear's D-FMI platform. (その債券は、EuroclearのD-FMI基盤で発行・決済された)
  • 国際証券決済機関:複数の国の証券を扱い、国境をまたぐ債券の決済と保管を担う機関。EuroclearとClearstreamが代表で、ユーロ債などの国際的な債券の多くがここで決済される。

    • 英:international central securities depository (ICSD) / 用例:Investors held the note through their existing ICSD accounts. (投資家は、既存の国際証券決済機関の口座を通じてその債券を保有した)
  • 当日決済(T+0):取引や発行の当日に、証券と資金の受け渡しを終えること。通常の債券は数営業日後に決済されるため、その間は相手方の不履行リスクと資金の拘束が生じる。当日決済はこれを取り除く。

    • 英:same-day settlement (T+0) / 用例:T+0 settlement removed the usual gap of several business days. (当日決済により、通常の数営業日のずれがなくなった)
  • グローバル中期債(GMTN)プログラム:発行体があらかじめ包括的な条件を定めておき、その枠内で必要に応じて債券を繰り返し発行する仕組み。都度の書類作成が不要になり、発行が機動的になる。今回はこの既存の枠の中でデジタル債を出した。

    • 英:Global Medium Term Note (GMTN) programme / 用例:The bank reused its existing GMTN programme documents for the digital note. (同行は、デジタル債に既存のGMTNプログラムの書類を再利用した)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。円換算は1ドル=158.37円(2026年9月23日ニューヨーク市場終値、フィスコ)による筆者の計算です。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-24

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