米上位50行のうちトークン化預金を検討対象とする銀行は、2026年第2四半期に24行へ増えた。前四半期の19行から26%の増加で、ステーブルコイン(15行→17行)を上回るペースである。ただし個別行の取り組みが進む一方、銀行間を結ぶ共有レールでは、ステーブルコイン連合に1年先行される構図になっている。
何が起きたか
American Bankerは、米国の上場銀行上位50行の公表資料と製品開示を追跡する「Digital Asset Index」の第2四半期分を8月13日に公表した。
トークン化預金を検討対象としている銀行は24行、うち4行がすでに稼働中の製品を持ち、さらに7行が実証段階にある。ステーブルコインを検討対象とする銀行は17行で、2025年第4四半期の15行から増加したものの、トークン化預金の伸びには及ばない。Wells Fargoは8月4日に参入を表明した。
トークン化預金とステーブルコインの差は、法的な位置づけにある。トークン化預金は既存の銀行預金をデジタル化したもので、発行銀行のバランスシート上に留まり、25万ドルの法定上限まで預金保険の対象となり、従来の銀行規制が適用される。一方ステーブルコインは非銀行が発行し、裏付資産は銀行のバランスシート外に置かれ、預金保険の対象外である。
問題は次の段階にある。個別行の製品では、トークンが一つの銀行を出て別の銀行に届くという銀行間の移転を解けない。この共有レールをめぐって、2つの陣営が動いている。銀行側は、25の金融機関が保有する決済インフラ企業The Clearing Houseが運営する共有ネットワークを2027年前半の稼働で計画している。対するステーブルコイン側は、Visa、Mastercard、Stripe、Coinbase、BlackRock、BNY、Google、Shopify、Standard Charteredなど140社超が参加するOpen USDが6月30日に発表され、2026年中の稼働を予定する。Open USDは準備資産収益のほぼ全額を参加企業へ分配する設計で、単一発行体が収益を留保するCircleやTetherの経済モデルに正面から挑む構図である。
なぜ重要か
日本の銀行にとって、この対比は自社の検討順序を組み立てる材料になる。米銀がトークン化預金を先行させているのは、規制上の取扱いが変わらないという一点に尽きる。既存の預金をブロックチェーン上で表現するだけなので、新しい業免許も新しい監督枠組みも要らない。3メガバンクが信託型ステーブルコインの共同発行を選んだ日本とは出発点が異なるが、「既存の規制枠組みを動かさずに機能を足す」という発想は共通している。
より実務的な論点は、共有レールのタイミング差にある。仮にOpen USDが2026年中に稼働し、The Clearing Houseが2027年前半にずれ込めば、その間に企業財務がどちらのレールに慣れるかという先行者効果が働く可能性がある。海外子会社を持つ日本企業の資金管理を担う銀行にとっては、顧客がどちらの決済手段を求めてくるかという形で影響が及びうる。
注視点
Bank of Americaの決済部門責任者が、顧客がトークン化預金を強く求めている状況ではないと述べていると報じられている点は示唆的である。需要が先行しているのではなく、資金調達モデルを守るために銀行が需要に先んじて構築しているという構図であり、稼働後の実利用がどこまで伴うかは別の問題として残る。The Clearing Houseの2027年前半という目標が守られるかも含め、次の四半期の同調査が判断材料になる。
出典
- American Banker「Banks' interest in tokenized deposits grew in second quarter」(2026年8月13日): https://www.americanbanker.com/payments/news/banks-interest-in-tokenized-deposits-grew-in-second-quarter
- ABA Banking Journal「The Clearing House to launch tokenized deposits system for banks」(2026年6月5日): https://bankingjournal.aba.com/2026/06/the-clearing-house-to-launch-tokenized-deposits-system-for-banks/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。