NEWS米国制度⓪検討・研究2026-09-09

FRBスタッフ、決済用ステーブルコインのM1・M2算入を論点整理──トークン化預金とトークン化MMFは「すでに入っている」

新しいマネーが増えても、統計上の通貨量が同じだけ増えるとは限らない。裏付け資産のほうが先に数えられている場合があるからだ。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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FRBのクリステン・ペイン、メアリーフランシス・スティチンスキー両氏は2026年9月4日、FEDS Noteとして「新しい形態のマネーと米国の通貨集計量」を公表した。トークン化預金は法的に預金のままであるためすでにM1または非M1のM2に含まれ、トークン化マネー・マーケット・ファンドもM2の構成項目に含まれると整理する。一方、GENIUS法に基づく決済用ステーブルコインはいずれの集計量にも含まれていない。算入にはデータ入手、報告基盤、二重計上、地理的範囲の4点の解決が要るとした。政策審議ではない。

何が起きたか

論考は、資産を交換手段として使うか価値の保蔵手段として使うかで分類する枠組みを置く。主に交換手段として使われるものはM1に、短期の貯蓄手段として使われるものは非M1のM2に置く整理で、これを3つの資産に当てはめている。

トークン化預金については、機関投資家が当座預金と同じように24時間365日の銀行間決済、企業財務、越境決済、証券取引の担保管理に使っているとして、交換手段にあたると評価する。ただし銀行の報告様式では伝統的な預金と区別されておらず、別掲すればブロックチェーンを用いた銀行業務の普及度を測れると指摘した。トークン化MMFは現状では価値の保蔵手段だが、決済の迅速化や担保管理、オンチェーンの貸借へ用途が広がっており、交換手段としての用途が支配的になればM1への再分類が検討されうるとする。

決済用ステーブルコインは、暗号資産取引の待機資金として使われるなら非M1のM2、家計と企業の日常的な支払いに使われるならM1に相当するとした。二重計上の問題も挙げる。準備資産に含まれる銀行預金や政府MMFはすでに集計対象であるため、発行残高をそのまま加えれば同じ資金を二度数えることになる。

なぜ重要か

これは統計の技術論にとどまらない。日本銀行のマネーストック統計でも、電子決済手段をどう扱うかは同じ構造の問いになる。信託型ステーブルコインの裏付けが預貯金と国債で保全される以上、発行残高を単純に加算すれば二重計上が生じる。

より実務に近い含意は、トークン化預金が「預金のまま」であるという整理を米中央銀行のスタッフが明示した点である。預金がトークン化されても銀行のバランスシートを離れないが、ステーブルコインへ移れば離れる。両者を統計上で切り分けられれば、預金流出の議論を印象論ではなく数値で行える。

注視点

論考は政策決定ではなく、現行の定義は変わらない。焦点は、GENIUS法が発行体に義務づける月次の準備資産報告が、通貨集計に流し込める標準様式へ整えられるかである。論考はOCC規則案が「適時の償還」を請求受領から2営業日と定義している点にも触れており、償還の実務が確定するまで流動性の評価は定まらない。

進捗段階

規制トラック⓪(研究・論点整理段階)。当局の政策審議ではなくスタッフの個人的見解として公表されたもので、統計定義の変更手続きは開始されていない。

用語解説

  • 通貨集計量(M1・M2):中央銀行が公表する、経済に存在するマネーの量を示す統計。M1は現金と要求払預金のように直ちに支払いに使える最も流動性の高い部分、M2はM1に小口の定期預金やリテール向けMMFなど短期の貯蓄手段を加えたものを指す。政策判断や景気分析の基礎データとして広く使われる。
  • H.6統計:FRBが毎月公表する通貨集計量の統計。セントルイス連銀のデータベースで2番目にダウンロードされている統計だと論考は述べており、定義の変更は多くの利用者に影響する。
  • 二重計上:同一の資金が集計量の複数の項目に同時に含まれてしまうこと。ステーブルコインの準備資産が銀行預金である場合、預金としても発行残高としても数えれば、実際には増えていないマネーが増えたように見える。
  • FEDS Note:FRBの職員が個人の見解として発表する短い分析記事。査読を経た研究論文ほど技術的ではなく、政策決定を示すものでもないが、当局内部の論点整理を外部から読み取る手がかりになる。
  • GENIUS法:米国で2025年7月に成立した、決済用ステーブルコインの発行者を規律する連邦法。準備資産の1対1の裏付けと定期的な報告を求め、保有者への直接の利息支払いを禁じている。連邦レベルの包括的な枠組みとしては初めてのものとされる。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-09

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