NEWS日本実装⓪合意・表明のみ2026-09-09

山陰合同銀行、地銀本体による社債型STの「自己募集」を検討開始──証券口座を開かずネットバンキングから購入する設計

銀行が自ら社債を発行し、自ら投資家に売る。証券会社を通さないその形が制度上どこまで成り立つかを、地方銀行が実務で確かめにいく。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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山陰合同銀行、NTTデータ、Securitize Japanの3社は2026年9月8日、デジタル証券を活用した資金調達モデルの本格検討を開始したと発表した。まず山陰合同銀行自身を発行体とする社債型セキュリティ・トークンを、投資家へ直接販売する「自己募集」型で発行できるかを検証する。実現すれば地方銀行本体による発行・販売として初の事例になる(同行調べ)。勘定系「地銀共同センター」とSecuritizeの発行基盤を接続し、投資家が証券口座を開かず申し込む設計を想定する。実施も発行も確定していない。

何が起きたか

3社が検討するのは、山陰合同銀行が自ら社債型セキュリティ・トークン(ブロックチェーン等で発行・管理される有価証券)を発行し、投資家へ直接販売する自己募集型のスキームである。NTTデータの共同利用型システム「地銀共同センター」とSecuritizeの発行基盤「Securitize PF」を連携させ、投資家は同行のインターネットバンキングから申込画面へ遷移する。証券口座を新たに開設する必要はなく、払込みや利金・償還金の受け取りも保有する銀行口座を通じて行う想定だとしている。

検証の対象は、発行体としての手続き、商品設計、システム設計、投資家管理、情報開示、販売実務、期中管理、法令対応と幅広い。背景として3社は、2026年5月27日に成立し2027年4月1日に施行される第16次地方分権一括法により、地方債をデジタル証券方式で発行できる制度整備が進む点を挙げた。将来は地銀共同センターを共同利用する他行への展開をめざす。なお日本経済新聞は9月8日、同行が2026年度内の発行を目指し、発行額は数億円規模で個人が1口数万円から購入できる設計を検討していると報じた。3社のリリースにこれらの記載はない。

なぜ重要か

自己募集は、発行体が第三者を介さず自ら取得勧誘を行う形態である。銀行本体が電子記録移転有価証券表示権利等についてこれを行えるかは、銀行法の業務範囲と金融商品取引法上の登録の双方にかかる論点で、リリースが「関係当局への確認」を明示しているのはこの点だと考えられる。ここが通れば、地域金融機関は証券子会社を経由せずに社債型STの発行から販売までを完結でき、引受手数料の負担で社債発行に手が届かなかった地域企業にも同じ経路を開ける余地が生まれる。証券会社から見れば、地銀が販売チャネルを内製化する動きにあたる。

注視点

本取り組みの実施も社債型STの発行も、現時点で確定していないとリリースは明記している。採用する分散型台帳は決定していないと、Securitize Japanが取材に回答したと報じられている。地方債のデジタル証券化は2027年4月の施行を待つ必要があり、利用行への展開時期も示されていない。

進捗段階

実装トラック⓪(検討開始段階)。法的な権利移転も資金の授受も発生しておらず、発行の可否自体が当局確認と行内決定に委ねられている。

用語解説

  • セキュリティ・トークン(デジタル証券):ブロックチェーン等を用いて発行・管理される有価証券で、日本の金融商品取引法では「電子記録移転有価証券表示権利等」に該当する。保有者名簿の管理や利金支払いをシステム上で自動化しやすく、従来は採算に合わなかった小口・少額の発行が視野に入る。従来の振替制度が中央機関に台帳を置くのに対し、分散型台帳に記録する点が異なる。
  • 自己募集:発行体が証券会社などの仲介業者を使わず、自ら投資家に取得を勧誘する行為。引受手数料が発生しない一方、投資家対応や適合性確認の責任は発行体に残る。有価証券の種類によっては金融商品取引業の登録が必要になる。
  • 地銀共同センター:NTTデータが提供する、複数の地方銀行が勘定系システムを共同利用する仕組み。1行ごとにシステムを構築するより費用を抑えられ、機能追加も参加行で共有される。今回のように新しい商品基盤を接続すると、その効果が参加行全体に及びうる。
  • デジタル地方債:地方公共団体が発行する地方債を、デジタル証券の形式で発行するもの。現在の地方債市場は金融機関や機関投資家による購入が中心で個人の参加は限定的だが、小口化とオンライン化により住民が地域事業に資金を出す経路になりうる。第16次地方分権一括法で制度が整備され、2027年4月1日に施行される。
  • 期中管理:債券の発行から償還までの間に発生する、利金の計算・支払い、保有者情報の更新、開示といった一連の事務。小口・多数の投資家を抱えるほど負担が重くなるため、社債の小口販売が広がらない一因になってきた。

出典

  • Securitize Japan・山陰合同銀行・NTTデータ「山陰合同銀行、NTTデータ、Securitize Japan、新たな資金調達の実現に向け地域におけるデジタル証券活用の本格検討を開始」(2026年9月8日): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000043307.html
  • あたらしい経済「山陰合同銀行、NTTデータ・セキュリタイズと社債型ST発行を検討」(2026年9月8日): https://www.neweconomy.jp/posts/606000
  • NADA NEWS「山陰合銀、地銀初のデジタル社債発行を目指す──26年度内にも=日経」(2026年9月8日): https://www.nadanews.com/367320/

本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-09

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