NEWS韓国制度⓪検討・研究2026-09-28

Upbit上場のJPYC、最初の5日間で2万1,219人が為替換算より10%超高く購入──韓国国会議員が取引所資料を公表

円に連動するはずのトークンで、韓国の個人投資家が損失を抱えた。発行体の仕組みに問題はなくても、海外の取引所で流通すれば利用者保護の責任は宙に浮く。その実例が数字で示された。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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韓国国会の朴珉奎議員は2026年9月27日、取引所Upbitから提出を受けた資料を公表した。9月17日から21日までに円建てステーブルコインJPYCを為替換算より10%以上高く買った投資家は2万1,219人で、購入総額は2,598億5,519万ウォン(約301億円)にのぼった。21日時点の保有者3,792人の評価損は約50億3,000万ウォン(約5.8億円)である。円建てステーブルコインを発行する側にとっては、海外流通時の利用者保護が論点になる。取引所と発行体の対応は明らかでない。

何が起きたか

Upbitは9月17日にJPYCを上場した。直後に価格が跳ね、報道によれば一時は1JPYCあたり37.6ウォンと、為替換算の約4倍に達した。朴議員の資料は、この上場から5日間の取引を集計したものである。為替換算より10%以上高く買った2万1,219人の購入総額は2,598億5,519万ウォンで、購入数量は127億6,066万JPYCだった。このうち換算価格の300%を超える水準で買った人は2,574人、購入額は82億6,343万ウォン(約9.6億円)だった。21日時点で保有を続けていた3,792人の1人あたり平均の評価損は132万5,530ウォン(約15.4万円)で、評価損の合計は約50億3,000万ウォンとなる。一方、7,006人(高値で買った人の約33%)は売却済みで、平均で45万3,687ウォン(約5.3万円)の利益を確定させた。価格はその後、為替換算に近い水準に戻っている。円換算は筆者が1円=8.6222ウォン(9月25日終値)で計算した。価格帯別の一部の内訳は報道によって数値が異なるため用いていない。

なぜ重要か

JPYCは資金決済法上の電子決済手段で、発行体は裏付け資産を保全し、円での償還に応じる義務を負う。今回、その仕組み自体に問題が起きたわけではない。しかし、日本の登録業者を通さない海外の取引所で売買されると、価格の安定を支える償還や裁定がすぐには働かない。その間に生じた損失は、発行体の義務の外側で投資家が負うことになる。円建てステーブルコインを発行する銀行や信託銀行は、どの取引所での流通を認めるか、発行体として上場に同意する条件を設けるかを、あらかじめ決めておく必要がある。韓国には国外発行のステーブルコインを直接扱う規定がなく、上場は取引所の自主審査に委ねられている。

注視点

韓国のデジタル資産基本法は、政府案の提出が遅れ、9月30日に予定されていた公聴会も見送られたと報じられている。取引所による発行体の適格性評価を盛り込むかが焦点となる。10月の国政監査で本件が取り上げられるかも注目される。発行体や日本の当局が、海外での流通にどう向き合うかも論点として残る。

進捗段階

⓪ 検討・研究(制度系・韓国)

国外で発行されたステーブルコインを律する韓国の第2段階の立法は、政府案の国会提出前にとどまる。今回の公表は国会議員による実態の開示で、制度の変更は伴わない。①に進むには、政府案の提出が必要となる。

用語解説

  • 電子決済手段:日本の資金決済法上、法定通貨建てで額面での償還が約束されたステーブルコインの区分。発行者は銀行、資金移動業者、信託会社に限られ、裏付け資産の保全と償還の義務を負う。ただしその義務は発行体と利用者の間のもので、海外取引所での価格には及ばない。

    • 英:electronic payment instrument / 用例:JPYC is an electronic payment instrument redeemable in yen under Japanese law. (JPYCは日本法上、円で償還される電子決済手段である)
  • 評価損:保有している資産の時価が取得価格を下回っている状態の損失。売却していないため、確定した損失ではない。今回の数値は9月21日時点の価格で計算されている。

    • 英:unrealized loss / 用例:Holders who bought JPYC at a premium faced an average unrealized loss of 1.3 million won. (割高でJPYCを買った保有者は、平均で130万ウォンの評価損を抱えた)
  • 裁定取引:同じ資産の価格差を利用して利益を得る取引。価格差を縮める働きがあり、ステーブルコインの価格を額面に戻す力になる。ただし海外取引所への送金に時間がかかると、その働きは遅れる。

    • 英:arbitrage / 用例:Arbitrage eventually pulled the JPYC price on Upbit back toward the yen rate. (裁定取引によって、UpbitでのJPYCの価格はやがて円の為替水準に戻った)
  • 国政監査:韓国国会が毎年秋に行政機関の業務を点検する制度。各委員会が所管の省庁を呼び、資料を求めて質疑する。金融委員会や金融監督院も対象で、暗号資産の問題が取り上げられることが多い。

    • 英:parliamentary audit / 用例:The JPYC case may be raised at Korea's parliamentary audit in October. (JPYCの件は、10月の韓国の国政監査で取り上げられる可能性がある)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-28

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