米国財務省は、GENIUS法3条を実施する規則案(NPRM)を公表した。ペイメントステーブルコインを誰がどこで発行・販売できるかを定める中核条項であり、条文上明示的に域外適用されるため、日本の発行体および取扱業者にも直接効いてくる。
何が起きたか
規則案は8月18日付の連邦官報に掲載され(91 FR 53368)、意見受付は10月19日まで。連邦規則集12編に新パート1523を設け、GENIUS法本体が定義していなかった「発行する(issue)」と「米国内に所在する(located in the United States)」を初めて条文化した。
「発行」は、発行体による最初の移転と定義される。口座への記帳や代理人経由の間接的な移転も含み、ミント済みでも発行体の手元に留まるトークンは未発行だが、保有者のウォレットへ直接ミントした時点で発行にあたる。「米国内に所在する」は、個人については米国内での物理的所在(米国非居住者の一時滞在は除外)、法人については米国法に基づく設立または主たる営業所の所在で判定する。
米国外の発行体向けには、①米国内に所在しないこと、②交付先が米国内にいないと合理的に信じること、③そのための方針・手続・統制を整備し実際に運用していること、④米国内の者を対象とする広告・勧誘を行わないこと——この4要件を満たせば米国内での発行にあたらない、という規定が置かれた。
なぜ重要か
効いてくるのは発行体だけではない。GENIUS法3条(b)(2)は法の発効予定日(2027年1月18日)から適用され、外国発行体のステーブルコインについては、当該発行体が適法な命令(lawful order)に応じる技術的能力と遵守意思を備えていなければ、デジタル資産サービス提供者は米国内で提供・販売・利用可能化できない。日本の電子決済手段等取引業者や暗号資産交換業者が、この提供者の立場に置かれる場面は想定しうる。財務省は今回、提供者が発行体の表明に依拠することを認めつつ、合理的なデューデリジェンスの実施を条件としており、実務上は取扱銘柄の審査項目が一つ増えることになる。
円建てステーブルコインの発行体にとっては、資金決済法上の規制が米財務長官によりGENIUS法と「同等(comparable)」と判定されるかどうかが、米国市場へのアクセスを左右する。
注視点
財務省は代替案として、証券法のレギュレーションS型のオフショア取引枠組みを採用する選択肢も併記し、意見を求めている。採られれば既存の証券実務の枠組みを流用できる一方、米国向け勧誘行為(directed selling efforts)の線引きが新たな論点となる。GENIUS法18条に基づく国別の同等性判定と、日米間の相互取決めの進展もあわせて追う必要がある。
出典
- 米国財務省「Treasury Seeks Public Comment on GENIUS Act Proposed Rulemaking」(2026年8月17日): https://home.treasury.gov/news/press-releases/sb0605
- 米国財務省「GENIUS Section 3 NPRM」(規則案本文PDF): https://home.treasury.gov/system/files/136/GENIUS%20Section%203%20NPRM.pdf
- 連邦官報「GENIUS Act Regulations on Payment Stablecoin Issuance, Offer, and Sale」91 FR 53368(2026年8月18日): https://www.federalregister.gov/documents/2026/08/18/2026-16796/genius-act-regulations-on-payment-stablecoin-issuance-offer-and-sale
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