NEWS米国制度⓪検討・研究2026-09-28

トランプ政権、ドル建てステーブルコインの海外普及で官民の合弁を検討と報道──国債の需要とドルの地位を支える政策手段に

ステーブルコインは、米国にとって決済の技術から通貨政策の道具に変わりつつある。政府が海外への普及を後押しすれば、各国の通貨主権とぶつかる。円建ての戦略も、この構図の中で考えることになる。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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米ブルームバーグは2026年9月23日、トランプ政権が民間企業との合弁などを通じて、ドル建てステーブルコインの海外での普及を後押しする案を検討していると報じた。財務省、国務省、海外の民間事業に融資する米国際開発金融公社(DFC)が関与しうるとされる。狙いは、ドルの国際的な地位と米国債への需要を支えることにある。日本の金融機関にとっては、円建てステーブルコインの海外展開や、アジアでのドル建てとの競合を考える前提が変わりうる。正式な計画は発表されておらず、対象国や出資額、時期も明らかになっていない。

何が起きたか

報道によれば、政権は、ドル建てステーブルコインを海外に広げるために、政府機関が民間企業と組む形を検討している。関与が取り沙汰されているのは財務省、国務省、DFCである。DFCは、開発途上国などでの民間事業に融資や出資を行う政府機関で、合弁への資金提供の担い手として名前が挙がっているとみられる。一方、対象となる国、参加する企業、資金の規模、時期はいずれも報じられておらず、政府の公式な発表もない。背景には、政権のこれまでの姿勢がある。2025年1月の大統領令は、合法で正当なドル裏付けのステーブルコインを世界で発展させることを掲げた。ベッセント財務長官は、ステーブルコインが基軸通貨としてのドルの地位を支えると述べてきた。報道によれば、財務省の高官は、ステーブルコインの発行体がすでに約2,000億ドル(約31.4兆円)の短期国債などを保有していると指摘している。円換算は筆者が1ドル=156.94円(9月25日NY終値)で計算した。

なぜ重要か

GENIUS法で国内の制度を整えた米国が、次に海外での普及を政策として後押しする段階に入る可能性がある。そうなれば、ドル建てステーブルコインは単なる民間の商品ではなく、米国の対外政策と結びついた存在になる。IMFとBISは、ドル建てステーブルコインが新興国に広がると、資本の流出や自国通貨の弱体化、中央銀行による資金の流れの管理の低下を招くと警告してきた。日本の金融機関にとっての論点は二つある。第一に、アジアの企業間決済や送金で、政府の後押しを受けたドル建てのステーブルコインと、円建てのステーブルコインが競合する可能性である。第二に、アジアの提携先や現地法人が、ドル建てステーブルコインの導入を求められた場合の対応である。円建てステーブルコインの海外展開を、民間任せにするのか、政策として支えるのかという問いも、国内で改めて問われうる。

注視点

第一に、報道された案が正式な計画になるかどうか。第二に、DFCなどが実際に関与する場合、どの国や地域が対象となるか。第三に、各国の中央銀行や規制当局がどう反応するかである。

進捗段階

⓪ 検討・研究(制度系)

報道で伝えられた政権内部の検討段階で、公式の発表も計画の文書もなく、対象国や資金規模も分かっていない。①に進むのは、政府が具体的な枠組みや参加機関を公表した時点である。

用語解説

  • 米国際開発金融公社(DFC):開発途上国などで民間企業が行う事業に、融資や出資、保証を提供する米国の政府機関。2019年に発足した。日本でいえば国際協力銀行(JBIC)に近い役割を持つ。

    • 英:U.S. International Development Finance Corporation (DFC) / 用例:The DFC could help fund joint ventures that spread dollar stablecoins abroad. (DFCは、ドル建てステーブルコインを海外に広げる合弁に資金を出す可能性がある)
  • ドル化:自国の通貨ではなく米ドルが、国内の決済や貯蓄に広く使われるようになる現象。自国通貨への信認が低い新興国で起きやすい。ステーブルコインはスマートフォンだけでドルを持てるため、この動きを速めるおそれがある。

    • 英:dollarization / 用例:The IMF warns that dollar stablecoins could accelerate dollarization in emerging economies. (IMFは、ドル建てステーブルコインが新興国のドル化を速めうると警告している)
  • 準備資産:ステーブルコインの発行体が、償還に備えて保有する資産。米国のGENIUS法は、現金や短期国債などの安全な資産に限っている。発行残高が増えるほど短期国債の買い手が増えるため、米財務省の関心を集めている。

    • 英:reserve assets / 用例:Stablecoin reserve assets have made issuers large holders of U.S. Treasury bills. (準備資産の保有によって、ステーブルコインの発行体は米国債の大口保有者になった)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-28

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