NEWS東南アジア制度⓪検討・研究2026-08-31

SBI、インドネシアAjaibの株式20%を取得 円建てステーブルコインの用途は現地法に縛られる

資本の移動はすでに完了した。だが円建てステーブルコインをインドネシアで何に使えるのかは、現地の法律がまだ決めきっていない。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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SBIホールディングスは8月28日、子会社を通じてインドネシアのAjaibグループの株式約20%を取得し、持分法適用関連会社としたと発表した。Ajaibは株式、債券、投信、ETFに加え、暗号資産、ステーブルコイン、商品、外国為替を扱う総合投資基盤で、法人向けにOTC型のステーブルコイン決済も提供する。SBIは出資額を開示していないが、日本経済新聞は2億7,000万ドルと報じた。協業の統合内容は発表になく、円建てステーブルコインJPYSCの用途はインドネシアの法制度に左右される。

何が起きたか

SBIの発表によれば、取得したのは約20%の少数持分で、Ajaibは持分法適用関連会社となった。出資額の記載はない。Ajaib側は同日、2億7,000万ドルの調達を公表し、2019年以降の累計調達額が5億ドルを超えたとしている。1ドル=160円換算で約432億円にあたる(本稿による計算)。出資額と持分比率から逆算した企業価値は約13億5,000万ドルとなるが、両社とも評価額を公表していない。SBIはこの出資を「SBI APACデジタル経済圏構想」に位置づけ、東南アジアでデジタル資産の取引所網を築く方針を示した。同グループは国内のSBI VCトレード、シンガポールのCoinhako、英国B2C2に加え、信託型ステーブルコインJPYSCを抱える。ただし発表には、商品や技術をどう統合するかの記述がない。

なぜ重要か

インドネシアでは通貨法によりルピアが唯一の法定通貨で、暗号資産を支払手段に用いることは認められていない。2026年6月17日施行の改正P2SK法(2026年法律第4号)は「暗号資産以外のデジタル金融資産」という法定区分を新設したが、ステーブルコインは取引所の推薦とOJKの承認を経て「取引の手段」には使える一方、「支払手段」には使えないと明記した。JPYSCの流通促進が当面意味しうるのは、国内の決済ではなく取引・保有の側である。日本の金融機関が東南アジアで円建てステーブルコインを広げる際、この線引きを取り違えると事業計画が成り立たない。

注視点

協業の中身は未発表で、何がいつ動くかは示されていない。改正法の下位規則はまだ出ておらず、ステーブルコインの商品分類とOJKの取り扱いは実務レベルで確定していない。Ajaibの利用者数も、SBIの発表が「数百万人」とするのに対し報道では700万人、2,000万人超と幅がある。持分法適用にとどまる以上、SBIが商品設計にどこまで関与できるかも読めない。7月に連結子会社化したCoinhakoとの役割分担も未説明である。

進捗段階

実装トラック①(資本関係の成立)。株式取得は完了しているが、協業として稼働している商品・サービスはなく、統合の内容も日程も公表されていない。

用語解説

  • 持分法適用関連会社:議決権のおおむね20%以上を保有し、財務・営業の方針に重要な影響を与えられる会社。連結子会社と違い、資産・負債を取り込まず、純利益の持分相当額だけを取り込む。裏を返せば、経営の意思決定を単独では動かせない立場でもある。
  • JPYSC:SBIグループがシンガポールのStartale Groupと共同で立ち上げた信託型の円建てステーブルコイン。SBI新生信託銀行が受託者となる。信託型は資金移動業型と異なり1回あたりの送金上限がなく、法人間の資金決済に向くとされる。
  • OTCステーブルコイン決済:取引所を介さず、業者が法人顧客と相対で価格と数量を決めてステーブルコインを受け渡す形態。大口の資金移動で価格の滑りを避けたい企業や機関投資家が使う。取引所の板が薄い市場では、実務上こちらが主力になる。
  • 改正P2SK法(2026年法律第4号):インドネシアの金融セクター包括法の改正で、2026年6月17日施行。暗号資産事業者を法定の金融機関類型に組み入れ、ステーブルコインやトークン化資産を含む「暗号資産以外のデジタル金融資産」の区分を新設した。下位規則の整備はこれからで、商品分類の細目は未確定である。
  • 支払手段と取引手段の区別:インドネシアの制度では、ステーブルコインは所定の承認を経れば取引の手段として使えるが、商品やサービスの対価を支払う手段としては使えない。同じ「決済」という日本語でも、どちらを指すかで可否が正反対になる。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-31

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