NEWS米国実装①実証実験(PoC)2026-09-19

NYSE親会社ICE、アバランチを1年検証と関係者が発言──ただし採用の決定は公表されていない

「一年かけて試した」と「採用する」は別の話である。トークン化証券の基盤選定について、NYSEはまだ旗を立てていない。明かされたのは検証の事実までである。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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Ava Labsのチャーリー・クーパー社長は2026年9月17日、Avalanche Summitで、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が過去1年間アバランチの技術を検証してきたと述べた。ただし採用が決まったとは明言していない。同席したICEの戦略イニシアチブ責任者マイケル・ブローグランド氏は、複数のブロックチェーンを評価中だとしたうえで、アバランチは多くの要件を満たすと述べた。NYSEは2026年1月にトークン化米国株・ETFの基盤開発を公表しているが、使用チェーンは今も明らかにしていない。

何が起きたか

クーパー氏は、NYSE側が技術だけでなく事業の経済性についても問いを重ね、アバランチ側が取引所の事業要件を理解しているかを確かめようとしたと説明した。両者は緊密な関係を築いたとしつつ、「どこまで進んでいるかはNYSE側が語ること」として選定への言及を避けている。NYSEが2026年1月に公表した構想は、自社のマッチングエンジンPillarと、ブロックチェーンを用いたポストトレード基盤を組み合わせるもので、決済と保管について複数のチェーンに対応することを想定している。ICEは2026年8月、トークン化証券市場の基盤についてtZEROと協業することで合意し、同社をNYSE関連プラットフォームの設計パートナーに指名した。クーパー氏は1年以内に平日24時間取引を始める取引所が現れるとの見方を示しつつ、それが最大手になるかは分からないと述べた。

なぜ重要か

日本の取引所や証券会社にとって、基盤チェーンの選定は追随すれば済む問題ではない。NYSEが特定のパブリックチェーンを選べば、そのチェーンの検証者構成、手数料体系、障害時の復旧手順が、日本の市場参加者の接続要件にそのまま跳ね返る。ただし今回明らかになったのは「検証している」という事実までで、ここから採用を読み取るのは早い。発表と決定を取り違えたまま自社の基盤選定を急げば、後から前提が変わる。むしろ注目すべきは、ICEが設計パートナーを決めながらチェーンは決めていないという構図である。マッチング、ポストトレード、決済レイヤーごとに別々の事業者を選ぶ調達の形が、標準になりつつある。

注視点

NYSEまたはICEによる正式発表の有無と時期。SECが9月17日に公表したイノベーション適用除外の下で、どの器を使って上場株のオンチェーン取引を行うかも未確定である。複数チェーン対応という設計が、実際に複数の決済・保管先を並行運用する意味なのか、将来の乗り換え余地を残す表現にとどまるのかも読み解く必要がある。日本では、金融商品取引法上の取引所システムに外部のパブリックチェーンを組み込む場合の監督上の整理が、まだ着手されていない。

進捗段階

実装トラック ①(技術検証の段階。基盤チェーンの採用決定も、規制当局の承認もない)

用語解説

  • マッチングエンジン:取引所で買い注文と売り注文を突き合わせ、約定を成立させる中核システム。処理速度と公平性が競争力に直結するため、取引所が最も手放しにくい部分にあたる。NYSEはこれを自社のPillarのまま残し、その後ろにブロックチェーンを置く構成を示している。

    • 英:matching engine / 用例:The exchange plans to keep its own matching engine and settle the trade onchain. (同取引所は自社のマッチングエンジンを維持したうえで、約定をオンチェーンで決済する計画だ)
  • ポストトレード:約定が成立した後の清算、決済、保管、権利処理までの一連の工程。伝統的には複数の機関が日をまたいで処理してきた領域で、トークン化による短縮効果が最も大きいと見られている部分でもある。逆に言えば、制度と機関の役割分担を変えなければ効果が出ない領域でもある。

    • 英:post-trade / 用例:Most of the expected efficiency from tokenization sits in post-trade, not in execution. (トークン化に期待される効率化の大半は、執行ではなくポストトレードにある)
  • 設計パートナー(design partner):製品やインフラの仕様を策定する段階から関与し、要件定義と検証を共同で担う事業者。供給契約を結んだ納入業者とは異なり、採用が確定していない段階で指名されることも多い。ICEはtZEROをこの位置づけで指名している。

    • 英:design partner / 用例:Naming a design partner does not mean the platform has been selected. (設計パートナーの指名は、基盤が選定されたことを意味しない)
  • 24時間取引:取引所が平日または週を通じて連続して取引時間を提供すること。米国では時間外取引の延長が段階的に進んでいるが、決済機関や気配情報の配信時間が追いつかないと実質的な流動性は伴わない。クーパー氏は1年以内に着手する取引所が出るとの見方を示した。

    • 英:around-the-clock trading / 用例:Some venues may offer around-the-clock weekday trading within a year. (一部の取引所は1年以内に平日24時間取引を提供する可能性がある)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-19

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