NEWS欧州実装④本番稼働(全面)2026-10-08

仏Spiko、9,000万ドルを調達 トークン化キャッシュファンドの運用残高は27億ドルに

同社の集計では、トークン化MMFの発行で創業3年の欧州の新興企業がブラックロックを上回った。伸びを支えたのは技術より、大手金融グループが裏側を引き受ける商品の組み立て方である。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

トークン化したキャッシュファンドを発行するSpikoは10月6日、米ベンチャーキャピタルのNEAが主導するシリーズBで9,000万ドル(約142億円)を調達したと発表した。運用残高は27億ドル(約4,265億円)で、過去12か月で5倍超に増えた。報道によれば主力はアムンディが運用するスワップ型ファンドで、欧州の大手金融グループが運用・保管・相手方を分担する。この分担は、国内でトークン化MMFを組成する際の参照例になる。

何が起きたか

シリーズBにはNEAのほか、インデックス・ベンチャーズ、仏公的投資銀行のBpifrance、ウィンターミュート・ベンチャーズなどが参加した。元ドイツ連邦銀行総裁のアクセル・ヴェーバー氏も個人で出資している。累計調達額は1億2,000万ドルになった。Spikoは自社で規制下のキャッシュファンドを設計し、ユーロ、ドル、ポンド、スイスフランの4通貨で、複数のパブリックブロックチェーン上に発行している。利用者は1万超の企業と個人で、25を超える法域にまたがる。資金は、新しいファンドの立ち上げ、新市場への進出、ドイツやイタリアなど欧州各国での体制づくりに充てる。同社は、即時の解約に加え、利回りを時間単位で積み上げる仕組みを近く導入するとしている。企業が「給与支払い分は口座に残し、余剰は即時解約できるファンドへ、四半期使わない分は期間物へ」という規則を一度設定すれば、あとは自動で資金を振り分けられる。報道によれば、運用はアムンディ、カストディと事務管理はクレディ・アグリコール傘下のCACEIS、スワップの相手方はBNPパリバが担っている。

なぜ重要か

国内でもトークン化MMFの検討は進んでいるが、運用会社、受託銀行、販売会社、ブロックチェーン基盤の役割分担はまだ固まっていない。Spikoは自らは商品設計と販売の窓口に徹し、信用力が問われる部分を大手に任せる形で、短期間に残高を積み上げた。日本の運用会社や信託銀行にとっては、自前で全工程を抱えるか、新興の販売基盤に裏方として入るかという選択の材料になる。法人の資金管理を自動化する使い方は、銀行の普通預金や決済性預金と競合する。法人預金を持つ銀行にとって、預金の外に流れる資金の受け皿をどう用意するかという問いでもある。

注視点

運用残高の大半がスワップ型ファンドに集中しているため、相手方の信用と商品の透明性が今後の評価を左右する。米国や英国での販売の広げ方、ステーブルコイン発行体の準備資産の運用先として採用されるかも焦点になる。欧州の利回り付きステーブルコインへの規制強化が、こうしたファンドへの需要を押し上げるのか、逆に制約するのかも見ておきたい。

進捗段階

実装トラック ②(規制下のファンドとして商用運用中。ブロックチェーン上の記録の法的な位置づけは本稿では確認していない)

用語解説

  • トークン化キャッシュファンド:MMFなど短期金融資産で運用するファンドの受益権を、ブロックチェーン上のトークンとして発行したもの。ステーブルコインと同じ基盤で動くため、24時間の移転や、スマートコントラクトによる自動の振り替えができる。現金同等の資産に利回りを付けたまま、決済に近い使い方をする狙いがある。

    • 英:tokenized cash fund / 用例:A tokenized cash fund lets companies earn yield while keeping money ready for payments. (トークン化キャッシュファンドなら、企業は支払いに備えた資金にも利回りを付けられる)
  • スワップ型ファンド:資産を直接持つ代わりに、銀行とのスワップ契約で短期金利などの収益を受け取る仕組みのファンド。運用の手間を抑えて利回りを確保できる一方、スワップの相手方の信用に依存する。Spikoの主力ファンドではBNPパリバがこの相手方を担うとされる。

    • 英:swap-based fund / 用例:A swap-based fund depends on the credit strength of its bank counterparty. (スワップ型ファンドの安全性は、相手方となる銀行の信用力に左右される)
  • プログラマブル・キャッシュ:あらかじめ決めた規則に従って、自動で動かせる形にした現金や現金同等物。条件を満たすと送金や振り替えが実行されるため、資金管理の手作業を減らせる。トークン化によって、銀行システムの営業時間に縛られずに実行できる点が特徴である。

    • 英:programmable cash / 用例:With programmable cash, a treasury team sets sweep rules once and the system runs them. (プログラマブル・キャッシュなら、財務部門は振り替えの規則を一度決めれば済む)

出典

※円換算は筆者計算。1ドル=157.96円(三菱UFJ銀行、2026年10月6日公示仲値)。


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-08

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