NYLIMの米国ハイイールド社債戦略をトークン化したファンド「HYB」が、2026年9月17日にアバランチ上でも提供を開始した。CentrifugeとAvalancheの公式Xが発表したもので、申込と償還の決済にはUSDCを用いる。HYB自体は6月30日にNYLIMとCentrifugeの提携とあわせて提供が始まっており、今回は対応チェーンの追加にあたる。トークン化によって基礎ポートフォリオや運用プロセス、リスク管理は変更されないとされている。
何が起きたか
HYBの正式名称はNYLIM Anemoy U.S. High Yield Corporate Bond Segregated Portfolioである。Centrifugeの機関投資家向けファンド基盤を利用しており、今回の展開により適格投資家がアバランチ上でも同戦略にアクセスできるようになった。米国ハイイールド社債戦略とは、信用格付が投資適格未満の米ドル建て社債を中心に投資し、相対的に高い利回りを狙う運用手法を指す。Particulaが公開したHYBの評価資料によれば、HYBはアバランチのほかイーサリアムとファロスでも展開されている。NYLIMにとっては初のトークン化商品である。アバランチでは9月上旬にも、韓国のハンファ投資証券が同チェーン対応のトークン証券基盤を構築したと報じられており、機関向け資産の受け皿としての採用例が続いている。
なぜ重要か
これまでのトークン化ファンドの中心は米国債や短期金融資産で、価格が動きにくく、担保としての評価も比較的単純だった。ハイイールド社債は信用リスクと流動性リスクを伴い、基準価額の算定も取引所価格には依存しない。オンチェーンに載せても、評価そのものは従来どおりチェーン外の計算に依存する。日本の運用会社や信託銀行が同種の商品を検討するなら、トークン化で変わるのは移転と決済の部分に限られ、評価、監査、投資家適格性の確認は在来の枠組みが残るという整理が出発点になる。決済通貨がUSDCである点も見落とせない。円建ての投資家にとっては、為替と法定通貨への出口の手当てが別途必要になる。
注視点
複数チェーンでの展開が、同一ファンドの持分をチェーンをまたいで移転できる構造なのか、チェーンごとに別々の残高として管理する構造なのか。前者であれば移転記録の正本がどこにあるかという論点が生じる。二次流通と担保利用の可否も、現時点では明確でない。日本の適格機関投資家が購入する場合には、外国投資信託としての届出や開示の扱い、そしてUSDC決済を前提とした約定・決済フローを既存の事務にどう組み込むかが実務上の課題になる。
進捗段階
実装トラック ②(提供開始済み。ただし適格投資家に限定され、二次流通と担保利用の実績は確認されていない)
用語解説
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ハイイールド社債:信用格付が投資適格未満の企業が発行する社債。債務不履行の確率が相対的に高い分、利回りも高い。価格は個別企業の信用状況と市場全体のリスク選好に左右され、値動きは国債より大きい。トークン化の対象としては、評価と流動性の両面で国債より難度が高い。
- 英:high-yield corporate bond / 用例:The fund invests in high-yield corporate bonds rated below investment grade. (同ファンドは投資適格未満の格付のハイイールド社債に投資する)
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セグリゲーテッド・ポートフォリオ:一つの法人の中に、資産と負債が相互に隔離された複数の区分を設ける仕組み。ある区分の損失が他の区分に及ばない構造にすることで、戦略ごとに独立した運用を一つの器で行える。オフショア籍のファンドで広く使われる形態である。
- 英:segregated portfolio / 用例:Each segregated portfolio keeps its assets and liabilities ring-fenced from the others. (各セグリゲーテッド・ポートフォリオは、資産と負債を他の区分から隔離して保持する)
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RWAトークン化基盤:現実資産の権利をトークンとして発行・管理するための共通基盤。投資家の適格性確認、発行、償還、権利処理を担い、運用会社は自前でブロックチェーン対応を構築せずに商品を載せられる。今回のCentrifugeはこの位置づけにあたる。
- 英:tokenization platform / 用例:The manager used an external tokenization platform rather than building its own. (当該運用会社は自前で構築せず、外部のトークン化基盤を用いた)
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適格投資家:一定の資産規模や専門性を備え、開示や勧誘規制の一部が緩和される投資家区分。トークン化ファンドの多くはこの区分に販売対象を限定しており、誰でも買える商品ではない。日本の適格機関投資家や特定投資家に相当する概念である。
- 英:eligible investor / 用例:Access remains limited to eligible investors who complete onchain identity checks. (アクセスは、オンチェーンの本人確認を終えた適格投資家に限られている)
出典
- Centrifuge 公式X(2026年9月17日): https://x.com/centrifuge/status/2100584837623292272
- Avalanche 公式X(2026年9月17日): https://x.com/avax/status/2100586053807612242
- あたらしい経済「米資産運用会社NYLIM初のトークン化ファンド「HYB」、アバランチ上で提供開始」(2026年9月18日): https://www.neweconomy.jp/posts/609391
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。