NEWS英国制度①案の公表・意見募集2026-09-11

英上院、財務省に「デジタル資産戦略」の策定を義務付け 政府の反対を押し切り194対138で修正可決

政府は戦略は既にあると主張したが、上院は法律で書かせることを選んだ。暗号資産事業者の銀行サービスへのアクセスまで戦略の対象に含めた点は、日本の銀行実務から見ても示唆に富む。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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英議会上院は2026年9月9日、金融サービス・市場法案の報告段階で、財務省に国家的なデジタル資産戦略の策定・公表と意見募集を義務付ける修正案88を194対138で可決した。法成立から12か月以内に、暗号資産、ステーブルコイン、トークン化証券などを対象にまとめる。労働党政権は反対しており、下院で修正・削除される可能性がある。日本にとっては、事業者の銀行アクセスまで含めた横断的な戦略を法定化する発想が参照点になる。

何が起きたか

修正案は保守党のネヴィル=ロルフ議員が提出した。報道によれば、戦略の対象には暗号資産、ステーブルコイン、中央銀行デジタル通貨、トークン化証券などが含まれ、財務省はイノベーションの促進、消費者保護、市場の健全性、金融の安定、国際競争力を検討する。デジタル資産事業者が決済・清算などの金融サービスを利用し続けられるかも検討項目とされ、銀行や決済事業者が個別のリスク評価をせずに一律に取引を拒む問題も取り上げる。策定にあたっては他の法域の動向を考慮することも求めている。7月の審議で財務省のストックウッド閣外相は、政府には既に戦略があり実行中だとして法定化に反対していた。採決では保守党と自由民主党の議員が賛成の多くを占め、労働党議員の多くが反対に回った。法案は上院先議で、今後は下院の審議に移る。

なぜ重要か

英国はホールセール市場のデジタル化、デジタル証券サンドボックス、ステーブルコイン規制と施策を重ねてきたが、業界からは全体像の欠如を指摘されてきた。今回の修正は、その不満を議会が法律で政府に説明責任を課す形で受け止めたものである。日本でも電子決済手段、セキュリティトークン、暗号資産の制度はそれぞれ整備されたが、所管と工程表は分かれている。とりわけ、事業者の口座開設や送金の受け入れが事実上の参入障壁になる問題を戦略の明示的な論点に据えた点は、日本の銀行の取引方針にも関わる。

注視点

下院は上院の修正を受け入れるか、変更するか、削除するかを判断する。両院が同じ条文で合意しなければ法律は成立せず、戦略策定の12か月の期限も起算されない。政府が下院で削除を図るのか、独自の戦略文書を先に示して修正の必要性を薄めるのかが次の焦点となる。9月30日に予定される金融行為規制機構(FCA)の暗号資産事業者の認可受付開始など、実務の日程と並行して見ていく必要がある。

用語解説

  • 報告段階(リポート・ステージ):英議会で法案の委員会審議を終えた後、本会議で改めて修正案を審議・採決する段階。上院ではここで政府の意に反する修正が可決されることが少なくない。
  • 修正案88:金融サービス・市場法案に対する修正案の番号で、デジタル資産戦略の策定を財務省に義務付ける内容。可決により法案本文に条項として組み込まれたが、下院の同意が得られるまで確定しない。
  • デジタル証券サンドボックス:イングランド銀行と金融行為規制機構が運営する、トークン化証券の取引・決済基盤を実際に稼働させるための特例制度。既存の法令の一部を緩和し、実取引を通じて恒久制度の設計に生かすことを狙う。
  • デバンキング:銀行が特定の業種や顧客との取引を一律に拒否・解消すること。暗号資産事業者は資金洗浄などのリスクを理由に口座開設を断られやすく、事業継続の障壁となってきた。
  • 中央銀行デジタル通貨(CBDC):中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨。個人も使える一般向けと、金融機関間の決済に限る大口向けに大別される。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-11

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