NEWSシンガポール実装③本番稼働(限定領域)2026-08-29

UOB・HSBC、Swiftの共有台帳で香港ドル建てトークン化預金の実取引──9月に国内銀行間決済へ

越境決済のために作られた台帳を、シンガポールの銀行は国内の銀行間決済にも使おうとしている。用途の広がりが次の論点になる。

BY OFM Research · 5 MIN READ

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シンガポールのUOBとHSBCは2026年8月28日、Swiftのブロックチェーン基盤の台帳上で、トークン化預金を用いた香港ドル建ての越境取引を実取引として完了したと発表した。シンガポールに本店を置く銀行としては初の事例で、8月19日のHSBC・スタンダードチャータード間の第1号に続く。UOBは9月に他の提携銀行とシンガポールドル建て・米ドル建ての取引を予定し、越境だけでなく国内の銀行間決済も対象に含めるとしている。台帳は債務の照合とネッティングを担い、最終決済は既存システムを経由する。

何が起きたか

Swiftは2026年7月、台帳が初期利用の段階に入ったと公表し、6大陸17行が実取引の試行を準備していると説明していた。参加行にはシティ、DBS、UBS、UOBのほか、三菱UFJ銀行も名を連ねている。第1号は8月19日のHSBCとスタンダードチャータードによる取引で、今回のUOBとHSBCが2件目にあたる。取引は二段階である。まず顧客向けの支払いが各行のトークン化預金基盤上で記録され、次に銀行間の決済が行われる。Swiftの台帳は各行の基盤をつなぐ調整層として機能し、債務の照合とネッティングを行うが、資金の最終的な移動は既存の決済システムを通る。UOBのグループ・トランザクションバンキング統括責任者は、9月の国内取引が24時間稼働の銀行間決済に関する知見をもたらすと述べている。

なぜ重要か

注目すべきは、越境向けに位置づけられていた基盤を国内の銀行間決済へ転用する構想が出てきた点である。シンガポールにはFASTという24時間稼働の国内即時決済がすでにあり、それでもなお共有台帳を使う理由があるとすれば、多通貨建ての企業間決済や、既存システムの稼働時間外を埋める用途が考えられる。日本では全銀システムの次期システムの構築が進んでおり、それまでの空白をどう埋めるかは邦銀に共通する課題である。三菱UFJ銀行が参加行に含まれている以上、この台帳が円建てでどう使われるかは実務的な関心事になる。トークン化預金は発行行への預金債権のままであり、信用リスクの所在が変わらない点も設計上の利点である。

注視点

9月のシンガポールドル建て・米ドル建て取引が予定どおり行われるか、参加行がどこまで広がるかが次の節目になる。最終決済が既存システムに依存している限り、24時間の資金移動は指図と債務認識の層にとどまる。決済の確定を台帳上で完結させるには中央銀行マネーの扱いが必要であり、各国の当局判断に委ねられる。円建て取引の有無と、参加する邦銀の範囲も見るべき点である。

進捗段階

実装トラック③(限定的な本番稼働)。実取引だが通貨と相手行が限られ、最終決済は既存システムに依存する。既存プロセスの置き換えには至っていない。

用語解説

  • トークン化預金:銀行が受け入れた預金を、ブロックチェーン上で移転可能な形で表章したもの。法的性質は預金債権のままであり、預金保険や銀行監督の枠組みが従来どおり及ぶ。ステーブルコインと違い、新たな発行体の信用リスクが生じない。
  • オーケストレーション層:複数の独立した基盤の間で、指図の突き合わせと処理順序の調整を担う中間層。Swiftの台帳は各行のトークン化預金基盤を置き換えるのではなく、それらをつなぐ位置に置かれている。
  • ネッティング:複数の債権債務を相殺し、差額だけを決済する方法。実際に動かす資金量が減るため、銀行が決済のために日中に用意しておく流動性を圧縮できる。
  • 最終決済(ファイナリティ):支払いが法的に取り消せない状態になること。今回の枠組みでは台帳上で債務が認識された後、既存の決済システムを通ってはじめてこの状態に到達する。
  • 全銀システム:日本の内国為替決済を担う共同システム。24時間365日の即時振込に対応済みで、現在は次期システムの構築が進められている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-08-29

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