集計サイトRWA.xyzによると、トークン化株式の月間移転高は直近30日で415%増の295億ドル(1ドル=160円換算で約4兆7,200億円)に達した。月間アクティブアドレスは209%増の約130万、保有者数は167%増の236万。一方、オンチェーンの流通残高は同じ30日で1.45%増の25.4億ドル(約4,060億円)にとどまる。移転高は残高の約11.6倍だが、資産が11.6回転したことを意味しない。8月24日のコインベースのBase稼働が活動量を押し上げたとみられる。
何が起きたか
コインテレグラフが8月29日に報じたRWA.xyzの集計では、月間移転高が295億ドル、オンチェーンの流通残高が25.4億ドルとなった。残高は1年前の3.44億ドルから約637%の増加である。プラットフォーム別の残高はOndoが8億4,280万ドル、KrakenのxStocksが6億930万ドル、BinanceのbStocksが5億9,990万ドルで、上位3社で約81%を占める。個別銘柄ではSecuritize株が約1億6,300万ドルで最大だった。移転高はオンチェーンのトークン移転の金額であり、売買のほか、ウォレット間の移動、プラットフォームの決済処理、カストディの組み替え、ブリッジ取引を含む。どの移転が実質的な所有者の変更を伴ったかは、この数値からは分離できない。
なぜ重要か
この種の数字は、社内資料で「市場規模」として引用されやすい。だが移転高と残高は別のものを測っている。前者は期間中の活動量、後者はある時点の資産の大きさである。両者の差が開いたということは、新規資金が大量に流入したというより、既存のトークンがより頻繁に動いたことを示す可能性が高い。金融機関が事業性を判断するなら、見るべきは残高、保有者数、そして残高あたりで得られる手数料である。移転高を根拠に市場の拡大を語る資料は、この区別ができていない。日本でトークン化株式の制度が議論される局面でも、同じ取り違えは起きやすい。
注視点
アドレス数と保有者数は投資家の人数ではない。一人が複数のウォレットを持つため、実際の参加者はこれより少ない。残高が上位3社に約81%集中している点も、市場の厚みを判断するうえで無視できない。今後は、コインベース分の残高がどこまで積み上がるか、移転高の伸びに残高が追いつくかどうかが、活動の質を見分ける手がかりになる。集計の定義は運営者の裁量で変わりうるため、時系列で比較する際は基準日と定義の変更を確認する必要がある。
進捗段階
実装トラック②(本番稼働)。トークン化株式の主要商品は実際に発行・流通しているが、法的な権利の正本をチェーン上に置く設計は主流ではなく、③以上には至っていない。
用語解説
- 移転高(transfer volume):一定期間にチェーン上でトークンが移動した金額の合計。取引所の売買代金とは違い、同一保有者内のウォレット移動や、決済処理に伴う内部移動も含まれる。市場規模の指標として使うと過大評価につながる。
- 流通残高(distributed value):ある時点で、発行プラットフォームの外に出て自由に移転できる状態にあるトークンの総額。発行済みでもプラットフォーム内に閉じているものは含まれないため、発行総額とは一致しない。
- アクティブアドレス:期間中に少なくとも一度、取引に関与したブロックチェーン上のアドレスの数。一人が複数のアドレスを使うため、投資家数の代理指標としては上振れしやすい。逆に取引所の預り分は一つのアドレスに集約されるため、下振れする場合もある。
- 回転率:一定期間の取引金額を残高で割った値。伝統的な市場では流動性の指標として使われるが、オンチェーンでは所有権移転を伴わない移動が混ざるため、同じ意味では読めない。
- RWA.xyz:トークン化された実物資産のオンチェーンデータを集計する外部サイト。発行体の開示ではなくブロックチェーン上の記録を集計しているため、定義や対象範囲は運営者が決めており、時期をまたいだ比較には注意がいる。
出典
- Cointelegraph「Tokenized stock transfer volume jumps 415% in 30 days to $29.5B」(2026年8月29日、RWA.xyzの集計に基づく): https://cointelegraph.com/markets/tokenized-stock-transfer-volume-jumps-416-in-30-days-to-295b
本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。