NEWSグローバル実装②限定実装(パイロット)2026-09-28

Ethena、ドル連動トークンUSDeの裏付けにBinanceのトークン化株式を追加──株式パーペチュアルの売りで価格変動を相殺

トークン化株式が、ドルに連動するトークンの裏付け資産として使われ始めた。株式の市場とステーブルコインの市場が、担保を通じて一本の線でつながる。その線の途中に、取引所の関連会社が立っている。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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Ethena Labsは2026年9月25日、ドル連動を目指すトークン「USDe」の裏付けに、Binanceのトークン化株式「bStocks」を加え、同取引所の株式パーペチュアル(無期限先物)の売りで価格変動を相殺する取引を始めた。現物と先物の価格差(ベーシス)を収益源とする仕組みを、暗号資産から株式に広げる。日本の金融機関にとっては、担保に組み込まれたトークン化株式の権利保全が論点となる。株式への配分の上限は公表されておらず、Binance関連会社への信用リスクの扱いも未確定である。

何が起きたか

USDeは、暗号資産の現物を保有し、同じ額の先物を売ることで価格変動を打ち消し、ドルに近い価値を保つよう設計されたトークンである。現金や国債を準備資産とする一般的なステーブルコインとは異なる。今回Ethenaは、この仕組みの対象にbStocksを加えた。The Blockによれば、bStocksはBinanceの関連会社BTech Holdings Limitedが保有する有価証券への持分を表すトークンで、法令の範囲でBinance上の原資産に交換できるとされる。bStocksは2026年6月に導入された。報道によれば、Binanceの株式パーペチュアルの建玉は29億ドル(約4,551億円)を超え、株式のベーシスは過去6か月の平均で年率3.56%だった。USDeの流通量は約49億ドル(約7,690億円)である。Unchainedによれば、Ethenaのリスク委員会に参加する調査会社は、現物の保有を「Binance関連会社に対する無担保の信用エクスポージャー」と評価した。そのうえで、発行者が裏付けの株式を別の目的に使うことを制限する取り決めが結ばれるまで、この評価が続くと指摘したという。円換算は筆者が1ドル=156.94円(9月25日NY終値)で計算した。

なぜ重要か

トークン化株式の価値は、トークンの発行者が原資産の株式をきちんと保有し、他の用途に回していないことに依存する。そのトークンがさらに別の商品の担保になると、発行者の信用リスクが、担保を受け入れた側を経て最終的な保有者にまで及ぶ。今回の例は、発行、取引の場、先物の相手方が一つの取引所グループに集中している点でも、リスクが見えにくい。日本の証券会社や信託銀行がトークン化株式の組成や受け入れを検討する際には、原資産の分別管理、再担保の制限、発行者が破綻した場合の権利の扱いを、商品設計の段階で固める必要がある。

注視点

第一に、株式に振り向ける金額の上限と、他の取引所への拡大の時期。第二に、裏付けの株式の使途を制限する取り決めが実際に結ばれるか。第三に、株式のベーシスが縮んだときに、USDeの収益と規模がどう変わるかである。

進捗段階

② 限定実装(パイロット)(実装系)

実際の資金で取引が始まっているが、使う取引所は1か所で、株式に振り向ける金額も開示されていない。トークンが原資産に対する法的な権利をどこまで持つかも確認できていない。③に進むには、複数の取引所への拡大と、裏付け資産の使途制限の明確化が必要になる。

用語解説

  • ベーシス取引:現物を買い、同じ額の先物を売って、両者の価格差を収益とする取引。価格変動のリスクは打ち消されるが、先物の相手方や取引所の信用リスクは残る。伝統的な金融では、債券の現物と先物の価格差を狙う取引が広く行われている。

    • 英:basis trade / 用例:Ethena now runs its basis trade on tokenized stocks as well as crypto. (Ethenaは、暗号資産に加えてトークン化株式でもベーシス取引を行うようになった)
  • パーペチュアル(無期限先物):満期のない先物取引。一定の間隔で買い手と売り手の間で資金をやり取りし、先物の価格を現物に近づける。暗号資産の取引所で主に使われ、最近は株式を対象とするものも増えている。

    • 英:perpetual futures / 用例:Short perpetual futures offset the price risk of the tokenized stocks. (パーペチュアルの売りによって、トークン化株式の価格変動リスクが相殺される)
  • 再担保:担保として受け取った資産を、さらに別の取引の担保として使うこと。資金の効率は上がるが、元の保有者の権利が連鎖的に不確かになる。トークン化株式では、発行者がこれを行えるかどうかが、権利を守るうえで重要になる。

    • 英:rehypothecation / 用例:Limits on rehypothecation protect holders of tokenized stocks. (再担保の制限は、トークン化株式の保有者を守る)
  • 信用エクスポージャー:取引の相手方が支払いや引き渡しの義務を果たせない場合に被りうる損失の大きさ。担保がなければ、相手方の破綻がそのまま損失になる。今回は、トークンの発行者がこの相手方にあたる。

    • 英:credit exposure / 用例:Holding bStocks creates credit exposure to a Binance affiliate. (bStocksを保有すると、Binanceの関連会社に対する信用エクスポージャーが生じる)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-28

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