英国のClearToken CSDは2026年9月22日、イングランド銀行(BoE)から、デジタル証券サンドボックス(DSS)でデジタル証券預託機関を運営する「Gate 2」の承認を受けたと発表した。本番取引を認められた2社目で、銀行以外では初めてである。当初は英国株、英国債、社債を対象とし、証券貸借や24時間の日中レポの担保として使えるようにする。日本の証券決済や国債レポ市場にとっては、担保を時間帯に縛られず動かす仕組みの先行例になる。取扱量にはBoEが定める上限がある。
何が起きたか
ClearTokenの発表によれば、Gate 2の承認により同社は既存の証券のトークン化版を、BoEの監督下で一定の上限の範囲内で発行・決済できる。対象はFTSE350採用銘柄、英国債、ポンド建てと外貨建ての社債で、いずれも証券金融取引の担保や24時間の日中レポに使えるという。今後はBoEの追加承認を条件に、海外株式、私募ファンド、現物商品、デジタル資産へ広げる計画だ。グループ内では、資金決済を担うClearToken Depositoryが金融行動監視機構(FCA)の認可を受け、中央清算機関となるClearToken CCPがBoEに認可を申請している。証券、資金、清算を一つの枠組みで扱う構成である。BoEの資料では、Gate 1を通過しただけでは本番取引はできず、Gate 2の承認が必要とされる。本番取引の承認は、7月に承認を受けたHSBCに続く2社目と報じられている。
なぜ重要か
レポ取引は、国債などを担保にした短期の資金調達で、金融機関の資金繰りの中心にある。現在は決済が営業日と時間帯に縛られるため、担保を必要な時に必要な場所へ動かせず、余分な資金や担保を抱える原因になっている。担保を24時間移せれば、数時間単位の借入れが可能になり、担保の効率は大きく上がる。日本でも国債の決済は日銀ネットの稼働時間に依存し、時間外の担保移動には制約がある。ClearTokenが株式と社債まで担保の対象に含めた点は、国債に限らず保有資産全体を担保として活用する発想であり、証券会社や信託銀行の担保管理業務の設計に関わる。英国は法制度を変えずに、監督下の限定的な本番運用で効果とリスクを測る手法をとっており、制度整備の順序としても参考になる。
注視点
実際の取引開始の時期、BoEが設ける取扱上限の水準、参加する金融機関の顔ぶれが次の焦点である。中央清算機関の認可が下りるかどうかで、清算まで含めた一貫処理が実現するかが決まる。英国政府が進めるデジタル国債(DIGIT)の発行との関係も確認したい。
進捗段階
実装トラック①(本番取引の承認は得たが、実取引の開始と取扱量は未公表)/規制トラック②(サンドボックス内での監督下の本番運用が承認済み)
用語解説
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デジタル証券サンドボックス(DSS):BoEとFCAが共同で運営する、ブロックチェーンなどを使った証券の発行・取引・決済を、一定の上限の範囲で本番として試せる制度。既存の法令の一部を修正して適用し、結果を恒久的な制度づくりに生かす。
- 英:Digital Securities Sandbox (DSS) / 用例:The Digital Securities Sandbox lets firms settle live transactions within set limits. (デジタル証券サンドボックスでは、事業者が定められた上限の範囲で本番の取引を決済できる)
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中央証券預託機関:証券の記録と保管を一元的に担い、売買の決済で所有権を移す機関。日本の証券保管振替機構(ほふり)や、国債については日本銀行がこの役割を担う。ClearTokenはこれをブロックチェーン上で運営する。
- 英:central securities depository (CSD) / 用例:A central securities depository records who owns each security after settlement. (中央証券預託機関は、決済後に各証券の所有者を記録する)
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日中レポ:1日のうち数時間だけ資金を借り、担保の債券を差し入れて同じ日のうちに返済するレポ取引。決済が24時間可能になって初めて実用的になる。日中の資金繰りの過不足を小さな担保で埋められる。
- 英:intraday repo / 用例:Intraday repo lets a bank borrow against collateral for hours rather than days. (日中レポにより、銀行は担保を差し入れて日単位ではなく時間単位で借入れができる)
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Gate 2:DSSの参加者が本番の取引を始めるために必要な承認段階。Gate 1は参加の許可にとどまり、実際の発行や決済はできない。承認後も取扱量には上限が設けられ、段階的に引き上げられる。
- 英:Gate 2 / 用例:Only firms approved at Gate 2 may undertake live activity in the sandbox. (サンドボックスで本番の業務を行えるのは、Gate 2の承認を受けた事業者だけである)
出典
- ClearToken「ClearToken Digital Securities Depository Approved in BoE Sandbox」(2026年9月22日、Markets Media掲載分): https://www.marketsmedia.com/cleartoken-digital-securities-depository-approved-in-boe-sandbox/
- Asset Servicing Times「ClearToken receives BoE approval for digital securities depository」(2026年9月22日): https://www.assetservicingtimes.com/assetservicesnews/clearingandsettlementarticle.php?article_id=18352
- イングランド銀行「Digital Securities Sandbox Dashboard」(2026年閲覧): https://www.bankofengland.co.uk/financial-stability/digital-securities-sandbox/digital-securities-sandbox-dashboard
- Ledger Insights「ClearToken CSD approved for live activity in UK Digital Securities Sandbox」(2026年9月22日): https://www.ledgerinsights.com/cleartoken-csd-approved-for-live-activity-in-uk-digital-securities-sandbox/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。