米国の地域銀行で構成する独立コミュニティ銀行協会(ICBA)は2026年10月2日、OCCをワシントンDC連邦地裁に提訴した。OCCが3月2日に定めた国法銀行の免許に関する最終規則、2021年の解釈書簡1176号、暗号資産企業Protegoへの条件付き免許の3つが、国法銀行法に反するとして取り消しを求めている。OCCの免許を米国拠点の選択肢とみてきた日本の金融機関やその子会社にとって、前提の安定性が問われる。判決が出る時期は見通せず、それまで既存の免許の扱いは変わらない。
何が起きたか
訴状によると、ICBAが問題にするのはOCCが2026年3月2日に定めた最終規則「National Bank Chartering」である。この規則は、国法信託銀行が営める業務を、信託・受託者としての業務に限らず「信託会社の業務とそれに関連する業務」と定義し直した。ICBAは、これにより預金を受け入れず、受託者としての業務も中心としない機関が銀行の免許を得られるようになったと主張する。あわせて、こうした免許の根拠とされた2021年1月11日の解釈書簡1176号と、2026年2月にProtegoへ出された条件付き免許も対象とした。Protegoはカストディ、取引、貸借、発行体向けのサービスを主に受託者以外の立場で行う計画とされる。請求は行政手続法に基づく3件で、規則と書簡の取り消しと差し止め、Protegoへの承認が違法であることの確認を求めている。報道によれば、OCCは2025年12月以降に21の信託銀行を承認または条件付きで承認し、そのうち少なくとも13社が暗号資産関連で、野村ホールディングス傘下のLaser Digitalも含まれる。OCCは係争中の案件にはコメントしないとしている。
なぜ重要か
米国でステーブルコインの発行やカストディを手がける事業者にとって、国法信託銀行の免許は州ごとの免許を集めずに全米で事業を行える手段となってきた。日本の金融グループにとっても、米国の子会社や提携先がこの免許を持つかどうかは、取引先を評価する際の材料になっている。訴えが認められれば、規則に基づく免許の効力が揺らぐ。認められなくても、審理が続く間は「免許の根拠が争われている」状態が残る。
注視点
第一に、OCCの答弁で、規則の法的根拠をどう説明するか。第二に、ICBAが判決前に効力の停止を求めるかどうか。第三に、Protego以外の承認済みの企業に審理の影響が及ぶかである。
進捗段階
① 制度案・係争(規制系)
最終規則はすでに施行され、免許も出ているが、その根拠が裁判で争われ始めた段階である。判決は出ておらず、現行の免許の効力に変化はない。
用語解説
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国法信託銀行:OCCが免許を与える国法銀行のうち、業務を信託会社の業務に限るもの。州の免許ではなく連邦の免許で全米に事業を広げられる。従来は受託者としての資産管理を担う銀行を想定していた。
- 英:national trust bank / 用例:A national trust bank charter lets a custody firm operate nationwide under one federal license. (国法信託銀行の免許があれば、カストディ企業は一つの連邦免許で全米に事業を展開できる)
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解釈書簡:OCCが法令の解釈について示す文書。規則と違って意見募集の手続きを経ずに出せるため、素早く方針を示せる一方、法的な根拠の強さが争われやすい。ICBAは書簡1176号がこの手続きを欠くと主張している。
- 英:interpretive letter / 用例:The lawsuit argues that the interpretive letter was issued without notice and comment. (訴えは、その解釈書簡が意見募集の手続きなしに出されたと主張している)
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行政手続法:米国の連邦機関が規則を作る際の手続きを定める法律。裁判所は、機関の行為が法律の権限を超えている場合や、恣意的である場合に、その行為を取り消すことができる。規制当局の判断を業界が争う際の主な根拠となる。
- 英:Administrative Procedure Act (APA) / 用例:ICBA brought three claims under the Administrative Procedure Act against the OCC. (ICBAはOCCに対し、行政手続法に基づく3件の請求を起こした)
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条件付き免許:開業前に満たすべき条件を付けて出される承認。資本の積み増しや体制の整備などを終えて初めて正式に営業できる。条件を満たさないまま期限が過ぎると失効する。
- 英:conditional approval / 用例:Protego received conditional approval in February 2026 after an earlier approval had expired. (Protegoは以前の承認が失効した後、2026年2月に条件付きの承認を得た)
出典
- Independent Community Bankers of America「ICBA Sues OCC Over National Trust Bank Charters for Crypto Firms」(2026年10月2日): https://www.icba.org/w/occ-release-oct-2026
- Independent Community Bankers of America「ICBA v. OCC Complaint」(2026年10月2日): https://www.icba.org/documents/d/asset-library-45247/icba-v-occ-as-filed-complaint-c
- CoinDesk「Bank group sues U.S. regulator over granting crypto trust charters」(2026年10月2日): https://www.coindesk.com/policy/2026/10/02/bank-group-sues-u-s-regulator-over-granting-crypto-trust-charters
- Yahoo Finance「Community Bankers Sue OCC Over Crypto Firms' National Trust Charters」(2026年10月2日): https://finance.yahoo.com/markets/crypto/articles/community-bankers-sue-occ-over-212717614.html
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