英FCAは2026年9月14日、トークン化金の機会とリスクに関する意見募集を開始した。締切は10月23日である。卸売市場での担保利用を主な用途に据え、一部の商品を集団投資スキーム(CIS)やオルタナティブ投資ファンド(AIF)の規制の外に置く案も検討する。日本で金や商品のトークン化を検討する信託銀行・商社にとって、権利の構造で規制の線を引く先行例となる。ただし除外の条件は未確定で、寄せられる意見によって、指針の公表から専用制度の創設まで対応に幅がある。
何が起きたか
FCAは5月、イングランド銀行と共同でトークン化の意見募集を行い、その回答で金への言及が複数あった。今回はそれを受け、トークン化金に絞った意見募集を公表した。対象は、裏付けとなる現物金の所有権を与え、裏付けの証明、権利、償還の仕組みが明確な商品に限られる。
FCAは主な用途として、証券貸借、レポ、デリバティブでの担保を挙げた。金トークンと米ドルトークンを同時に交換するDVPにも触れている。今後の対応策としては、次の5案を示した。いずれも確定案ではない。
①良い慣行と悪い慣行の公表 ②既存規則の解釈の明確化 ③「適格金トークン」という区分の新設 ④的を絞った規則改正・法改正 ⑤商品全般を視野に入れた専用制度
なぜ重要か
論点の中心は、ファンド規制の境界である。FCAは次のように整理した。
- 特定の金地金を投資家に直接配分して所有させる商品は、CISやAIFに当たりにくい
- 1本の地金の持分を多くの人で共有し、まとめて管理・処分する商品は、ファンドとしての集合運用にあたる
ファンドと判定されれば、認可、販売、開示の規制がかかる。担保や健全性規制での扱いも、「金」とみなされるか「ファンド持分」とみなされるかで変わりうる。
日本で金のトークン化を設計する場合も、信託受益権とするか、集団投資スキームとして整理するかで、販売経路や担保としての使い道が変わる。英国の整理は、「小口化」と「集合運用」を分けて考える視点を与えている。
注視点
FCAは、適用除外を検討する場合でも、代わりの枠組みが必要だとしている。求める項目は、保管と分別、償還、監査、流動性の提供、破綻時の処理など12項目に及ぶ。適用除外には財務省の判断も必要で、実現の時期は見通せない。同時に公表された当局の意見募集結果では、年内にトークン化の工程表を示すとしており、金がその中にどう位置づけられるかも確認したい。
進捗段階
規制トラック:①(意見募集中、方針は未確定)。
用語解説
- トークン化金:金庫に保管された現物の金の権利を、トークンで表示・移転できるようにしたものである。週末も取引できる商品があり、価格形成への影響が指摘されている。発行体の償還能力と、保管記録との照合が信頼の土台になる。
- 集団投資スキーム(CIS):複数の投資家の資金や財産をまとめ、他者が管理して収益を分配する仕組みである。英国では定義が広く、金融商品以外の財産を対象とするものも含む。該当すると、個人への販売が大きく制約される。
- アロケーテッド金とアンアロケーテッド金:アロケーテッド金は、特定の地金が顧客の所有として記録される形態で、所有の確実性が高い反面、動かすのに手間がかかる。アンアロケーテッド金は、口座上の請求権として保有する形態で、移転は容易だが、口座提供者の信用リスクを負う。トークン化は、この二つの長所を両立させる手段として期待されている。
- DVP(証券と資金の同時受け渡し):資産の引き渡しと代金の支払いを同時に行い、片方だけが完了するリスクをなくす決済方式である。現在のロンドン店頭金市場では、金と資金が別々の仕組みで決済されている。
出典
- Financial Conduct Authority「Tokenised gold: Opportunities and risks for UK wholesale markets(Call for Input)」(2026年9月): https://www.fca.org.uk/publication/call-for-input/tokenised-gold-opportunities-risks-uk-wholesale-markets.pdf
- Financial Conduct Authority「Call for Input: Tokenised gold – opportunities and risk for UK wholesale markets」(2026年9月14日): https://www.fca.org.uk/publications/calls-input/call-input-tokenised-gold-opportunities-and-risk-uk-wholesale-markets
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。