NEWS日本実装②限定実装(パイロット)2026-10-01

Japan Smart Chainが「MIZUHIKI」に改称しメインネットを公開──運営会社はステーブルコインの発行基盤と決済代行に事業を転換

国内発のブロックチェーンが、汎用の基盤から、ステーブルコインの決済に特化した基盤へと事業を絞った。規制対応を基盤に組み込む設計は、許可型か公開型かという二択に別の答えを示そうとしている。

BY OFM Research · 5 MIN READ

SHARELB!

AltX Researchは2026年9月28日、自社のチェーン「Japan Smart Chain」を「MIZUHIKI: The Japan Chain」に改称し、ステーブルコインの発行・決済の基盤と、決済代行(PSP)の事業に転換すると発表した。メインネットは公開済みで、USDC、USDT、JPYCなどを許可制で扱う。決済代行では、利用者がステーブルコインで支払い、加盟店は月次で日本円を受け取る。国内の金融機関には、チェーン選定の比較材料になる。決済代行を担う主体の登録状況は明らかにされていない。

何が起きたか

発表によれば、MIZUHIKIは2つの柱からなる。1つ目は、ステーブルコインを発行し決済するための独自のブロックチェーン(L1)である。取引は1秒未満で確定し、ネットワークの手数料をステーブルコインで払える。規制対応の機能は基盤の層に実装し、取引手数料の一部を発行体に還元する。扱うステーブルコインは、USDC、USDT、JPYCなどを対象とする許可制(ホワイトリスト制)である。2つ目は決済代行で、100万円以上の高額の取引と越境の購買に特化する。利用者がステーブルコインで支払い、加盟店は月次で日本円を受け取るため、加盟店がコインを持つ必要はない。あたらしい経済によれば、検証を担うバリデータは国内に置かれ、国内の事業者が運営する。同紙は、構想に賛同するパートナーとして、みずほ銀行、みんなの銀行、KDDI、博報堂などを挙げている。発表は、マイナンバーカードだけで受け取れる給付金の基盤について、複数の自治体で実証と補助金の交付が決まったとし、年度内の実証の完了を目指すとしている。

なぜ重要か

国内の金融機関がステーブルコインを発行したり受け入れたりする際には、どのチェーンを使うかが大きな論点になる。公開型のチェーンは利用者が多い一方、誰が取引の検証を担うかを選べず、本人確認や移転の制限はコインの側で作り込む必要がある。許可型のチェーンは管理しやすいが、他のサービスとつながりにくい。MIZUHIKIは、検証者を国内の事業者に限り、規制対応を基盤に組み込むことで、その中間を狙う設計とみられる。ただし、国内でステーブルコインでの支払いを受け付け、加盟店に円を渡す事業には、電子決済手段等取引業などの登録が関わりうる。どの登録を持つ事業者が担うのかは、利用を検討する金融機関にとって確認すべき点である。

注視点

第一に、決済代行の事業を担う主体と、その登録の状況。第二に、パートナーの金融機関が、実際の発行や決済でこの基盤を使うか。第三に、自治体の給付金の実証の結果である。

進捗段階

① 実証実験(PoC)(実装系)

メインネットは公開されたが、決済代行での実際の取引や、金融機関による利用は確認できない。自治体の給付金も実証の段階にある。②に進むには、加盟店と利用者の間で、実際の資金を伴う決済が繰り返し行われる必要がある。

用語解説

  • 決済代行(PSP):加盟店に代わって、さまざまな支払い手段での代金の受け取りと入金をまとめて引き受ける事業者。加盟店は個別の決済手段ごとに契約する手間を省ける。ステーブルコインでは、コインを受け取って円に換える機能を担う。

    • 英:payment service provider (PSP) / 用例:The PSP lets merchants receive yen while customers pay in stablecoins. (この決済代行は、利用者がステーブルコインで払い、加盟店が円で受け取れるようにする)
  • ホワイトリスト制:あらかじめ認めたものだけを扱う方式。ブロックチェーンでは、扱うトークンや取引できる利用者を限定するために使われる。不正な資産の流入を防げる一方、対象を広げるたびに審査が必要になる。

    • 英:allowlist / 用例:Only stablecoins on the allowlist, such as USDC and JPYC, can be used on the chain. (このチェーンで使えるのは、USDCやJPYCなど許可リストに載ったステーブルコインだけである)
  • バリデータ:ブロックチェーン上の取引を検証し、台帳に記録する役割を担う参加者。誰がバリデータになるかで、チェーンの信頼性と、障害や不正が起きたときの責任の所在が決まる。国内の事業者に限れば、日本の法令に基づく対応を求めやすくなる。

    • 英:validator / 用例:All validators on the network are operated by companies based in Japan. (このネットワークのバリデータは、すべて国内の事業者が運営している)
  • 確定的ファイナリティ:いったん記録された取引が、後から覆らないことが確定する性質。確率的にしか確定しないチェーンでは、一定の時間を待つ必要がある。金融の決済では、いつ支払いが完了したかを明確にするために重視される。

    • 英:deterministic finality / 用例:Deterministic finality in under a second suits retail payments. (1秒未満で確定的ファイナリティが得られることは、店頭での決済に適している)

出典

  • AltX Research株式会社「『Japan Smart Chain』は『MIZUHIKI: The Japan Chain』へ。日本の規制に準拠したステーブルコイン発行・決済インフラと、ステーブルコインPSPを提供」(2026年9月28日): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000153405.html
  • あたらしい経済「AltX Research、ステーブルコイン決済事業に転換。旧JSC『MIZUHIKI』メインネット稼働」(2026年9月28日): https://www.neweconomy.jp/posts/611560

本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-01

RELATED RECORDS

WRITTEN BY

OFM Research

Researcher

OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

NEWSLETTER

オンチェーン金融の最新記事を毎週お届け

ニュースレターに登録すると、編集チームが厳選した週次ダイジェストを毎週月曜日にお届けします。