NEWS欧州制度⓪検討・研究2026-09-24

ユーロ圏の中央銀行、MiCA見直しでステーブルコイン準備資産の「銀行預金要件」撤廃を要求──預金では守れず、むしろ銀行に危険を持ち込むという判断

利用者を守るために設けた「準備資産の一部を銀行に預けよ」という規定が、逆に銀行へ取り付けを伝える経路になる。欧州の中央銀行群が、自らの規則の設計を問い直した。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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欧州中央銀行制度(ESCB)は2026年9月22日、欧州委員会による暗号資産規制MiCAの見直しに意見を提出し、ステーブルコインの準備資産の一定割合を銀行預金で持たせる規定の削除を求めた。代わりに、1営業日と5営業日で満期を迎える資産の保有割合を定める流動性要件を提案した。日本の金融機関にとっては、ステーブルコインの裏付け資産を預金で持つことの利点と危険を、発行体と銀行の双方から考え直す材料になる。意見はあくまで提言で、法改正には欧州議会と理事会の手続きが要る。

何が起きたか

ESCBの意見書そのものには本稿では到達できず、複数の専門メディアの報道で内容を確認した。現行のMiCAでは、電子マネートークンの発行体は準備資産の少なくとも30%を銀行に預け、重要な発行体では60%に引き上げられる。ESCBはこの規定が発行体と銀行を直接結びつけると指摘した。大口の発行体の預金が銀行の資金調達に占める割合が大きくなれば、トークンの償還が殺到した際に発行体が預金を一斉に引き出し、銀行の流動性を圧迫しうるという。2023年3月に米シリコンバレー銀行の破綻がUSDCの価格乖離を招いた例も挙げた。代替として、リバースレポや短期国債での運用を想定した流動性要件を示した。あわせて、EU域内と域外で同じステーブルコインを発行する「複数法域発行」については、禁止が望ましいとの立場を示したと報じられている。欧州委員会の意見募集は5月20日に始まり、報道によれば締切は9月30日まで延長された。

なぜ重要か

銀行預金は安全な資産に見えるが、準備資産がどこか一つの銀行に集中すれば、その銀行の信用がステーブルコインの価値を左右し、逆にトークンの取り付けが銀行の資金繰りを揺らす。ESCBの提言は、安全性を「どこに置くか」ではなく「どれだけ早く現金化できるか」で測る考え方への転換である。日本では信託型ステーブルコインの裏付け資産の運用について柔軟化が図られてきたが、預金で持つ比率の考え方は発行体ごとの設計に委ねられている部分が大きい。発行体と取引する銀行の側から見れば、ステーブルコイン発行体の預金は流出しやすい資金として扱う必要がある。受け入れ行としての流動性管理と、発行体向けの商品設計を見直す論点になる。

注視点

欧州委員会が見直しの報告書と改正案でこの提言をどこまで取り込むかが最大の焦点である。改正には時間がかかり、2027年以前に規定が変わる可能性は低いとみられる。複数法域発行の扱いは、域外で発行されるドル建てステーブルコインのEU内での流通に直結する。

進捗段階

規制トラック①(中央銀行による意見表明の段階。法改正案は未提出)

用語解説

  • MiCA:EUの暗号資産市場規則。暗号資産の発行や交換、保管などを行う事業者に認可制を敷き、ステーブルコインの準備資産や償還の要件も定める。2024年に段階的に適用が始まった。

    • 英:Markets in Crypto-Assets Regulation (MiCA) / 用例:MiCA currently requires part of stablecoin reserves to sit in bank deposits. (MiCAは現在、ステーブルコインの準備資産の一部を銀行預金で持つよう求めている)
  • 電子マネートークン:単一の法定通貨の価値に連動するよう設計された暗号資産で、MiCA上の区分の一つ。ユーロやドルに連動するステーブルコインの多くがこれにあたり、発行者は電子マネー機関か銀行に限られる。

    • 英:e-money token (EMT) / 用例:An e-money token references a single official currency such as the euro. (電子マネートークンは、ユーロのような単一の法定通貨を参照する)
  • 複数法域発行:同じ銘柄のステーブルコインを、EU域内の法人と域外の法人がそれぞれ発行し、互いに交換可能とする仕組み。域外の発行分の償還請求がEU内の準備資産に集中するおそれがあるとして、欧州の当局は警戒している。

    • 英:multi-issuer scheme / 用例:The central banks prefer a ban on third-country multi-issuer schemes. (中央銀行は、域外を含む複数法域発行の禁止を望んでいる)
  • リバースレポ:担保となる債券を受け取って資金を貸し出し、期日に買い戻してもらう取引。短期で安全に資金を運用でき、必要なときに早く現金に戻せる。ESCBは準備資産の運用先の一つとして挙げた。

    • 英:reverse repo / 用例:Issuers could hold liquid reserves through overnight reverse repo transactions. (発行体は、翌日物のリバースレポを通じて流動性の高い準備資産を持てる)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-24

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