NEWSグローバル実装⓪合意・表明のみ2026-10-09

Circle、SAP系Tereinaと組みUSDC・EURCを企業の基幹システムに組み込み まず「SAP Cloud ERP」から

企業の支払いは基幹システムで起票され、銀行に送られてきた。その経路の途中にステーブルコインが入り込もうとしている。銀行のトランザクション業務にとって見過ごせない動きである。

BY OFM Research · 6 MIN READ

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Circleは10月7日、SAP系の決済会社Tereinaと提携し、米ドル建てUSDCとユーロ建てEURCをTereinaの決済基盤に組み込むと発表した。まず「SAP Cloud ERP」を対象に、SAPの決済機能「SAP Pay」を通じてSAPの顧客に提供する。日本の金融機関にとっては、企業の支払いが基幹システムの中でステーブルコインに振り向けられたとき、銀行の送金・資金管理サービスがどこに残るかが論点になる。今後数か月は顧客との価値検証の段階で、導入企業や使うチェーンは示されていない。

何が起きたか

Tereinaは、企業がすでに使う業務アプリケーションに決済を組み込むことを掲げる会社で、SAPは自社の発表で同社を「SAPの会社」と呼んでいる。SAPは10月6日、Tereinaが提供するSAP Payを発表した。SAP PayはSAP Cloud ERPの中で支払いの実行と消込を同じ業務の流れで行う機能で、Tereinaによれば仕入先への支払い、入金、従業員への支払い、グループ内の支払いに使える。今回の提携で、ドル建ての対象となる支払いではUSDCを優先して使い、ユーロ建てではEURCを選択肢とする。既存の業務システムを入れ替えずに使える点を両社は強調している。Circleは、SAPのエコシステムが世界の商取引の84%を生み出しているとしており、これはSAPの会社資料にある数値である。Circleの開示では、10月5日時点の流通額はUSDCが741億ドル(約11.7兆円)、EURCが4億2,240万ユーロ(約747億円)である。

なぜ重要か

日本の大企業の多くはSAPを基幹システムに使い、海外子会社への送金や仕入先への支払いを、銀行のファームバンキングやグローバル資金管理サービスで処理している。支払いの起票から決済までがERPの中で完結し、そこにステーブルコインの経路が加われば、銀行は企業が支払い経路を選ぶ場面から外れかねない。一方、Tereinaはトークン化預金にも近く対応するとしており、銀行が自ら発行するトークン化預金をこの経路に載せる余地も残る。

注視点

第一に、価値検証に参加する企業と、実際に流れる支払いの規模。第二に、決済に使うブロックチェーンと、法定通貨への換金を担う金融機関。第三に、日本の企業が使える時期と、そのときに国内でステーブルコインを受け渡す仲介者が誰になるかである。

進捗段階

⓪ 合意・表明のみ(実装系)

提携と組み込みの方針を示した段階で、顧客との価値検証は今後数か月で行う計画にとどまる。参加企業も支払いの実績も示されていない。①に進むには、価値検証の開始と参加企業の公表が要る。SAP Pay自体は提供が始まっており、段階が異なる。

用語解説

  • ERP(統合基幹業務システム):会計、購買、販売、人事などの業務データを一つにまとめて管理するシステム。支払いの起票もこの中で行われるため、決済手段をここに組み込めば、企業は経理の流れを変えずに支払い経路を切り替えられる。

    • 英:enterprise resource planning(ERP) / 用例:The partnership starts with SAP Cloud ERP and may extend to other applications. (提携はSAP Cloud ERPから始まり、他のアプリケーションにも広がりうる)
  • EURC:Circleの関連会社が発行するユーロ建てステーブルコイン。欧州では暗号資産市場規則(MiCA)の下で電子マネートークンとして発行されている。ドル建てに比べて流通額は小さい。

    • 英:EURC / 用例:EURC gives companies an option for euro-denominated payments. (EURCは、企業にユーロ建ての支払いの選択肢を与える)
  • 消込:入金や支払いの記録を、請求書や買掛金などの帳簿上の債権・債務と突き合わせて照合すること。件数が多い企業ほど手作業の負担が大きく、決済と消込を同じ流れで処理できるかが業務効率を左右する。

    • 英:reconciliation / 用例:SAP Pay executes and reconciles payments within the same workflow. (SAP Payは、支払いの実行と消込を同じ業務の流れで行う)
  • トークン化預金:銀行預金をブロックチェーン上のトークンとして表したもの。発行者は銀行で、預金としての法的性格を保つ点がステーブルコインと異なる。企業の支払い経路に銀行が残るための手段として、各国の銀行が開発を進めている。

    • 英:tokenized deposit / 用例:Tereina says it will support tokenized deposits after stablecoins. (Tereinaは、ステーブルコインに続いてトークン化預金にも対応するとしている)
  • 価値検証:製品やサービスが顧客の業務で実際に効果を生むかを、限られた範囲で確かめる取り組み。技術的に動くかを確かめる概念実証(PoC)より、費用削減など業務上の成果に重心がある。

    • 英:proof of value / 用例:The companies plan joint proof-of-value programs with customers over the coming months. (両社は今後数か月、顧客と共同で価値検証を行う計画である)

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。円換算は三菱UFJ銀行の2026年10月8日公示仲値(1ドル=157.95円、1ユーロ=176.87円)による。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-10-09

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OFM リサーチチームは、ブロックチェーン・暗号資産関連および金融についての深い知識に基づいて、今現場で起こっていることをリサーチ・取材する専門チームです。

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