集計サイトJPYC Infoによれば、円建てステーブルコインJPYCの流通量は9月10日15時時点で4チェーン合計約19億9753万JPYCとなり、20億JPYCを下回った。8月30日の約27億800万JPYCから11日間で約7億1000万JPYC、約26%の縮小である。減少はKaia上に集中しており、同チェーン上のウォレットサービスが年率5%の利回り特典を9月1日に基本年率2%へ切り替えた時期と重なる。発行体による公表ではなく集計サイトのデータである点に留意が必要となる。
何が起きたか
JPYCの流通量は6月26日時点の10億JPYCから7月9日までの約2週間で倍増し、8月25日には約28億5000万JPYCまで拡大していた。8月末から減少に転じ、9月6日時点で約20億9700万JPYC、9月10日15時時点で約19億9753万837JPYCとなった。減少の中心はKaia上で、8月30日の約17億8000万JPYCから9月10日の約10億3700万JPYCへ、約7億4300万JPYC減っている。Polygonなど他チェーンでは増加した時期もあったが、Kaiaの減少を補うには至っていない。時期が重なるのが、Kaia上のウォレットサービス「Unifi」による利回り特典の終了である。同サービスはJPYCの預け入れに年率5%を提供する期間限定特典を実施していたが、公式Xで9月1日午前9時から基本年率2%へ切り替えると告知していた。これらはいずれも集計サイトの数値と運営各社の告知に基づくもので、発行体であるJPYC株式会社の公表ではない。
なぜ重要か
電子決済手段の残高が何によって支えられているかを実データで確認できる、稀な機会である。決済需要で積み上がった残高は特典の終了で消えないが、利回り目的で流入した残高は消える。金融機関がステーブルコインの事業計画を立てる際、発行残高の目標値をそのまま需要の指標として扱うと、この種の入れ替わりを見落とす。三メガバンクの共同発行やJPYSCを含め、円建ての残高を評価するときはチェーン別の内訳と誘因の有無まで見る必要がある。裏付け資産の運用計画も、残高が数週間で4分の1動きうる前提で組むことになる。
注視点
減少が特典終了による一巡なのか、さらに続くのかは、今後数週間のチェーン別推移を見ないと判断できない。集計サイトの数値には発行体保有分の扱いなど定義上の違いがありうるため、発行体側の開示と突き合わせられるかが課題である。決済用途の実績を測る指標として、送金件数や保有アドレス数の推移も併せて追う必要がある。
用語解説
- 電子決済手段:改正資金決済法が定める、法定通貨建てで額面で償還される決済用トークンの法的区分。発行できるのは銀行、信託銀行、資金移動業者などに限られ、JPYCは資金移動業者として発行している。
- 流通量(供給量):発行され、償還されずにチェーン上に存在しているトークンの総額。決済に使われた量ではなく残高であり、利用実績とは別の指標である。
- Kaia:JPYCが対応する4つのブロックチェーンのうちの一つ。今回の減少はこのチェーン上に集中している。
- 利回り特典:トークンを預け入れた利用者に年率で報酬を付与する販促施策。残高を短期間で積み上げる効果があるが、終了すると資金が引き揚げられやすい。
- オンチェーンデータ集計サイト:ブロックチェーン上の公開情報を集計して残高や取引を可視化するサービス。発行体の公式開示ではないため、集計範囲の定義を確認したうえで使う必要がある。
出典
- NADA NEWS「JPYC流通量、20億円割れ──11日間で約7.1億円減少」(2026年9月10日): https://www.nadanews.com/367541/
- NADA NEWS「JPYCの流通量減少止まらず、一週間で約6億円減」(2026年9月7日): https://www.nadanews.com/367228/
- NADA NEWS「JPYC流通量が約3カ月半ぶり減少──過去最大の1.6億円減」(2026年8月31日ごろ掲載): https://www.nadanews.com/366233/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。