NEWSシンガポール実装実証実験(PoC)2026-08-27

Visa、シンガポール金融管理局主導の「BLOOM」に参加 週7日決済をNiumと実証へ

国際カードブランドが、中央銀行の監督下にある枠組みでステーブルコイン決済を試す。技術ではなく、共通の規律をどこに置くかが論点になっている。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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Visaは2026年8月25日、シンガポール金融管理局が主導する決済枠組み「BLOOM」への参加を発表した。BLOOMは2025年10月16日に立ち上げられ、トークン化された銀行負債と規制対象のステーブルコインを決済資産として使えるようにすることを目的とする。VisaはNiumを最初のパートナーとし、週末・祝日を含む週7日の決済が可能かを検証する。日本の決済事業者にとっては、営業日ベースの資金決済がプリファンド負担を生む構造への示唆がある。実証の開始時期も対象銘柄も公表されていない。

何が起きたか

Visaのリリースによれば、BLOOMは既存の決済システムとステーブルコイン決済経路の相互運用を可能にすることを狙う枠組みである。MASの発表資料では、G10通貨とアジア通貨を対象に国内・クロスボーダーの決済を扱い、企業の資金管理、貿易金融、AIエージェントによる決済を想定用途に挙げる。当初参加者にはCircle、Coinbase、DBS、OCBC、UOB、Stripeなどが名を連ね、その後J.P.モルガンやスタンダードチャータード、2026年8月にはメイバンク・シンガポールが加わった。

今回検証するのは、決済が営業日に限られる現状を週7日に広げられるかという点である。対象は米ドル建て・ユーロ建てを含む規制対象ステーブルコインとされるが、具体的な銘柄は示されていない。

なお両社はBLOOMの外で2025年11月から二者間でUSDCによる決済を行っている。今回加わるのは技術的な能力ではなく、中央銀行が設計・監督する共通のコンプライアンス構造のほうだとみられる。

なぜ重要か

カード決済の資金決済が週5日である限り、アクワイアラや発行体はVisaに対して相応の担保や事前資金を積む必要がある。決済頻度が上がれば、この待機資金を薄くできる。「送金が速くなる」話ではなく、バランスシート上に寝ている資金が減る話である。日本のカード会社が国際ブランドとの決済で抱える前提と同じ構造にある。

もう一つは規制の相互運用性である。BLOOMの本質は、参加者が個別に相手方と契約を結ぶのではなく、当局が設計した共通の枠組みの下で決済資産を扱える点にある。日本でも金融庁のFinTech実証実験ハブが同種の役割を果たすが、対象がマルチカレンシーである点でBLOOMは射程が広い。円建てステーブルコインが国際的な決済網に接続する際どの枠組みに乗るのかという問いは、遠からず日本の事業者にも来る。

注視点

実証の開始時期・対象通貨・使用銘柄が明らかになるか。リリースはいずれも示していない。実運用へ移る条件がどう設定されるか。そしてBLOOMに邦銀・邦系決済事業者が参加するかどうか。現時点の参加者リストに日本の金融機関の名前はない。

進捗段階

① 実証実験(PoC)(実装系)。VisaとNiumは二者間でのUSDC決済を2025年11月から行っているが、BLOOMの枠組み下での週7日決済は「探索する」という表現にとどまり、開始時期も公表されていない。②(限定実装)に進むには、実際の決済フローが規制枠組みの下で反復的に流れていることの確認が要る。

用語解説

  • BLOOM:Borderless, Liquid, Open, Online, Multi-currencyの頭字語。MASが2025年10月に立ち上げた業界横断の取り組みで、トークン化された銀行負債と規制対象ステーブルコインを決済資産として使えるようにすることを目的とする。デジタルシンガポールドルを検証した「Project Orchid」の後継にあたる。
  • トークン化された銀行負債:銀行が負う債務(預金など)をブロックチェーン上のトークンとして表現したもの。発行銀行のバランスシートに残るため、ステーブルコインと違って発行体の信用リスクが銀行そのものの信用リスクと一致する。
  • プリファンド(事前資金):決済が完了する前に、決済ネットワークや相手方に事前に置いておく資金。決済サイクルが長いほど厚く積む必要があり、その分だけ運転資金が固定される。クロスボーダー決済のコストのうち、送金手数料より大きな比重を占めることがある。
  • アクワイアラ:カード決済において加盟店と契約し、売上代金の立替払いを行う事業者。国際ブランドとの間で資金決済を行う立場にあるため、決済頻度と担保・事前資金の水準が直接の経営課題になる。
  • 決済資産(settlement asset):取引の最終的な支払いに用いられる資産。中央銀行マネー、商業銀行マネー、ステーブルコインなど複数の選択肢があり、どれを使うかで残る信用リスクの所在が変わる。BLOOMはこの選択肢を広げつつ、共通の管理手法を整えることを狙っている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-27

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