米上院のシンシア・ルミス議員は2026年9月6日、自身のXへの投稿で、暗号資産市場構造法案「クラリティ法案」が今議会で成立しなければ、市場構造法制を再び取り上げる現実的な機会は2030年になるとの見方を示した。同法案は2025年7月に下院を通過し、2026年5月に上院銀行委員会を15対9で可決したまま本会議で滞留している。上院は9月15日に討論終結の手続き投票を予定し、可決には60票が必要となる。成立しなければ証券と商品の区分は当局の解釈に委ねられ続ける。
何が起きたか
ルミス議員は、今議会で仕上げれば失わずに済む雇用・投資・税収が数年分あるとして、審議の完了を促した。同議員は2026年7月にも法案の更新版テキストを公表し、その後の数週間が数年ぶりの現実的な機会になりうると述べていた。今回は、その先送り幅に2030年という具体的な年を置いた点が新しい。
9月15日の投票は法案の可決ではなく、討論を終結させて次の段階へ進めるかどうかを決める手続きである。報道によれば、民主党側は倫理関連の条項を盛り込むことを求めており、この論点は解決していない。上院が法案を修正した場合、下院で改めて処理する時間が残るかという日程上の制約も指摘されている。また、CFTCのマイケル・セリグ委員長は2026年8月21日、法案が9月に停滞するようであればCFTC自身がデジタル資産の市場構造規則を提案すると述べたと報じられている。予測市場では年内成立の確率が2割弱だとの報道もある。
なぜ重要か
日本の金融機関にとっての焦点は、法案の中身よりも「法律で決まるのか、当局の解釈で運用され続けるのか」という点にある。米国では2026年3月にSECとCFTCが暗号資産への証券法の適用について共同の解釈を示しており、区分は実務上機能している。ただし解釈は政権交代や当局の人事で変わりうるのに対し、法律は変わりにくい。米国拠点で暗号資産関連業務を営む日本の証券会社・銀行にとって、取扱範囲の設計をどの時間軸で固定できるかが変わる。
日本は同一の商品について、金融商品取引法と資金決済法のいずれで規律するかを法律の側で切り分けてきた。米国が当面を解釈で運用する場合、同じ商品が日米で異なる根拠に基づいて扱われる状態が長引く。グループ内で日米にまたがる商品を組成する際、準拠する枠組みの違いが商品設計そのものに反映される。
注視点
まず9月15日のクローチャー投票の結果である。仮に成立しても、規則制定と施行までにはさらに時間がかかる。停滞した場合は、CFTCが独自の規則案を出すのか、SECとの共同解釈の運用が続くのかが次の分岐になる。ルミス議員が挙げた2030年という年は本人の見立てであり、手続き上確定した期限ではない。
進捗段階
規制トラック①(立法過程・審議中)。下院可決と上院委員会可決を経ているが、上院本会議の手続き投票を控えており、成立の見通しは立っていない。
用語解説
- クラリティ法案:米国でデジタル資産を分類し、SECとCFTCの管轄を法律で振り分けることを目的とした市場構造法案。どの資産が証券でどれが商品にあたるかを定義し、開示や顧客保護の規律を割り当てる内容とされる。2025年7月に下院を通過した。
- クローチャー:米上院で討論を終結させるための手続き。議事妨害(フィリバスター)を封じるために60票を必要とし、これを満たさなければ法案は本会議で採決に進めない。法案そのものへの賛否とは別の投票である。
- デジタル・コモディティ:暗号資産のうち、証券ではなく商品として扱われる類型を指す概念。証券であればSECの開示規制が、商品であればCFTCの市場規制が及ぶため、どちらに分類されるかで発行体と取引所の義務が大きく変わる。
- 上院銀行委員会:米上院で銀行・証券・住宅金融などを所管する常任委員会。法案は本会議に進む前にここで審議・採決される。今回の法案は2026年5月に15対9で可決された。
- 共同解釈:SECとCFTCが2026年3月に示した、暗号資産と関連取引への連邦証券法の適用に関する解釈。両当局が2026年3月に締結した覚書に基づく協調の産物で、法律の制定を待たずに実務上の指針を与えている。
出典
- Senator Cynthia Lummis(@SenLummis)のX投稿(2026年9月6日): https://x.com/SenLummis/status/2096644344795246746
- CoinGape「Sen. Lummis: If CLARITY Fails This Congress, Market Structure Legislation Slips to 2030」(2026年9月7日): https://coingape.com/sen-lummis-if-clarity-fails-this-congress-market-structure-legislation-slips-to-2030/
- crypto.news「US crypto regulations in 2026: the complete map」(2026年9月時点): https://crypto.news/us/
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。