NEWSグローバル実装③本番稼働(限定領域)2026-09-14

ビザ、精算データをオンチェーンの貸し手に開放 ステーブルコインカードの立替資金を埋める

ステーブルコインカードの事業者が抱えているのは、技術ではなく数日分の運転資金である。ビザはそこに、自社の精算データを当てた。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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ビザは9月8日、VisaNetの精算データをブロックチェーン上の貸し手に開示し、ステーブルコイン連動カードの事業者が運転資金を調達できるようにする仕組みを公表した。同社によれば、ネットワーク上では160を超えるステーブルコイン連動カードのプログラムが稼働し、決済額は前年比で約200%増、ステーブルコインによる精算額は年率換算で200億ドル(約3兆円)を超えた。先行して協業するCredit Coopは、2023年以降に25億ドル超の精算債権を資金化し、参加ファシリティで債務不履行はないとしている。

何が起きたか

米国のステーブルコイン連動カードは、規制上の理由からクレジットカードとして組成され、ステーブルコインによる100%の担保を必要とする。事業者はビザに対して日次で精算する一方、利用者のスマートコントラクトウォレットからの回収は後になるため、その間の運転資金が要る。従来型の事業者は貸付枠や証券化でこの穴を埋めるが、日々の必要額が数百万ドル規模で営業年数も1年に満たないプログラムでは、銀行のファシリティは採算に合わない。ビザは、顧客の同意を前提にVisaNetの精算データとオンチェーンの取引記録を組み合わせ、貸し手が与信を評価できるようにする。返済は精算フローから直接引き当てる。先行事例のCredit Coopはスマートコントラクトで資金供給、担保管理、返済を自動化しており、2023年以降で25億ドル(約3840億円)超の精算債権を資金化し、3000件超の借入と9000件超の返済をオンチェーンで処理したとしている。ビザの分析基盤によれば、2020年以降にオンチェーンの貸付プロトコルを通じて送られたステーブルコイン建て貸付は6940億ドル(約106兆円)超に達する。

なぜ重要か

決済事業者の精算債権という、既存の金融が最も得意とするはずの担保が、実績の見えなさゆえに与信の対象になっていなかった。その穴をオンチェーンの貸付が埋めているという構図である。国内でも電子決済手段に連動するカードや、立替を伴う決済サービスが増えれば同じ運転資金の問題が出る。銀行にとっては、小口・短期・高回転の資金需要をどう取るかという課題であり、精算データの提供元と組んで与信する形は、カード会社や決済代行と組む際の設計の参考になる。同時に、この領域を取り逃がせば、与信そのものがノンバンクとオンチェーンの貸し手に移る。

注視点

貸し手の範囲、データ提供の対価、利用者の同意取得の方式は公表されていない。債務不履行ゼロという実績は、担保付きで短期・小口という性質と、市場環境が大きく崩れていない期間の実績である点に注意が要る。国内でこの型を持ち込む場合、貸金業法上の位置づけと、精算債権の譲渡・質入れに関する整理が前提になる。

用語解説

  • 精算(セトルメント):カード取引で、加盟店への支払いと発行体からの資金回収を差し引きして資金を動かす工程。ビザのネットワークでは日次で処理され、発行体側の資金需要はこの周期から生じる。
  • 精算債権:カード事業者が利用者から将来回収する見込みの債権。安定した担保になりうるが、実績データが外部から見えないため従来は与信が付きにくかった。
  • VisaNet:ビザが運営する決済処理ネットワーク。取引の承認と精算を担い、そこに蓄積される精算データが今回の与信判断の材料になる。
  • スマートコントラクトウォレット:条件付きの支払いや引き落としをプログラムで実行できるウォレット。カード利用分の回収を自動化する用途で使われる。
  • オンチェーン貸付プロトコル:担保の預け入れと貸付、清算をスマートコントラクトで自動処理する仕組み。24時間稼働し、少額・短期の資金需要にも対応しやすい。

出典

外貨建て金額の円換算は、1ドル=153.61円(2026年9月11日ニューヨーク市場終値)により筆者が算出した。


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-14

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