NEWS日本実装②限定実装(パイロット)2026-09-09

ハウス食品グループ本社、抽選100名に1,000JPYCを配布──万博で配ったSBTの保有者は当選確率10倍

ステーブルコインは決済からではなく、企業が生活者に少額を配るところから日常に入ってくるのかもしれない。上場事業会社が景品に使い始めた。

BY OFM Research · 4 MIN READ

SHARELB!

ハウス食品グループ本社は2026年9月8日、「JPYCおすそわけキャンペーン」を同日11時から9月27日23時59分まで実施すると発表した。HashPortの技術協力のもと、デジタルウォレット「HashPort Wallet」から応募した人から抽選で100名に、円建てステーブルコイン「JPYC」を1,000JPYC(1,000円相当)贈呈する。万博の関連キャンペーンで配布した対象SBTの保有者は当選確率が10倍になる。上場事業会社が円建てステーブルコインを景品に用いる事例であり、決済用途ではない。

何が起きたか

参加者は特設サイトからHashPort Walletにログインし、対象のSBTを獲得したうえで応募する。SBTは他人への譲渡や売買ができないNFTの一種で、参加証や証明書の用途に使われる。HashPort Walletは大阪・関西万博で提供された「EXPO2025デジタルウォレット」の後継として、万博終了後にリニューアルされたサービスである。

ハウス食品グループは万博期間中、自社キャラクターのNFTを用いたデジタル施策でSBTを配布しており、そこで生まれた生活者との接点を万博終了後も継続することを今回の狙いに挙げた。HashPortはウォレット基盤の提供と技術面の支援を担う。JPYCは2025年10月27日に資金移動業型のステーブルコインとして発行が始まり、裏付け資産は預貯金と国債で保全され複数のブロックチェーンで流通していると報じられている。配布総額は1,000円×100名で10万円相当にとどまる(筆者計算)。

なぜ重要か

金融機関の目線で見るべきは景品の中身ではなく、少額を多数へ一斉に渡す経路である。銀行振込では1件あたりの手数料と口座情報の収集が壁になり、ギフト券では換金性と会計処理が問題になる。ステーブルコインは、受取側がウォレットを持っていれば送付単価を下げられ、資金移動業型であれば法定通貨との1対1の交換が制度上担保される。

つまり販促のキャッシュバック、アンケート謝礼、業務委託報酬といった小口の一斉送金が、預金口座を経由しない経路へ移りうる。銀行にとっては振込手数料収入と口座接点の双方に関わる話であり、受取人の本人確認や税務上の扱いは事業者側に残る論点である。

注視点

規模は100名にとどまり、実証の域を出ない。継続的な販促手段として定着するかは、ウォレット保有者数と、受け取ったJPYCを使える場所がどれだけ増えるかに左右される。万博で配布したSBTの保有者に当選確率で差を付ける設計は、過去の接点を識別子として再利用する試みであり、顧客データの扱いという観点でも先例になりうる。

進捗段階

実装トラック②(限定的な実運用)。実際に価値の移転を伴う施策として稼働しているが、対象は抽選100名の景品配布に限られ、既存の決済・販促プロセスを置き換えるものではない。

用語解説

  • JPYC:日本円に価値を連動させたステーブルコインで、1JPYC=1円相当として扱われる。資金決済法上の電子決済手段にあたり、価格が変動する暗号資産とは法的な位置づけが異なる。JPYC株式会社が発行し、複数のブロックチェーン上で流通している。
  • 資金移動業型ステーブルコイン:資金移動業者が発行する類型の電子決済手段。銀行や信託銀行が発行する類型と異なり、発行者は為替取引を業として営む登録を受けたうえで、利用者資金を供託や保証などの方法で保全する。信託型が信託財産として倒産隔離するのに対し、保全の法的な仕組みが異なる。
  • SBT(ソウルバウンドトークン):他者へ譲渡できないよう設計されたNFTの一種。売買できないため転売市場が形成されず、参加証明や資格証明のように「その人が確かに関わった」ことを示す用途に向く。今回は応募資格と当選確率の優遇に用いられている。
  • デジタルウォレット:ステーブルコインやNFT・SBTをスマートフォン上で保有・管理する仕組み。銀行口座と異なり、事業者から利用者へ直接トークンを送る経路になるため、少額多数の配布では送付コストが問題になりにくい。
  • 電子決済手段:資金決済法が定める、法定通貨に価値が連動し額面で償還される決済手段の総称。暗号資産とは別の類型として整理されており、発行者の類型ごとに裏付け資産の保全方法が定められている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-09

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