NEWS米国制度①案の公表・意見募集2026-10-01

米SECのピアース委員が10月2日に退任──暗号資産の規則案を審議中のまま、委員は2人体制に

米国の暗号資産の規制を、法律によらず規則と解釈で進めてきた中心人物がSECを去る。残る委員は2人で、進行中の規則づくりを誰がどう引き継ぐかが問われる。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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米SECのヘスター・ピアース委員は2026年9月25日、10月2日付で退任すると明らかにした。同委員はSECの暗号資産作業部会を率い、トークンの分類の指針や、トークン化証券のイノベーション免除の議論を主導してきた。退任後、SECの委員はアトキンス委員長とウエダ委員の2人となる。日本の金融機関にとっては、米国の暗号資産の制度がどれだけ速く、どれだけ長く続く形で整うかが、国内の制度設計や事業計画の前提に関わる。10月20日に意見募集が締め切られる規則案の扱いと、後任の指名の時期は未定である。

何が起きたか

報道によれば、ピアース委員はSNSのXで退任を公表し、最後の出勤日を10月2日とした。退任後はリージェント大学のロースクールで准教授を務める。同委員は2018年に就任し、2025年からは暗号資産作業部会を率いてきた。この間、SECの職員はマイニングやステーキング、トークンの分類について見解を示し、SECは2026年3月に暗号資産の分類に関する解釈を、8月に規則案「Regulation Crypto Assets」を公表した。トークン化証券を扱う取引の場への免除も、同委員が推進してきた。退任の書簡では、人々が自分と家族にとって最善のものを選ぶ自由を、取引への信頼を支える適切な規制の範囲で最大限にすることが、規制当局の役割だと述べた。SECの委員の定員は5人だが、民主党側の席は空いたままで、政権は後任を指名していない。報道によれば、SECの規則では、委員が欠けている間は在任する委員の数で定足数を満たせるため、2人でも決定はできるとされる。

なぜ重要か

米国では、上院で市場構造法案が否決された後、SECとCFTCが既存の権限の範囲で規則と解釈を整える動きを強めている。その中心にいた委員の退任は、規則案の中身より、制度づくりの持続性に影響するとみられる。2人の委員で規則を決めることは手続き上は可能でも、党派の均衡を欠いた委員会での決定は、政権交代の後に見直される余地を残す。日本の証券会社や運用会社が米国でトークン化商品の組成や販売を計画する場合、足元の規則と免除がどれだけ続くかを見込んで、事業の時間軸を置く必要がある。国内でも暗号資産の規制を金融商品取引法に移す改正が成立しており、米国の分類の枠組みは引き続き参照される。ただし、その枠組み自体が変わりうることも織り込んでおく必要がある。

注視点

第一に、10月20日に意見募集が締め切られる規則案が、2人の委員の下で採択されるか。第二に、空席の委員の指名の時期。第三に、暗号資産作業部会を誰が率いるかである。

進捗段階

① 案の公表・意見募集(制度系)

記事の主題に関わる規則案「Regulation Crypto Assets」は、意見募集の途中にある。委員の退任は段階そのものを動かさないが、採択の時期と、決定の持続性に影響しうる。②に進むには、委員会による規則の採択が必要になる。

用語解説

  • 定足数:会議で決定を行うために出席が必要な最少の人数。SECでは通常3人だが、欠員があり在任する委員が3人に満たない場合は、在任する全員で満たせるとされる。人数が少ないほど、一人の判断が結論を大きく左右する。

    • 英:quorum / 用例:With only two commissioners left, the SEC can still act under its quorum rule. (委員が2人になっても、SECは定足数の規則に基づいて決定を行える)
  • 暗号資産作業部会:SECが2025年に設けた、暗号資産の規制の枠組みを検討する組織。業界との対話や、職員の見解の公表を通じて、規則づくりの土台を整えてきた。ピアース委員がその長を務めた。

    • 英:Crypto Task Force / 用例:Peirce led the SEC's Crypto Task Force from 2025. (ピアース委員は2025年からSECの暗号資産作業部会を率いた)
  • イノベーション免除:新しい技術を使う事業者に、一定の条件の下で既存の規制の一部を適用しない措置。規則を改める前に、実際の運用を見ながら制度を整える狙いがある。免除は当局の判断で付与されるため、方針が変われば見直される可能性がある。

    • 英:innovation exemption / 用例:The innovation exemption lets venues trade tokenized stocks under tailored conditions. (イノベーション免除によって、取引の場は個別の条件の下でトークン化株式を扱える)
  • 党派の均衡:SECのような独立規制委員会で、同じ政党に属する委員の数を過半数までに制限する仕組み。政権が代わっても、規制の方向が急に変わらないようにする狙いがある。委員が一方の党だけになると、この均衡は事実上失われる。

    • 英:partisan balance / 用例:Rules adopted without partisan balance may be revisited by a future commission. (党派の均衡を欠いて採択された規則は、将来の委員会で見直される可能性がある)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-01

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