NEWS欧州実装①実証実験(PoC)2026-10-09

伊UniCredit、初の「トークン化シュルトシャイン」を組成 トークン化したのは独不動産会社向け融資の取引書類

「トークン化」と呼ばれても、何がトークンになったのかは案件ごとに違う。UniCreditの初案件は、債権ではなく取引書類をブロックチェーンに載せたものだった。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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伊UniCreditは、独不動産会社OSMAB Holdingの3年物ミニ・シュルトシャイン(ドイツの私募ローン)を単独アレンジャーとして組成し、同行で初めてトークン化を使うシュルトシャインとなった。OSMABの告知によれば、トークン化の対象は取引書類の記録・保管・検証で、ローン債権そのものを流通するトークンにしたものではない。日本の金融機関にとっては、私募債やシンジケートローンの事務をどこからデジタル化するかを考える比較事例になる。金額と使ったブロックチェーンは公表されていない。

何が起きたか

融資の期間は2029年9月までの3年間で、資金はOSMAB Holdingの一般的な事業資金に充てる。OSMABにとっては、UniCreditとの2本目のシュルトシャインである。OSMABの告知は、ブロックチェーンとトークン化を、取引書類の作成、安全な保管、検証に使ったと説明している。処理の基盤は独VC Tradeが、トークン化の基盤はイタリアのBlockInvestが提供し、UniCreditは両社に戦略的に出資している。UniCreditは2026年9月8日にVC Tradeへの少数株主出資を発表し、出資比率を引き上げる選択肢も持つ。BlockInvestには2026年4月に約16%を400万ユーロ(約7.1億円)で取得したと報じられている。UniCreditは2025年12月にも、BlockInvestの基盤でイタリア初のトークン化ミニボンドを組成した。OSMABの告知は、長期的には中堅企業の資金調達の間口を広げ、債権の譲渡を容易にし、流動性の高い市場につながりうるとしているが、いずれも将来の可能性として書かれている。

なぜ重要か

シュルトシャインは、ドイツの中堅企業が銀行を通じて機関投資家から資金を借りる私募ローンで、契約書類の作成と管理、債権譲渡の手続きに手間がかかる。今回の案件は、債権のトークン化に先立ち、その事務の土台となる書類の改ざん防止と検証から着手した。日本でも、ローンや私募債のデジタル化では、セキュリティトークンとしての発行と事務の電子化が混同されやすい。何がトークンになったのかを見極める目が、投資家と発行体の双方に求められる。銀行がフィンテックに出資して基盤を自ら持つ手法も、外部基盤への依存を避けたい日本の銀行の参考になる。

注視点

第一に、次の案件で債権そのものを電子有価証券などの形でトークン化するかどうか。第二に、使ったブロックチェーンと、投資家側が記録をどう参照するか。第三に、UniCreditがVC Tradeへの出資比率を引き上げるかである。

進捗段階

① 実証実験(PoC)(実装系)

実際の融資案件ではあるが、ブロックチェーンの役割は書類の記録・検証にとどまる。権利の移転は台帳の外で行われ、台帳の記録が正本とされたかも確認できない。一回限りの案件でもあるため、判定基準に照らして低いほうの①とした。

用語解説

  • シュルトシャイン:ドイツ法に基づく私募のローン契約で、銀行がアレンジャーとなり、複数の機関投資家が貸し手として参加する。債券のような上場や目論見書が要らず、中堅企業の資金調達手段として定着している。日本の私募債やシンジケートローンに近い。

    • 英:Schuldschein(Schuldscheindarlehen) / 用例:The three-year Schuldschein runs until September 2029. (この3年物のシュルトシャインは2029年9月までである)
  • 単独アレンジャー:融資や債券の発行で、条件の設計、貸し手や投資家の取りまとめ、書類の作成を一手に担う金融機関。複数の金融機関が共同で担う場合は共同アレンジャーと呼ぶ。

    • 英:sole arranger / 用例:UniCredit acted as sole arranger for OSMAB's second Schuldschein. (UniCreditは、OSMABの2本目のシュルトシャインで単独アレンジャーを務めた)
  • 電子有価証券法(eWpG):2021年に施行されたドイツの法律で、紙の証券を発行せずに電子的な登録だけで有価証券を発行できるようにした。ブロックチェーンなどの分散台帳に記録する暗号証券も含む。債権そのものをトークン化する場合の受け皿の一つになる。

    • 英:Electronic Securities Act(eWpG) / 用例:This deal did not use the Electronic Securities Act, because only the documents were tokenized. (書類だけをトークン化したため、この案件は電子有価証券法を使っていない)
  • 改ざん防止:記録が後から書き換えられていないことを確かめられる状態に保つこと。ブロックチェーンでは記録のハッシュ値を台帳に残すことで、手元の書類が登録時のものと同じかを照合できる。契約書類の真正性を当事者間で共有する手段になる。

    • 英:tamper-proof / 用例:Blockchain keeps the loan documents tamper-proof and easy to verify. (ブロックチェーンは、ローンの書類を改ざんできない状態に保ち、検証しやすくする)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。円換算は三菱UFJ銀行の2026年10月8日公示仲値(1ユーロ=176.87円)による。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-09

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