NEWS欧州実装本番稼働(全面)2026-08-16

ブラックロック、欧州UCITSマネー・マーケット・ファンドにトークン化受益証券クラスを追加 基盤はJPモルガンKinexys

ブラックロックは、欧州の既存MMF6本に対しパブリック・イーサリアム上のトークン化受益証券クラス12本を追加した。新ファンドを組成せず、既存の規制商品に「持分の記録形式」だけを追加した点が、日本の運用会社・信託銀行にとっての要点である。

BY OFM Research · 3 MIN READ

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ブラックロックは、欧州の既存MMF6本に対しパブリック・イーサリアム上のトークン化受益証券クラス12本を追加した。新ファンドを組成せず、既存の規制商品に「持分の記録形式」だけを追加した点が、日本の運用会社・信託銀行にとっての要点である。

何が起きたか

2026年8月4日、ブラックロックは欧州で初となるファンドのトークン化アクセスを開始した。対象はBlackRock Institutional Cash Series(ICS)のうち、公的債務CNAV型および低ボラティリティNAV型のMMFで、ユーロ・英ポンド・米ドル建ての各ファンドに、分配型(Dis)と累積型(Acc T0)の2クラスずつ、計12本のオンチェーン受益証券クラスが設定された。同社の資料によれば、トークン化クラスを設定する対象ファンドの合算運用資産は2026年6月30日時点で3,110億米ドル(1ドル159円換算で約49兆4,000億円。レートは2026年8月14日時点の対円相場を使用)。この金額はファンド全体の残高であり、オンチェーンで表章される部分の規模ではない。

トークンの発行・償却および基盤提供はJPモルガンのブロックチェーン部門「Kinexys」が担う。各トークンはICSファンドの受益権1口に対応する一方、正式な株主名簿は従来どおりファンドのトランスファーエージェント(名義書換代理人)が維持する。ブラックロックは想定用途として、企業財務における流動性最適化、デジタル担保管理、銀行・ウェルス・デジタル各チャネルでの販売、他のトークン化エコシステムとの接続を挙げている。提供地域はアイルランド、ルクセンブルク、英国、ドイツ、フランス、シンガポール、バミューダなど13の国・地域である。

なぜ重要か

日本の運用会社・信託銀行にとっての示唆は、商品ではなく構造にある。UCITSでは一つのファンドが単一の資産プールと運用方針を持ち、その上に通貨や分配方針の異なる複数の受益証券クラスを載せられる。今回はそこに「持分の記録形式」という差異を加えたにすぎない。新ファンドの組成も既存投資家の移管も伴わないため、承認・監査・販売体制への影響を最小化しつつ、オンチェーン機能を後付けできる。国内でも投資信託約款上のクラス設計や受益権記録の位置づけを整理できれば、同様の増設型アプローチは検討余地がある。

第二に、名義書換代理人が公式記録を保持する設計は、トークンを法的な権利原簿そのものではなく移転手段として扱う整理である。これは、振替制度と帳簿の法的性質を維持したままオンチェーン化を進める国内の実証と発想が近い。

第三に、担保としての利用可能性である。24時間365日の当事者間移転が可能なMMF持分は、デリバティブ証拠金や資金取引の担保として、円貨MMFや国債での担保繰りを担う部署にとって将来の比較対象となり得る。

注視点

最大の論点は、オンチェーン・クラスに実際にどれだけの資金が入るかである。同社は残高を開示しておらず、3,110億ドルという数字が普及度の代替指標として独り歩きしないか注意を要する。加えて、パブリックチェーンを選択したことに伴う適格投資家ウォレットの管理・アドレス制限の運用、法域ごとの適格性判断、そして日本の投資家が直接投資できる枠組みが用意されるかが、今後の焦点となる。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-16

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