NEWS米国制度①案の公表・意見募集2026-10-05

米財務省、ルーブル建てステーブルコインA7A5を使う送金網「A7ネットワーク」を国際犯罪組織に指定──FinCENは米金融機関に送金禁止を提案

ステーブルコインの制裁は、交換業者や個別のウォレットから、発行と送金の仕組み全体へと対象が広がった。問われているのは、トークンの名前だけでは取引相手のリスクを判断できないという現実である。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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米財務省は2026年10月1日、ロシアと関係する制裁回避の送金網「A7ネットワーク」を重大な国際犯罪組織に指定した。同日、FinCENは注意喚起を出し、A7の手足となるペーパー会社群との送金を米金融機関に禁じる規則案を公表した。規則案は暗号資産での送金も対象とし、ルーブル建てのステーブルコインA7A5を名指ししている。日本の銀行や電子決済手段等取引業者にとっては、ステーブルコインの取引相手をどこまで遡って審査するかの具体例となる。送金禁止は提案の段階で、意見募集は11月4日に締め切られる。

何が起きたか

FinCENの注意喚起によると、A7ネットワークは、ロシアとイラン、イランの革命防衛隊の国際送金を、関与を隠して仲介する仕組みである。手足となる「サブエージェント」は数百のペーパー会社で、少なくとも83か国の約435の金融機関に口座を持つ。偽の請求書を使う貿易経由の資金洗浄や、デジタル資産との交換も使われたという。A7A5はキルギスで登録されたOld Vectorが発行し、ロシアの国営銀行プロムスビャズバンクに預けたルーブルを裏付けとする。FinCENは、2025年2月から2026年6月に180以上の主体が少なくとも1,791億ドル(約28.3兆円)のA7A5の取引を行ったとする。10月5日に官報に載った規則案は、サブエージェントが関わる送金と、その口座や暗号資産のアドレスとの送金を禁じる。対象は銀行、証券会社、資金移動業者などの金融機関で、サブエージェントは2025年1月から2026年6月に170億ドル(約2.7兆円)超のドル建て取引を処理したとされる。円換算は三菱UFJ銀行の10月5日公示仲値(1ドル=157.79円)による。

なぜ重要か

これまでの暗号資産を巡る制裁は、特定の交換業者やアドレスを対象とするものが中心だった。今回は、ステーブルコインの発行体と、法定通貨の口座を持つペーパー会社群をまとめて一つの網とみなし、銀行送金と暗号資産の送金の両方を止めにいく。日本の銀行にとっては、コルレス口座を通じた送金の相手先が、こうした会社群に含まれていないかの確認が改めて求められる。電子決済手段等取引業者にとっては、扱うコインが正当でも、相手方のアドレスが制裁対象の網とつながっていないかを見る体制が問われる。

注視点

第一に、規則案が最終規則になる時期と、FinCENがサブエージェントの名簿をどう共有するか。第二に、日本の当局が同様の指定に動くか。第三に、A7A5と交換されてきた他のステーブルコインの発行体が、アドレスの凍結に踏み込むかである。

進捗段階

② 施行(制裁指定)/① 制度案(送金禁止)(規制系)

OFACの指定は即日効力を持つが、FinCENの送金禁止は規則案の段階である。最終規則が出るまで、米国の金融機関に法的な禁止義務は生じない。

用語解説

  • サブエージェント:A7ネットワークの手足として、現地企業を装って口座を開き送金を受け持つペーパー会社。実際にはモスクワから操作されていたとされる。名義が現地の会社であるため、口座を開いた銀行が実態に気づきにくい。

    • 英:sub-agent / 用例:The proposed rule would bar U.S. institutions from sending funds to any A7 sub-agent. (規則案は、米国の金融機関がA7のサブエージェントへ送金することを禁じる)
  • 重大な国際犯罪組織の指定:OFACが国境を越える犯罪組織を指定し、米国内の資産を凍結し、米国人との取引を禁じる措置。テロ組織の指定とは別の枠組みで、犯罪による資金の流れを断つことを目的とする。

    • 英:significant transnational criminal organization (TCO) / 用例:Treasury designated the A7 Network as a significant transnational criminal organization. (財務省はA7ネットワークを重大な国際犯罪組織に指定した)
  • 特別措置:FinCENが、資金洗浄の重大な懸念がある相手との取引を、米国の金融機関に制限・禁止させる措置。今回は、ロシアの資金洗浄に対抗する法律の規定を根拠とする。意見募集を経て最終規則となる。

    • 英:special measure / 用例:FinCEN proposed a special measure prohibiting fund transfers involving the network. (FinCENは、その網が関わる送金を禁じる特別措置を提案した)
  • 貿易を使った資金洗浄:輸出入の請求書の金額や品目を偽り、貿易の代金に見せかけて資金を移す手口。書類の真偽を一件ごとに見抜くのは難しい。今回は、AIで加工した請求書の使用も注意点に挙げられた。

    • 英:trade-based money laundering (TBML) / 用例:The network relied on trade-based money laundering with falsified invoices. (その網は、偽の請求書を使った貿易経由の資金洗浄に頼っていた)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-05

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