米商品先物取引委員会(CFTC)は2026年9月17日、暗号資産の取引と市場に関する規制措置(RIN 3038-AF80)を、行政管理予算局内の情報規制問題局(OIRA)に提出した。大統領令12866に基づく審査中で、段階は正式な規則案の前段にあたる「プレルール」である。9月15日に上院でクラリティー法案の審議入りが否決された直後の動きで、議会を待たず既存権限で市場構造を組む意思を示す。条文は非公開で、規制の射程は確定していない。
何が起きたか
OIRAの登録によれば、受理日は2026年9月17日、段階は「プレルール」で、経済的に重要な規制という分類は付されていない。プレルールは、規則制定を始めるかどうか、どう始めるかを当局が判断する段階を指し、意見募集を伴う規則案の前に置かれる。CFTCは内容について論評を避けている。トランプ政権下では、CFTCや米証券取引委員会(SEC)といった独立機関も、重要な規制措置を公表前にOMBの審査に付すことが求められている。審査を終えて返送された後、委員会の採決を経てはじめて意見募集に進む。提出は、9月15日にクラリティー法案が上院で60票に届かず審議入りに失敗してから2日後だった。セリグ委員長は8月の講演で、既存権限を用いて暗号資産市場の枠組みを整える方針を示し、暗号資産取引所を指定契約市場(DCM)の一類型として指定し、証拠金取引を当局の監督下に置く構想に言及していた。
なぜ重要か
日本の金融機関にとっての論点は二つある。第一に、米国の市場構造が立法ではなく行政規則で形づくられる可能性が高まったことだ。法律であれば条文を読めば射程が分かるが、規則は当局の権限解釈に依存し、政権や委員長の交代で揺り戻しが起きうる。米国市場に接続する証券会社やデリバティブ業者は、恒久性の見通しにくい基盤の上で投資判断を迫られる。第二に、CFTCが暗号資産取引所をDCMの一類型として取り込むなら、日本の暗号資産交換業者が米国の顧客や流動性に届く経路の前提条件が変わる。金融商品取引法上のデリバティブ規制との重なりをどう整理するかは、国内の制度論としても浮上する。
注視点
OIRA審査の完了時期と、返送後にCFTCが委員会採決にかけるかどうか。プレルールである以上、次に出るのが事前通知にとどまる可能性もあり、正式な規則案まではなお距離がある。SECが9月17日に公表したイノベーション適用除外との役割分担、とりわけトークン化株式と暗号資産デリバティブの境界をどちらの規則が扱うかも定まっていない。中間選挙後の議会で市場構造法案が再提出された場合に、規則づくりが中断されるかどうかも見ておきたい。
進捗段階
規制トラック ①(規則制定を始めるかどうかの検討が、行政審査という公式の手続きに乗った段階。規則案の公表および意見募集には至っていない)
用語解説
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プレルール(prerule):正式な規則案を出す前に、規則制定に着手するか、どう組み立てるかを当局が検討する段階を指す。事前通知や既存規制の見直しがここに含まれる。OIRAの登録上は規則案と明確に区別され、条文が存在しない場合もある。日本の制度でいえば、パブリックコメント前の庁内検討に近い。
- 英:prerule / 用例:The action is listed at the prerule stage and has not been formally proposed. (当該措置はプレルール段階に登録されており、正式な提案には至っていない)
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情報規制問題局(Office of Information and Regulatory Affairs:OIRA):行政管理予算局に置かれ、各省庁の重要な規制を公表前に審査する部局。大統領令12866に基づき、費用便益や政策整合性を点検する。独立機関の規制もこの審査を通すかどうかは政権の方針によって変わる。日本には直接対応する機関がない。
- 英:Office of Information and Regulatory Affairs (OIRA) / 用例:OIRA reviews significant rules before an agency can move toward publication. (OIRAは、各省庁が公表に進む前に重要な規則を審査する)
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指定契約市場(designated contract market:DCM):商品取引所法に基づきCFTCの指定を受けた取引所で、先物・オプションを一般投資家に提供できる。指定を受ける代わりに、市場監視、清算、報告などの義務を負う。暗号資産市場をこの類型の一種として取り込むのが、セリグ委員長の示した構想である。
- 英:designated contract market (DCM) / 用例:Crypto exchanges could be designated as a type of DCM under existing authority. (暗号資産取引所は、既存権限の下でDCMの一類型として指定されうる)
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大統領令12866(Executive Order 12866):1993年に発出され、連邦政府の規制審査の基本枠組みを定める大統領令。重要な規制についてOIRAの事前審査と費用便益分析を求める。歴代政権が修正を加えつつ維持しており、米国の規則制定の時間軸を規定する要因になっている。
- 英:Executive Order 12866 / 用例:The submission is pending review under Executive Order 12866. (当該提出は大統領令12866に基づく審査中である)
出典
- Reginfo.gov(行政管理予算局・情報規制問題局)規制審査登録 RIN 3038-AF80「Regulation Crypto Asset Transactions and Regulation Crypto Asset Markets」(2026年9月17日受理): https://www.reginfo.gov/
- The Block「CFTC files crypto asset rulemaking with White House, pressing ahead without Congress」(2026年9月18日): https://www.theblock.co/news/regulation/2026-09-18-cftc-files-crypto-asset-rulemaking-with-white-house-pressing-ahead-without-congress-415510
- CFTC セリグ委員長講演(2026年8月): https://www.cftc.gov/PressRoom/SpeechesTestimony/opaselig10
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。