NEWS日本実装③本番稼働(限定領域)2026-09-09

JPYSCの裏付け資産10億円が短期国債へ──6月施行の改正資金決済法「50%枠」が実務で使われ始めた

ステーブルコインの裏付け資産をどこまで運用してよいか。6月の制度改正で開いた50%の枠を、国内初の信託型ステーブルコインが実務で使い始めた。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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SBI新生信託銀行とSBI VCトレードは2026年9月7日、信託型円建てステーブルコイン「JPYSC」の裏付けとなる信託財産のうち10億円について、短期国債による運用を開始したと発表した。2026年6月1日施行の改正資金決済法により、裏付け資産は発行額の50%を上限として、残存3カ月を超えない国債証券や定期預金で運用できるようになっている。運用指図は発行委託者のSBI VCトレードが行う。9月7日時点の発行残高は約201億円相当で、運用益の帰属先は示されていない。

何が起きたか

これまで信託型ステーブルコインの発行見合い資金は、原則として普通預金などの要求払預貯金で管理することが求められていた。改正法により、一定の要件のもとで発行額の50%を上限に、残存3カ月を超えない国債証券と定期預金での運用が認められた。両社は今回の措置を、償還に必要な流動性を確保しながら裏付け資産を管理・運用するものだと説明する。

JPYSCは資金決済法上の第3号電子決済手段で、日本円と1対1で連動するよう設計されている。発行者のSBI新生信託銀行が信託財産の管理・運用を担い、SBI VCトレードが発行委託者兼電子決済手段等取引業者として発行・流通を担う。両社によれば、9月7日時点の発行残高は約201億円相当、「JPYSCレンディング」の申込分は約69億円相当である。今回運用に回した10億円は発行残高の約5%にあたり(筆者計算)、50%の上限までは距離がある。

なぜ重要か

裏付け資産を何で保有できるかは、ステーブルコイン発行事業の収益構造を直接規定する。要求払預貯金に限られていた間、発行体の収益は預金金利の範囲にとどまった。50%の枠が開いたことで、信託型は短期国債の利回りを取り込める。利用者に利息を付す設計ではないため、この収益は発行体側に残る。銀行・信託銀行が発行者として参入する経済的な動機は、ここに置かれている。

同時に、償還請求への即応性と運用資産の流動性を両立させる責任も発行体に移る。残存3カ月以内という制限は価格変動と流動性を抑える設計だが、大口の償還が重なれば国債を処分する必要が生じ、預金だけを持つ状態とは異なる資金繰り管理が要る。

注視点

運用益の帰属先と、発行委託者と受託者の間での配分は示されていない。レンディング申込分が発行残高の3分の1超にあたる点も、残高の性格を読むうえで論点になる。金融庁は8月末の令和9年度税制改正要望で、信託型ステーブルコインの保有者が変わる際に受託者へ課される税務書類の提出義務の免除を求めており、12月の税制改正大綱での扱いが次の焦点になる。

進捗段階

実装トラック③(一部本番稼働)。実際の信託財産を対象に法令上の枠を使った運用が始まっており、従来の要求払預貯金による管理を一部置き換えている。ただし対象は発行残高の一部にとどまる。

用語解説

  • 信託型ステーブルコイン:資金決済法上の電子決済手段のうち、信託銀行等が受託者として発行し、裏付け資産を信託財産として管理する類型。倒産隔離が働き、発行者が破綻しても信託財産は原則として保護される。資金移動業型は発行者の資産と分別管理されるが法的な仕組みが異なる。
  • 第3号電子決済手段:資金決済法が定める電子決済手段の類型のひとつで、金銭信託の受益権として発行されるもの。暗号資産とは法的な位置づけが異なり、額面での償還が制度上担保されている点が特徴である。
  • 要求払預貯金:普通預金のように、預金者の請求に応じて直ちに払い戻される預貯金。即時の償還請求に応じるうえでは最も確実だが、利回りはほぼ得られない。制度改正前は信託型の裏付け資産をここに置くことが原則とされていた。
  • 発行委託者:信託型ステーブルコインで、受託者である信託銀行に発行を委託し、信託財産の運用について指図を行う立場。今回はSBI VCトレードがこれにあたり、電子決済手段等取引業者として流通面も担う。発行と流通の機能を分ける設計になっている。
  • オンチェーン外国為替市場:異なる法定通貨に連動するステーブルコイン同士を、ブロックチェーン上で直接交換する市場。従来のコルレス銀行を介した為替取引と異なり、決済と受け渡しが同一の台帳で完結しうる点が期待されている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-09

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