NEWS日本実装③本番稼働(限定領域)2026-09-03

SBI VCトレード、ステーキング報酬の受取通貨に信託型ステーブルコイン「JPYSC」を追加──外部への入出庫は依然として不可

移転できないステーブルコインは、決済手段ではなく口座内の建値通貨である。JPYSCの用途拡大は、稼働の線引きをどこに置くかを考えるうえで手頃な材料になる。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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SBI VCトレードは2026年9月2日、暗号資産取引サービス「VCTRADE」で、ステーキング報酬の受取方法として円建てステーブルコイン「JPYSC」を選べるサービスを開始した。JPYSCはSBI新生信託銀行が発行する国内初の信託型(3号)電子決済手段で、2026年6月24日に発行が始まっている。報酬は受取日午前7時時点の同社販売所価格で円換算され、1円=1JPYSCで口座に付与される。ただしJPYSCは現時点で外部への入出庫に対応しておらず、同社口座の外へ移すことはできない。

何が起きたか

SBI VCトレードは、VCTRADEサービスで取り扱う全てのステーキング対象銘柄について、報酬の受取方法にJPYSCを追加した。受取方法はマイページで設定し、月末までの設定内容が翌月に進呈される報酬に反映される。報酬のうち利用者受取分は、受取日の午前7時00分時点の同社販売所価格で日本円に換算され、そのうえで1円=1JPYSCのレートで口座に付与される。同社はBITPOINTサービスで既に円建て受取を提供しており、両サービスの統合に伴う要望を理由に挙げた。JPYSCは日本円とスプレッドなしで交換でき、保有分を同社に貸し出す「JPYSCレンディング」では最高年率3%(2026年9月2日時点)の利用料を受け取れる。一方で、現時点でJPYSCは入出庫に対応していないと明記されている。

なぜ重要か

この一件は、日本のステーブルコインが「発行された」段階と「決済手段として稼働した」段階のあいだにある距離を示している。JPYSCは資金決済法上の3号電子決済手段であり、SBI新生信託銀行を受託者、SBI VCトレードを委託者兼当初受益者とする特定信託受益権として組成されている。信託型は資金移動業型と異なり1回100万円の送金上限を受けないため、法人間決済や大口の資金移動が本来の狙いとされてきた。しかし外部入出庫が塞がれている限り、実態は一取引所の口座内で完結する円建ての残高表示であり、他社ウォレットや事業会社の決済に接続する経路は開いていない。信託型の発行を検討する信託銀行・証券会社にとっては、外部流通をいつどの管理態勢で開くかが実質的な論点になる。

注視点

最大の焦点は入出庫の開放時期と、その際に課される移転先の管理要件である。あわせて、JPYSCは信託財産を銀行預金と日本国債で運用する設計であり、発行体は利息の支払いや収益配当を行わないと明示している。国債の時価によっては元本割れの可能性があることも発行体自身が開示しており、ステーブルコインが常に額面で戻るとは限らない前提は押さえておく必要がある。JPYSCレンディングの年率も募集状況により変動する。

進捗段階

実装トラック③(部分稼働)。実際の報酬支払いという反復的なフローに使われる点で実証を超えているが、ブロックチェーン上での外部移転ができないため、既存の円建て残高管理を置き換えたとは言えない。外部入出庫の開放と、他事業者への移転が恒常的に発生した時点で④に近づく。

用語解説

  • 3号電子決済手段(特定信託受益権):資金決済法上のステーブルコインの類型の一つで、信託銀行等が受託者となり、信託財産を裏付けに受益権をトークンとして発行するもの。資金移動業型に課される1回100万円の送金上限を受けないため、法人間の大口決済を想定できる。伝統的金融でいえば、信託受益権を電子的に細分化して移転可能にしたものに近い。
  • ステーキング報酬:プルーフ・オブ・ステーク方式のブロックチェーンで、トークンを預けてネットワークの検証に参加した対価として受け取るトークン。取引所経由の場合、利用者が預託し、取引所が検証者として稼働して報酬を分配する構造をとる。利息ではなくネットワークからの発行・手数料の分配である点が、預金利息と異なる。
  • 入出庫:取引所の口座と外部のウォレットとの間でトークンを送受信すること。入出庫が閉じている場合、そのトークンはブロックチェーン上を移転せず、事業者の内部帳簿上の残高としてのみ機能する。決済インフラとしての評価は、この可否で大きく変わる。
  • 委託者兼当初受益者:信託を設定して財産を託す側であり、かつ最初に受益権を持つ者。JPYSCの構造では、SBI VCトレードがこの立場に立ち、受益権をトークンの形で利用者に流通させる設計になっている。誰が受託者で誰が委託者かは、破綻時にどの財産が誰の手元に残るかを決める。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-03

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