NEWSその他実装②限定実装(パイロット)2026-09-09

インドREC、国内初のトークン化社債を発行──ホールセールCBDCでアトミック決済、払込から上場まで同日

証券と資金を同じ日に、同じ手続きの中で動かす。インドはその実験を、中央銀行のデジタル通貨を決済側に据えたうえで、実際の起債として行った。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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政府系金融機関のRECは2026年9月7日、インド証券取引委員会(SEBI)の規制サンドボックス制度のもとで、インド初のトークン化社債を発行したと発表した。発行額は50億ルピー(約82億円、2026年9月9日時点の1ルピー=1.64円で筆者換算)で、応札は79.6億ルピーと基本発行の約8倍にあたる。クーポンは年7.30%、期間は1年9カ月。証券の所有権は許可型分散型台帳「Demat 2.0」に記録され、資金決済にはホールセール中央銀行デジタル通貨が用いられた。払込みから上場までを同日に完了した。

何が起きたか

入札はインド国立証券取引所(NSE)の電子入札プラットフォームで実施され、RECは50億ルピーを年7.30%で受け入れた。発行額は基本発行10億ルピーにグリーンシューオプション40億ルピーを加えた構成である。債券はNSEとボンベイ証券取引所に上場した。RECは、SEBI、インド準備銀行、およびNPCI・預託機関・取引所を含む市場インフラ機関の連携によって実現したと説明し、この発行がアトミックDvP決済と共有台帳による透明性をもたらすと位置づけた。

技術面の要点は二つある。ひとつは証券側で、Demat 2.0により所有権が許可型の分散型台帳上に記録・追跡される。もうひとつは資金側で、ホールセールCBDCが払込みに用いられた。証券の移転と資金の移転が同一の処理として結び付けられるため、片方だけが成立する状態が生じない。RECの財務担当ディレクターは、既存の投資家保護と規制上の安全装置を保ちながらデジタル基盤と分散型台帳、CBDCによる決済を活用したものだと述べている。

なぜ重要か

日本でも、政府と日本銀行がブロックチェーンを用いた次世代決済インフラの検討に入ったと2026年8月に報じられ、日銀当座預金の一部をトークン化する構想が議論されている。インドの事例は、その構想が実装された場合に何が変わるかを先取りして見せている。証券会社・信託銀行にとっての論点は、中央銀行マネーを資金決済に据えたときに、既存の預託機関・取引所・清算機関の役割がどう再配置されるかである。RECの発行では、預託機関も取引所も残ったまま、決済の同時性だけが入れ替わった。国内のST発行が投資家管理の効率化を主眼としてきたのに対し、決済側に中央銀行マネーを置く設計は、発行時の資金拘束期間そのものを縮める。

注視点

本件はサンドボックス内の試行であり、恒久制度としての位置づけは示されていない。流通市場の整備は2026年12月をめどとされ、それまでの二次流通はCBDC用と証券用の双方のウォレットを持つ当事者間に限られると報じられている。次の焦点は、二例目の発行があるか、発行体が政府系以外へ広がるかである。

進捗段階

実装トラック③(一部本番稼働)。実際の資金調達として法的な権利移転と資金決済が生じ、証券取引所への上場も完了している。一方で規制サンドボックス内の単発案件であり、反復的な発行フローには至っていない。

用語解説

  • アトミックDvP:証券の引渡しと代金の支払いを不可分の一処理として実行し、両方が成立するか両方とも成立しないかのいずれかにする決済方式。従来の清算機関はこれを日次のネット決済で近似してきたが、決済までの間は相手方の不履行リスクが残る。同一台帳上で処理すればこのリスクが原理的に消える。
  • ホールセールCBDC:中央銀行が金融機関間の決済のために発行するデジタル通貨。個人が使うリテール型と異なり、利用者は銀行や証券会社などに限られる。証券決済の資金側に置けば、中央銀行マネーで最終性のある決済が台帳上で完結する。
  • Demat 2.0:インドの証券保有をめぐる新しい記録方式で、所有権を許可型分散型台帳上に記録・追跡する仕組み。既存の電子証券制度(デマット口座)を分散型台帳に載せ替えるもので、法定の保護と機関の関与を維持したまま記録の形式を変える設計になっている。
  • 規制サンドボックス:規制当局が範囲と期間を限って、既存規制の一部を留保しながら新しい仕組みを試させる制度。本番の市場環境で法的効力を伴う取引を行える点が実証実験と異なるが、恒久的な制度化は別途の手当てを要する。
  • グリーンシューオプション:需要が想定を上回った場合に、発行体が当初の基本発行額を超えて追加発行できる仕組み。今回は基本発行10億ルピーに対し40億ルピーの追加枠が設定されていた。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-09

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