NEWS欧州実装③本番稼働(限定領域)2026-09-19

ECBの「Pontes」が稼働へ──中銀マネーでのDVPを、最終性はT2に残したままつなぐ

欧州は中銀マネーをトークン化市場に差し出す。ただし決済の最終性は既存のRTGSに置いたままで、そこに設計の思想が表れている。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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ECBは、市場のDLTプラットフォームとTARGETサービスを接続し、中銀マネーでホールセール取引を決済する「Pontes」の初期稼働を2026年第3四半期に予定している。ECBのサイトは四半期表記にとどまり、9月21日という具体日は報道および理事会メンバーの発言に基づく。設計は、DLT基盤上のキャッシュトークンとT2のいずれかを選べる二重決済モデルで、資金側の最終性はT2での処理完了によって得る。DVPはHash-Linkで同期させる。参加資格は確定しているが、初期参加者は公表されていない。

何が起きたか

ECBの公表によれば、Pontesは五つの要素からなる。これまで検証した三方式を統合した単一のユーロシステム・ソリューション、キャッシュトークンとT2を選べる二重決済モデル、T2での処理完了をもって得られる資金側の最終決済、DVPなど全か無かの決済をHash-Linkで実現する仕組み、そしてT2との連携を含む処理の自動化である。参加資格も確定している。市場参加者はT2にアクセスできる主体、市場DLT運営者はCSD規則に基づく認可を受けた証券集中保管機関、DLTパイロット制度に基づく運営者、EU・EEA内で監督を受ける決済システム運営者、EMIR上のCCP、そしてCRDやMiFID IIの認可を受け監督下にある信用機関・投資会社・市場運営者である。Pontesは2025年7月1日の理事会決定に基づく二本立て計画の短期側にあたり、長期側にはAppiaが置かれている。

なぜ重要か

日本の証券決済の議論にとって重要なのは、ECBが「最終性は既存のRTGSに置く」と決めたことである。トークンの側で最終性を完結させず、T2での資金移動をもって法的な確定とする設計は、DLT上の記録を正本にしない選択にあたる。これにより、証券決済制度そのものを改正せずに稼働できる。日本でも、日銀ネットと市場側のDLTをどう接続するかという問いは同じ形をとり、ここが最初の分岐点になる。もう一点、参加資格が中銀口座へのアクセスを起点に組まれていることも見逃せない。ノンバンクの決済事業者は、この枠組みに直接は入れない。中銀マネーの決済は、依然として免許を持つ主体の内側に置かれている。

注視点

稼働日の確定と、初期参加者の顔ぶれ。ClearstreamとAxiologyが事前の接続テストを実施したと報じられているが、ECBによる公表は確認できていない。初期の営業時間と、2028年に予定される24時間・多通貨対応までの段取りも観測点になる。日本の関係者にとっては、EUのDLTパイロット制度の上限緩和をめぐる議論と、Pontesの利用が実際の取引量として立ち上がるかどうかが、制度設計を参照するうえでの判断材料になる。

進捗段階

実装トラック ②(参加資格と設計は確定し、初期稼働の直前段階。実取引の量は未知数)/規制トラック ③(理事会決定に基づく正式なサービスとして位置づけられ、実証の枠組みではない)

用語解説

  • 決済最終性(settlement finality):資金や証券の移転が法的に取り消せなくなる時点のこと。どこで最終性が生じるかは、破綻時に誰が損失を負うかを決める。Pontesは資金側の最終性をT2に置き、DLT上の記録を法的な正本とはしない構造を選んだ。

    • 英:settlement finality / 用例:Settlement finality for the cash leg is achieved once the transfer completes in T2. (資金側の決済最終性は、T2での移転が完了した時点で得られる)
  • Hash-Link:資産側と資金側の移転を、どちらも成立するかどちらも成立しないかに束ねる同期の仕組み。ハッシュ値を鍵に見立てた条件付きの預託によって、片方だけが先に確定する事態を防ぐ。異なる台帳をまたぐDVPを、共通の台帳を作らずに実現するための方式である。

    • 英:Hash-Link / 用例:Hash-Link binds both legs so that neither settles unless the other does. (Hash-Linkは両レグを結び付け、一方が成立しない限り他方も成立しないようにする)
  • 二重決済モデル(dual settlement model):同じ仕組みの中で、DLT基盤上のキャッシュトークンによる決済と、既存のRTGSでの決済の双方を選べる構造。参加者は自社の準備状況に応じて移行の速度を選べる一方、運営側は二つの経路を並行して維持する負担を負う。

    • 英:dual settlement model / 用例:A dual settlement model lets participants choose cash tokens or the existing RTGS. (二重決済モデルにより、参加者はキャッシュトークンと既存のRTGSを選択できる)
  • DLTパイロット制度(DLT Pilot Regime):EUが2023年に施行した時限的な枠組みで、DLTを用いた取引・決済システムに既存規制の一部免除を認める。認可を受けた運営者はPontesの参加資格を持つ。取扱規模に上限があり、業界からは緩和を求める声が出ている。

    • 英:DLT Pilot Regime / 用例:Operators authorised under the DLT Pilot Regime are eligible to connect to Pontes. (DLTパイロット制度に基づき認可された運営者は、Pontesへの接続資格を持つ)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-19

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