NEWS欧州制度①案の公表・意見募集2026-09-16

EUのDLTパイロット制度、業界が取扱上限の撤廃を要望 残すなら1.5兆ユーロ、既存CSDとの同一基準も要求

欧州のトークン化証券市場の天井を決める数字を巡り、業界は欧州委員会案の15倍を求めた。争点は金額だけでなく、新興インフラと既存CSDを同じ土俵に置くかにある。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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Nasdaq、Boerse Stuttgartなどの証券会社と業界団体は2026年9月7日付で、EU理事会と欧州議会経済金融委員会の委員に要望書を送り、DLTパイロット制度におけるトークン化証券の取扱総額の上限撤廃を求めた。上限を残す場合は1.5兆ユーロ(約267兆円)を基準とし、DLT市場インフラに既存の中央証券預託機関(CSD)より厳しい上限を課すことに反対している。新規基盤と既存インフラの扱いをどこまで揃えるかという、日本にも通じる論点の先行例である。立法の帰趨は未定。

何が起きたか

DLTパイロット制度は、ブロックチェーンで証券の取引・決済を行う市場インフラに、EU金融規制の一部の適用除外を認める試行的な制度で、2023年に適用が始まった。Ledger Insightsによると、現行制度は一つの基盤で扱える証券の時価総額を合計60億ユーロ(約1.1兆円)に制限している。欧州委員会は2025年12月の「市場統合・監督パッケージ」で、この上限を最大1,000億ユーロ(約17.8兆円)に引き上げる案を示した。

署名団体の一つである欧州デジタル金融協会(EDFA)によると、要望書は、1,000億ユーロへの引き上げを前進と評価しつつも市場規模に見合わないと指摘した。上限は取引量ではなく時価総額に適用され、欧州の既存プロジェクトには既に3,500億ユーロ(約62.4兆円)規模に達するものがあるという。要望は、通常制度での上限撤廃、残す場合の適切な水準、DLT市場インフラへのCSDより厳しい上限適用への反対の3点である。Ledger Insightsは、上限を残す場合は1.5兆ユーロとし、欧州委員会が上限なしに調整できる権限を持つよう求めたと報じている。

なぜ重要か

上限は、大手取引所や証券会社が本格参入するかどうかを左右する。現行の60億ユーロでは機関投資家の取引には小さすぎ、大手がこの制度を見送ってきた経緯がある。米国では保管振替機関の枠組みで上限なくトークン化を進める動きがあり、業界は欧州から流動性が流出することを警戒している。日本では、社債や受益証券のトークン化が既存の振替制度の外で進んでおり、ほふりとの接続が課題とされる。新しい基盤と既存インフラに同じ規律を課すべきかという欧州の議論は、日本で次世代決済基盤の制度設計を議論する際の比較材料になる。

注視点

EU理事会と欧州議会の立場がいつ固まり、三者協議で数値がどう着地するかが焦点である。DLT市場インフラとCSDで上限を分ける案が残るかどうかも、新規参入の条件を左右する。

進捗段階

規制トラック:②(欧州委員会の改正案が立法審議中。業界は数値の修正を要望)

用語解説

  • DLTパイロット制度:EUが2023年に始めた、分散型台帳技術(DLT)を使う取引・決済基盤向けの試行制度。対象証券の種類や取扱総額に上限を設ける代わりに、既存規制の一部を免除する。
  • 中央証券預託機関(CSD):証券の保管と振替、決済を担う市場インフラ。日本では証券保管振替機構(ほふり)がこれにあたり、証券の権利の帰属を帳簿で確定させる。
  • 市場統合・監督パッケージ:欧州委員会が2025年12月に公表した金融関連法の改正提案群。資本市場の統合と監督の一元化を掲げ、DLTパイロット制度の見直しを含む。
  • 欧州議会経済金融委員会(ECON):金融・経済分野の法案を審議する欧州議会の常任委員会。議会としての修正案をまとめ、理事会との交渉に臨む。

出典

円換算は1ユーロ=178.25円(2026年9月14日ニューヨーク市場終値)で筆者が算出した。


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-16

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