NEWS米国実装③本番稼働(限定領域)2026-10-09

Samsung Wallet、米国でUSDC送金に対応 対応端末8,200万台に10月最終週から提供

端末メーカーがステーブルコインの入口を握りながら、預かりも送金も自らは担わない。Samsungが示したのは、規制を受ける事業者を裏側に置く分業の型である。

BY OFM Research · 6 MIN READ

SHARELB!

Samsung Electronics Americaは10月7日、「Samsung Wallet」で米ドル建てステーブルコインUSDCの購入・送金に対応すると発表した。10月最終週から、対応する米国のGalaxy端末8,200万台で提供する。保管と送金は国法信託銀行免許の条件付き承認を受けたBastionが担い、Samsungは自社が銀行でも送金業者でもないと明記した。日本の金融機関にとっては、端末事業者と組む際の規制上の責任分担が論点になる。店頭決済への拡張と米国外への展開時期は示されていない。

何が起きたか

対象は、Samsungアカウントを持つ18歳以上の米国居住者で、Android 13以上の対応端末を使う人である。8,200万台は対応端末の台数で、利用者数ではない。利用には口座登録、本人確認、生体認証の設定が要る。当初の銘柄はUSDCで、基盤となるブロックチェーンにはSolanaとSuiが挙がっている。利用者は他の暗号資産ウォレットへUSDCを送れるほか、60か国以上の対象銀行口座に現地通貨で送金できる。ウォレットへの送金にSamsungの手数料はかからないが、銀行口座への送金には送金先と金額に応じた手数料がかかる。ステーブルコインの口座はBastionの基盤で動き、Bastionが本人確認、取引監視、為替換算と払い出しを担う。USDCそのものは、Bastionの再委託先としてCoinbaseが「Coinbase Prime Vault」で保管する。Bastionはニューヨーク州の信託会社免許を持ち、9月18日に国法信託銀行免許の条件付き承認を受けている。

なぜ重要か

利用者の目に見えるのはSamsungのアプリだけだが、規制上の責任は信託会社と保管業者に置かれている。日本に置き換えると、端末事業者やアプリ事業者は窓口にとどまり、信託銀行や電子決済手段等取引業者が裏側で保管と送金を担う構図になる。海外送金が銀行の店頭やネットバンキングではなく、端末の標準アプリから始まるようになれば、銀行の送金手数料収入と顧客接点の双方に影響が及ぶ。日本の銀行や信託銀行にとっては、端末事業者の裏側に入る受託者の役割を取りに行くのか、自らの窓口を守るのかの選択を迫られる。

注視点

第一に、将来の機能として挙げられた、オンラインや店頭での決済への拡張。第二に、各国の規制次第とされた米国外への展開。第三に、Bastionの国法信託銀行免許の本承認と、Samsungが2つ目以降の銘柄を加えるかどうかである。

進捗段階

⓪ 合意・表明のみ(実装系)

提供開始時期(10月最終週)は示されたが、発表時点では稼働していない。提供が始まれば、実際の利用者と資産を伴い、米国の対象利用者に限って反復的に使われるため、③本番稼働(限定領域)に当たる。稼働の確認をもって段階を引き上げる。

用語解説

  • USDC:米Circleの関連会社が発行する米ドル建てステーブルコイン。現金や短期米国債などの準備資産を裏付けに、1USDC=1ドルでの償還を約束する。日本では、電子決済手段等取引業者を通じて取り扱える外国のステーブルコインとして扱われている。

    • 英:USD Coin(USDC) / 用例:USDC will appear as the default dollar stablecoin in the wallet. (USDCが、ウォレットの標準のドル建てステーブルコインとして表示される)
  • 国法信託銀行:米国の通貨監督庁(OCC)の免許を受け、受託・保管などの信託業務に限って営む銀行。預金や融資は行わないため、一般の銀行より身軽に免許を取れる。暗号資産やステーブルコインの事業者が、連邦の監督下に入る手段として申請を増やしている。

    • 英:national trust bank / 用例:Bastion received conditional approval for a national trust bank charter in September. (Bastionは9月に国法信託銀行免許の条件付き承認を受けた)
  • 再委託保管:保管を引き受けた事業者が、実際の資産の保管をさらに別の保管業者に委ねること。保管業者ごとの強み(顧客管理、鍵の管理)を組み合わせられる一方、責任の所在を契約で明確にしておく必要がある。

    • 英:sub-custodian / 用例:Coinbase serves as the sub-custodian for all USDC held in the wallet. (Coinbaseは、ウォレット内のすべてのUSDCの再委託保管先となる)
  • 電子決済手段等取引業者:日本の資金決済法に基づき、ステーブルコインなどの電子決済手段の売買、交換、送金の媒介、管理を行う登録事業者。発行体とは別に、利用者との窓口を担う役割として制度上位置づけられている。

    • 英:electronic payment instruments service provider / 用例:In Japan, a registered electronic payment instruments service provider would sit behind such a wallet. (日本では、登録を受けた電子決済手段等取引業者がこうしたウォレットの裏側に入ることになる)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-09

RELATED RECORDS

WRITTEN BY

OFM Research

Researcher

OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

NEWSLETTER

オンチェーン金融の最新記事を毎週お届け

ニュースレターに登録すると、編集チームが厳選した週次ダイジェストを毎週月曜日にお届けします。