NEWSシンガポール実装③本番稼働(限定領域)2026-09-02

UOB、Swift台帳でHSBCと香港ドル建てのライブ取引。9月にシンガポールドル・米ドルへ拡大

稼働から2件目のライブ取引となる。ただし最終的な資金移動は既存システムで行われ、台帳が担うのは債務の突合と相殺までである。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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シンガポールのUOBは、Swiftのブロックチェーン基盤台帳上でHSBCとの香港ドル建てクロスボーダー取引をライブで実行したと2026年8月28日までに明らかにした。8月19日のHSBCとスタンダードチャータードによる取引に続く2件目で、シンガポール本店の銀行としては初となる。UOBは9月に他行とシンガポールドル・米ドル建ての取引を予定する。台帳は支払債務を突合・相殺するが、最終決済は既存システムを経由する。三菱UFJ銀行を含む17行が参加を表明しているが、邦銀の初回取引は確認されていない。

何が起きたか

Swiftは2026年7月9日、ブロックチェーン基盤の台帳が初期利用の準備を終えたと発表した。6大陸の17行がライブ取引の実施を準備しており、参加行にはシティ、DBS、HSBC、三菱UFJ銀行、スタンダードチャータード、UBS、UOB、ウェルズ・ファーゴなどが名を連ねる。

初のライブ行間取引は8月19日、HSBCとスタンダードチャータードの間で実行された。今回のUOBとHSBCによる香港ドル建てのクロスボーダー取引はこれに続く2件目にあたる。UOBのSo Lay Hua氏(グループ・トランザクションバンキング統括)は、9月に他の提携行とシンガポールドル・米ドル建ての取引を予定し、共有台帳が国内行間決済を24時間支えられるかも検証すると述べた。

台帳の役割は、各行が自行の台帳上で発行したトークン化預金の支払債務を突合し相殺するオーケストレーション層にとどまる。Swift自身が通貨を発行するわけではない。最終決済は既存の決済システムを通じて完了する。

なぜ重要か

日本のメガバンク3行はいずれもトークン化預金の構想を持つが、行間の相互運用は着手されていない。Swift台帳は共通の預金トークンを作らず各行の台帳を接続する設計であり、共同発行の合意形成を経ずに参加できる点が、日本の銀行にとって現実的な選択肢になる。三菱UFJ銀行は17行に名を連ねるが初回取引は未実施で、同行は9月1日に公表された21金融機関によるドル建てステーブルコイン共同発行構想にも参加している。

実務者が最も注意すべきは、最終決済が既存システムに残っている点である。台帳が動かしているのは資金ではなく債務の記録であり、決済の最終性は従来の中央銀行マネー決済の側にある。プレスリリースが用いる「ライブ」という語と、業務の置き換えを伴う本番稼働との距離はここにある。

注視点

三菱UFJ銀行が初回取引をいつ、どの通貨で行うかが日本にとって最大の焦点となる。UOBが9月に予定する取引の相手行、国内行間決済への適用可能性に関する検証結果も未公表である。最終決済を台帳上で完結させる時期の見通しが示されるかどうかが、この取り組みの評価を左右する。

用語解説

  • Swift台帳:Swiftが2026年7月に初期利用可能とした共有台帳。各行が自行で発行したトークン化預金の債務を突合・相殺する調整層として働き、通貨の発行や最終決済そのものは担わない。銀行ごとに分断されたトークン化預金の基盤を、共通のトークンを作らずに接続する点が設計上の特徴である。
  • トークン化預金:銀行が自行の預金債務を分散台帳上に記録したもの。ステーブルコインが発行体への請求権であるのに対し、これは預金そのものであり、預金保険や銀行の健全性規制、中央銀行の流動性供給という既存の枠組みがそのまま適用される。銀行が決済の担い手であり続けるための手段にあたる。
  • オーケストレーション層:複数の独立したシステムの間で指示の順序と整合を調整する層。ここでは各行の台帳に手を入れずに行間の債務関係を管理する役割を担う。共通基盤に全参加者を移行させる方式に比べ導入の障壁が低い代わりに、決済の完結性を自前で持てない制約がある。
  • ネッティング(相殺):複数の支払債務を差引計算し、正味の残額だけを決済する手法。決済に必要な流動性を圧縮できるため、銀行が日中に積んでおく資金を減らせる。トークン化がコスト削減より先に効くのは、この資金効率の面である。
  • 決済の最終性(ファイナリティ):支払いが法的に取り消し不能となり、受取人が確定的に資金を得た状態。今回の仕組みでは、台帳上の記録が成立した時点ではなく、既存システムを通じた決済が完了した時点でこれが生じる。分散台帳が「稼働」しても、法的な決済がどこで起きているかは別問題である。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-02

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