NEWS欧州制度②成立・確定(未施行)2026-09-28

ESMA、2027年からのEU共通の監督優先事項に「デジタル・イノベーション」──AIとトークン化の利用実態を各国当局が洗い出す

欧州の証券監督は、暗号資産のルールを作る段階から、既存の金融機関がトークン化をどう使っているかを点検する段階に移る。対象は暗号資産事業者に限られない。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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欧州証券市場監督機構(ESMA)は2026年9月23日、EU共通の新たな監督上の優先事項(USSP)として「デジタル・イノベーション」を定め、2027年から適用すると発表した。当面の対象はAIとトークン化で、各国の監督当局は、企業が顧客に関わる商品や業務のどこでこれらを使っているかを洗い出し、影響の大きい一部の企業から初期の点検を始める。欧州に拠点を持つ日本の証券会社や運用会社にとっては、トークン化商品が暗号資産規制とは別の経路で監督の対象になる。具体的な手法は2027年の作業で固まる。

何が起きたか

USSPは、ESMAと各国の監督当局が、投資家保護や金融の安定に関わる分野に監督の資源を共同で振り向けるための枠組みである。今回の優先事項は、各国で企業がAIとトークン化を使った商品やサービスを広げていることを背景にしている。ESMAの資料によれば、2027年の作業は、トークン化がどこで広がっているかと、企業が顧客に関わる商品や業務でAIとトークン化をどう使い、あるいは使う予定かを洗い出すことから始まる。そのうえで、影響の大きい一部の企業に初期の点検を行い、各国で共通の監督手法をつくる。報道によれば、監督当局が注意を向けるリスクとして、偏ったり誤解を招いたりするAIの出力、投資家が理解しにくい商品、少数の外部事業者への依存が挙げられている。今回の優先事項は、2025年に始まったサイバー・業務継続の強靱性の優先事項と並行して進む。2023年から続いたESG開示の優先事項は、今回で区切りとなった。ESMAは、最先端のAIモデルなど今後の技術の変化にも柔軟に対応するとしている。

なぜ重要か

EUでは2026年7月にMiCAの経過措置が終わり、暗号資産事業者は認可を前提に営業する段階に入った。今回の優先事項は、監督の重心をその先に移すものである。トークン化MMFやデジタル債、トークン化株式を扱う銀行、証券会社、運用会社が、暗号資産規制ではなく既存の証券規制のもとで、顧客への説明や商品の理解しやすさの観点から点検されることになる。欧州で運用会社や証券の現地法人を持つ日本の金融グループにとっては、トークン化商品を投入する際、商品組成の管理や外部の技術提供者の管理を説明できるかが問われる。日本の当局も、フォーラムでトークン化とAIの利活用を同じ枠で扱い始めており、監督の枠組みとして欧州の手法は比較の材料になる。

注視点

第一に、2027年の洗い出しの結果が、どの形式でいつ公表されるか。第二に、点検の対象がトークン化商品の組成者なのか、販売者なのかである。第三に、見直しが進むDLTパイロット制度やMiCAの改正との関係が、今後の論点として残る。

進捗段階

② 成立・確定(制度系)

EU共通の監督上の優先事項として決定・公表されたが、各国当局の実際の監督作業は2027年に始まる。③に進むのは、洗い出しと初期の点検が各国で始まった時点である。

用語解説

  • USSP(EU共通の監督上の優先事項):ESMAが各国の監督当局と共同で、特定の分野に監督の資源を集中させるために定める優先テーマ。国ごとに異なる監督の水準をそろえる狙いがある。過去にはESG開示やサイバー対応が選ばれてきた。

    • 英:Union Strategic Supervisory Priority (USSP) / 用例:ESMA made digital innovation a Union Strategic Supervisory Priority starting in 2027. (ESMAは2027年から、デジタル・イノベーションをEU共通の監督上の優先事項とした)
  • 各国監督当局(NCA):EU加盟国それぞれで金融機関を直接監督する当局。フランスのAMFやドイツのBaFinなどがある。ESMAは方針を示し、実際の点検は各国当局が担う。

    • 英:national competent authority (NCA) / 用例:National competent authorities will map where firms use tokenisation in client-facing products. (各国監督当局は、企業が顧客向けの商品のどこでトークン化を使っているかを洗い出す)
  • トークン化商品:株式や債券、ファンドの持分などを、ブロックチェーン上のトークンとして発行・管理する商品。権利の中身は従来の金融商品と同じでも、取引時間や保管の仕組みが異なる。そのため投資家への説明の質が監督の論点になる。

    • 英:tokenised product / 用例:Supervisors worry that investors may struggle to understand some tokenised products. (監督当局は、投資家が一部のトークン化商品を理解しにくいことを懸念している)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-28

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