金融庁は2026年9月15日、定義府令などの改正を公布した。社債発行会社の親会社・子会社などのグループ会社が行う募集・私募の取扱いを、一定の要件のもとで金融商品取引業から除外する内容で、9月16日に施行された。意見募集には29件のコメントが寄せられている。事業会社グループが自社アプリや顧客基盤でデジタル社債を販売しやすくなる一方、引受・販売を担ってきた証券会社の役割の見直しが論点になる。公布版の条文の細部と、この枠組みを実際に使う発行体が現れるかが次の焦点である。
何が起きたか
金融庁は9月15日、「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」などの改正を公布した。7月24日から8月24日まで意見を募集し、29件のコメントを受けている。社債の勧誘に関する改正は9月16日に施行された。
意見募集時に示された新旧対照表によると、対象は新株予約権付社債を除く社債である。発行会社の子会社、親会社、親会社の子会社が行う募集・私募の取扱いは、次の要件をすべて満たせば業規制の対象外となる。
①発行会社が定めた勧誘方針(対象者・方法・時期)に従うこと ②実施状況を定期的に発行会社へ報告すること ③その会社が社債を保証するか、発行会社への資金提供を確保すること ④勧誘の際に③の内容を投資家に伝えること
公表文は「デジタル社債等」と表現しているが、条文案の対象は社債券一般である。
なぜ重要か
国内のST社債では、事業会社がグループのカード会社やアプリを窓口に個人へ販売する例が増えている。これまでは、グループ会社が勧誘に関わる場合、登録業者を介在させる設計が選ばれやすかったとみられる。今回の改正で、発行体とグループ会社が一体となって自社顧客へ直接販売する経路が制度上整った。
除外の条件は、「発行体と同視できること」と「グループによる信用補完」の二つに集約される。適合性の確認や説明義務は、これまで業者規制で担保されてきた。その枠組みの外で投資家保護をどう果たすかを、発行体側が社内体制で示す必要が出てくる。証券会社にとっては、収益源を販売手数料から、ST基盤の運営や事務受託へ移す圧力になりうる。
注視点
本稿は、意見募集時の条文案で要件を確認している。公布された条文との差分は、公布時の別紙で確認する必要がある。実務の分かれ目になるのは、コメントへの金融庁の回答で、次の二点がどう整理されたかである。
- 「資金提供の確保」として求められる水準
- アプリ上での商品表示が勧誘にあたるか
また10月5日には、券面を発行しない預託証券に表示されるべき権利を有価証券とする改正が施行される。
進捗段階
規制トラック:③(公布・施行済み)。活用事例はまだ確認されていない。
用語解説
- デジタル社債(ST社債):ブロックチェーンなどの分散台帳で権利を管理する社債である。社債振替制度の外で発行されることが多い。発行体が投資家を直接把握でき、利払いにポイントを組み合わせるなど、顧客接点として使われてきた。
- 募集の取扱い・私募の取扱い:発行体のために、有価証券の取得を投資家に勧誘する行為である。業として行うには、原則として金融商品取引業の登録が必要になる。発行体が自ら行う勧誘(自己募集)は、この規制の対象外である。
- 金融商品取引業:金融商品取引法が定める、有価証券の売買仲介や募集の取扱いなどの業務である。登録制で、適合性原則や説明義務などの行為規制がかかる。今回の改正は、グループ会社の勧誘を一定の条件で発行体自身の勧誘と同じに扱い、この登録の要否を整理した。
- 預託証券:外国株式などを本国の預託機関に預け、その権利を別の市場で表示する証券である。米国のADRが代表例である。券面を発行しない場合でも有価証券にあたることを、今回の改正で明確にした。
出典
- 金融庁「「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果等について」(2026年9月15日): https://www.fsa.go.jp/news/r8/sonota/20260915/20260915.html
- 金融庁「「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」に対するパブリックコメントの実施について」(2026年7月24日): https://www.fsa.go.jp/news/r8/sonota/20260724-2/20260724.html
- 金融庁「(別紙1)金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の一部改正(案)」(2026年7月24日): https://www.fsa.go.jp/news/r8/sonota/20260724-2/01.pdf
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