NEWSその他実装③本番稼働(限定領域)2026-09-14

インドのトークン化社債、3社で約1億700万ドル デジタルルピー決済の本番運用が動き出す

トークンそのものが債券で、所有の法的な記録は保管振替機関に残る。インドはこの折衷案を、実際の資金を使って本番で動かし始めた。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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インドの社債トークン化の試行「Demat 2.0」で、REC Limitedの初回発行に続き、9月9日にエンジニアリング大手L&Tが50億ルピー、証券会社IIFLが2億5000万ルピーを起債した。Ledger Insightsによれば累計は102億5000万ルピー、約1億700万ドル(約164億円)となる。SEBIは、トークン化債券をデジタルルピーで決済した世界初の本番運用事例だと説明している。トークン自体が債券であり、所有権の正式な記録は保管振替機関に残る設計が明らかになった。

何が起きたか

L&Tは9月9日に4投資家から50億ルピー(約5200万ドル、約80億円)、IIFLは同日に単一投資家から2億5000万ルピーを調達した。債券は保管振替機関であるNSDLとCDSLが保有する分散型台帳上でデジタルトークンとして発行され、トークンそのものが債券である。「トークン化債券」と呼ばれてはいるが、既発の証券をデジタル複製したものではない。所有権の正式な記録は預託機関法に基づき保管振替機関に残り、分散型台帳はその記録を保持する形式にすぎない。試行は3段階で進む。現在の第1段階は発行が対象で、クーポン支払いなどの資産管理業務は台帳上のスマートコントラクトが担う。参加は当面、機関投資家に限られる。第2段階では既存のRFQプラットフォームを通じた流通市場取引を可能にし、個人投資家にも開放する。移行期には流動性確保のため相対移転を認めることもありうるとされる。第3段階では格付機関や保管振替参加者といった規制対象事業者にノードを広げ、他の商品種別も取り込みうる。RBI幹部は、次にトークン化する資産として金に言及した。

なぜ重要か

「オンチェーンを正とするか、既存の権利記録を正とするか」という設計上の分岐で、インドは後者を選んだうえで本番に入った。振替法の下で口座管理機関の階層構造を維持したままトークン化を検討している日本にとって、最も参照しやすい先行例である。中央銀行のデジタル通貨で資金側を決済することで同時受け渡しを成立させている点も、円側の決済手段をどう用意するかという国内の議論に直結する。既存の法制度を変えずに記録の形式だけを置き換える方針は、制度改正に時間のかかる市場ほど現実的な道筋になる。

注視点

第2段階への移行時期は示されていない。流通市場の設計、とくに既存のRFQプラットフォームとの接続方法と個人投資家への開放条件が次の焦点になる。金のトークン化はRBI幹部の言及にとどまり、枠組みは公表されていない。金額はLedger Insightsが示したドル換算値に依拠しており、発行各社の開示との突き合わせは済んでいない。

用語解説

  • Demat 2.0:インドの社債をネイティブなデジタル形式で発行・決済する試行の呼称。既存の口座振替制度(demat)の次世代版と位置づけられ、SEBIとRBIが共同で枠組みを整えた。
  • 保管振替機関(NSDL・CDSL):インドで有価証券の権利記録を管理する中央機関。今回の設計では、分散型台帳を採用しても法的な所有記録はこの両機関に残る。
  • ホールセール型CBDC(デジタルルピー):金融機関間の決済に用いる中央銀行デジタル通貨。証券のトークンと同じ環境で動かせば、資金と証券の同時受け渡しが技術的に成立する。
  • ネイティブ・デジタル発行:既存の証券をデジタルに写すのではなく、最初からトークンとして発行する方式。原本と写しの不一致という問題が生じない。
  • RFQプラットフォーム:投資家が価格提示を求めて相対で約定する電子取引の場。インドの社債流通市場で既に使われており、第2段階ではここに接続する構想とされる。

出典

外貨建て金額の円換算は、1ドル=153.61円(2026年9月11日ニューヨーク市場終値)により筆者が算出した。


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-14

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