米CFTCの3部局は2026年9月24日、暗号資産とブロックチェーンに関するFAQを更新した。先物業者(FCM)と清算機関は、もともと運用が認められている資産であれば、そのトークン化版でも顧客資金を運用できることを明確にした。法定の記録をブロックチェーン上だけで保存することも認めた。ただし、決済用ステーブルコインで顧客資金を運用することは引き続き認めていない。国内の分別管理の議論にも応用できる基準である。職員の見解で拘束力はなく、実際に業者が採用するかどうかが焦点となる。
何が起きたか
CFTCの市場参加者部、市場監督部、清算リスク部は9月24日、暗号資産とブロックチェーン技術に関するFAQに新しい問答を4つ加え、既存の1問を改訂した。新しい問12では、FCMと清算機関(DCO)が規則1.25で認められた運用先のトークン化版に顧客資金を投資できると答えた。条件は4つある。原資産自体が認められた運用先であること、トークンが従来の形と同等の法的・経済的権利を与えること、流動性や集中度、残存期間などの条件を満たすこと、そして適格な保管機関で保有することである。トークン化した政府系MMFについては、保管者から書面の確認書を取ることも求める。改訂した問5では、店頭デリバティブの証拠金について、暗号資産は適格担保ではないとしたうえで、条件を満たすトークン化MMFの受け渡しは認めた。問13から15では、記録保存の規則は技術に中立だとして、オンチェーンの記録で義務を果たすことを認めた。オフチェーンの控えを持たない選択も妨げないが、パブリックチェーンを使う場合は、ネットワークが止まっても記録を提出できる体制を求めている。一方、決済用ステーブルコインで顧客資金を運用することは、既存の問4のとおり引き続き認めていない。
なぜ重要か
判断の軸は一貫している。トークンかどうかではなく、従来の資産と同じ権利を持つかどうかで扱いを決めるという考え方だ。国内でも、顧客分別金の信託先や清算機関に差し入れる証拠金の代用有価証券に、トークン化した資産をどこまで認めるかは、いずれ実務で問われる。そのとき、権利の同等性、保管機関の適格性、保管者による確認という3点で整理する今回の方式が参考になる。記録保存の問答は、ブロックチェーンを帳簿の正本として使う道を開くものでもある。
注視点
FCMが実際にトークン化MMFで顧客資金を運用するかどうかが第一の焦点である。決済用ステーブルコインを運用先に加えるには規則1.25の改正が必要で、CFTCがその手続きに入るかどうかも注目される。パブリックチェーンで記録を保存する場合に求められる体制が、具体的にどう示されるかもあわせて見ておきたい。
進捗段階
規制トラック:③に相当(既存規則の解釈として、公表と同時に使える。ただし職員の見解で、拘束力や法的な保証はない) 実装トラック:対象外
用語解説
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FCM(先物取次業者):顧客から先物などの注文を受け、証拠金を預かる米国の登録業者。預かった顧客資金は分別して管理し、運用できる先も規則で限られている。日本でいえば、商品先物取引業者や、金融先物を扱う証券会社にあたる。
- 英:futures commission merchant (FCM) / 用例:An FCM may now hold tokenized Treasuries as an investment of customer funds. (FCMは、顧客資金の運用先としてトークン化国債を保有できるようになった)
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規則1.25(顧客資金の運用規制):FCMや清算機関が顧客資金を運用できる先を、国債やMMFなどに限る規則。顧客の資金を安全で換金しやすい資産にとどめ、業者の破綻時にも確実に返せるようにするためのものである。決済用ステーブルコインはこの一覧に入っていない。
- 英:Regulation 1.25 / 用例:Regulation 1.25 still does not list payment stablecoins as permitted investments. (規則1.25は、依然として決済用ステーブルコインを運用先として認めていない)
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機能的同等性:トークン化した資産が、従来の形と同じか、実質的に同じ法的・経済的権利を保有者に与えていること。この条件を満たせば、既存の規制上の扱いをそのまま当てはめられる。形式の新しさではなく、権利の中身で扱いを決めるための基準である。
- 英:functional equivalence / 用例:Staff stressed functional equivalence between tokenized and traditional fund shares. (職員は、トークン化した持分と従来の持分の機能的同等性を強調した)
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スタッフFAQ(職員見解):当局の部局が、既存の規則の解釈を問答の形で示したもの。規則を改正せずに実務の不確実さを減らせる一方、法的な拘束力はなく、委員会そのものの判断でもない。今回のFAQも、執行をしないと約束するノーアクション・レターではないと明記している。
- 英:staff FAQ / 用例:The staff FAQ clarifies existing rules but creates no binding obligations. (このスタッフFAQは既存の規則を明確にするが、拘束力のある義務は生まない)
出典
- CFTC「FAQs Concerning Registrant and Registered Entity Activities Relating to Crypto Assets and Blockchain Technologies」(2026年9月24日更新版): https://www.cftc.gov/media/14671/FAQ_CryptoAsset092426/download
- Crowdfund Insider「CFTC Staff Releases Updates To FAQs Concerning Registrants And Registered Entity Activities Relating To Crypto Assets And Blockchain Technologies」(CFTC発表の転載)(2026年9月24日): https://www.crowdfundinsider.com/2026/09/312725-cftc-staff-releases-updates-to-faqs-concerning-registrants-and-registered-entity-activities-relating-to-crypto-assets-and-blockchain-technologies/
- Ledger Insights「CFTC clarifies futures brokers can invest customer funds in tokenized MMFs, Treasuries」(2026年9月25日): https://www.ledgerinsights.com/cftc-clarifies-futures-brokers-can-invest-customer-funds-in-tokenized-mmfs-treasuries/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。