NEWSオーストラリア制度①案の公表・意見募集2026-09-04

豪中銀、個人向けCBDCに「明確な公益上の根拠なし」。同じ日に卸売のトークン化決済は前へ

豪中銀は同じ日に二つのことを言った。個人向けの中央銀行デジタル通貨は要らない、しかし卸売のトークン化決済は進める。この非対称は日本にも及ぶ。

BY OFM Research · 4 MIN READ

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オーストラリア準備銀行は2026年9月3日、個人向け中央銀行デジタル通貨(リテールCBDC)について、現行の決済システムが家計のニーズを十分に満たしているとして明確な公益上の根拠は認められないと結論づけた。調査会社ヴェリアン・グループが実施した公衆調査を踏まえたもので、2024年のRBAと財務省の共同ペーパーの結論と整合する。同じ9月3日にRITSのトークン化対応に関する意見募集を開始しており、リテールを畳んでホールセールを進める方向が鮮明になった。日本の議論も同じ非対称性を帯びつつある。

何が起きたか

RBAは、個人向けCBDCについて明確な公益上の根拠はないと結論づけた。判断の根拠は、現行の決済システムが家計のニーズをよく満たしているという評価である。この評価は、豪州の人々に決済上のニーズと個人向けCBDCへの見方を尋ねた、調査会社ヴェリアン・グループによる公衆調査を踏まえたものだと報じられている。結論は、2024年9月にRBAと財務省が公表した共同ペーパーと整合する。

この方向は事前に示唆されていた。6月の決済システム委員会は、フォーカスグループの初期の知見を議論し、豪州の人々が個人向けCBDCにおおむね無関心であるという結果を確認していた。知見は外部事業者の報告書として年内に公表され、RBAの評価の更新に反映されるとされていた。

同じ9月3日、RBAはホールセール側で意見募集を開始した。RITSがトークン化された資産市場とトークン化された民間マネーの発展をどう支えるかを問うもので、締切は10月30日である。前提となるプロジェクト・アカシアでは24のユースケースが検証され、うち19件が実取引を伴ったと報じられている。

なぜ重要か

リテールを見送りホールセールを進める組み合わせは、豪州に限った話ではない。ECBは個人向けデジタルユーロを別トラックで進めつつ、卸売のPontesを9月21日に稼働させる予定である。日本でも、政府・日銀の次世代決済インフラ構想は日銀当座預金のトークン化という卸売側から入ると報じられている。個人向け決済の担い手は当面変わらず、変わるのは証券決済と銀行間決済の裏側である。銀行のシステム投資の優先順位を、リテールの新通貨対応ではなく証券決済のトークン化対応に置くべきだという判断材料になる。

注視点

「明確な公益上の根拠なし」は現時点の評価であり、法律上の禁止ではない。RBA自身が評価は更新されると述べており、決済環境が変われば結論も動きうる。またフォーカスグループの結果をまとめた外部事業者の報告書は年内公表とされていたが、9月4日時点で公表を確認できていない。根拠資料がどこまで開示されるかは、他国の中央銀行が同種の判断を下す際にどれだけ参照できるかを左右する。

進捗段階

リテールCBDCは実装トラック⓪のまま据え置かれた。ホールセール側は規制トラック①(意見募集段階)で、両者が同日に別方向へ動いた点が今回の特徴である。

用語解説

  • リテールCBDC:個人や店舗が日常の支払いに使うことを想定した中央銀行デジタル通貨。金融機関間の大口決済に用いる卸売CBDCとは、利用主体も用途も異なる。
  • ホールセールCBDC:金融機関間の決済に用いる中央銀行デジタル通貨。トークン化された証券の資金決済に中央銀行マネーを供給する手段として検討されている。豪州のプロジェクト・アカシアでも決済資産の一つとして試された。
  • 決済システム委員会(Payments System Board):RBAに設置され、豪州の決済システムの安全性と効率性に関する政策を決める合議体。日本に直接の対応組織はなく、日銀の政策委員会と金融庁の審議会の機能を併せ持つ位置づけに近い。
  • Pontes(ポンテス):ユーロシステムが構築する分散型台帳決済の枠組み。市場の分散型台帳プラットフォームとTARGETサービスを接続し、中央銀行マネーで資金決済を行う。2026年9月21日の稼働が予定されている。

出典


本記事は公開情報に基づく解説であり、投資助言を目的としたものではありません。

END OF RECORD / VERIFIED 2026-09-04

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